思い出のゲーム
『魔導甲冑マジェスティア』
記憶が確かならば、今から20年ほど前に発売されたゲームだ。
発売当時はマイナーな扱いだった。
売り上げも、ひと月で1,000本行かなかったんじゃなかったかな。
だが、有名なゲーム雑誌が特集を組み爆発的な人気となる。
俺自身も結構やり込んだが…うん、さすがに全部は覚えてはいない。
えぇと…。
たしか、こんなんだったかな?
主人公を男女から選び、ロボットに乗り敵を倒していくゲーム。
中身としては、学園パートと戦闘パートに分かれている。
学園パートに訓練や整備をし、ステータスや機体を整える。
そして仲間との交友も深める事ができる。
そんな学園パートの中、突如敵が出現し戦闘パートが始まる。
戦闘は3Dアクション形式…だったがポリゴンが荒かったなぁ。
学園パートで訓練と整備を頑張れば、その分だけ自分の機体の能力が高くなる。
おまけに仲間と仲良くなっておけば、支援などの恩恵もあった。
まぁ、基本的に学園パートを頑張れば難易度は下がる作りだ。
ストーリーは、発売当時はシンプルだった。
異世界の野心が高い国が、地球の各地へ侵攻してくる。
それを迎え撃ち、最後には相手国へ逆に攻め込み勝てばクリアだ。
ただ、これも進め方によって変わっていく。
勝利数がフラグのイベント。
仲間との交友がフラグのイベント。
ある程度のイベントをこなせば勝利ルートへと進んでいく。
となると、当然逆もあるわけで。
戦闘での負けが続いたり、仲間の多くが戦死すると負けルートだ。
その中間の停戦ルートもある。
初プレイ時はこのルートに進むプレイヤーが多かった、らしい。
俺は戦死者が多くて負けルートだったけどな。
ストーリーのネタバレは、大まかにはこうだ。
昔、この世界、つまりこのゲームの世界から3人ほど異世界へと召喚された。
その召喚された人達は、異世界で魔王を倒して勇者になりました。
めでたしめでたし。
だけどある日、幸運にも元の世界に戻るゲートが生じる。
それにより3人の内2人がこちらへと戻ってこれた。
面白くないのが、取り残された1人だ。
実際はそうではないんだが、コイツは自分だけ置いてけぼりにされたと思い込む。
それが徐々に恨みへと変わり、こっちの世界を滅ぼそうと考える。
そこで、異世界で野心が高い国を唆し、こちらへと侵攻させる。
こっち来れるんならさっさと帰ってくればよかったのに、と当時思ったもんだ。
…とまぁ、後の事はおいおい思い出していこう。
今は、俺のこの姿。
信じられない現実で頭が一杯だ。
* * * * *
(うへぇ、やっぱ蓮集院天音だ)
目の前、鏡の中に居る『俺』が俺を見ながらため息をつく。
身長は170ぐらい…女性にしては長身かな?
髪は緑色のロングだが、眉毛は黒。
高い鼻に、整った顔立ち。
上手に表現できないが、清楚なお嬢様って感じだ。
年齢は16歳、だったか?
体は…、うん、ボンキュッボン、とはいかないな。
スタイルはいいが、胸が残念だ。
たしかバスト72だった、かな?
よく二次創作やネットで、ネタにされていたと思う。
しっかし、まぁ。
(夢かどうかわからんが、うーむ…女になってる、よなぁ)
鏡の中には、以前見たことのある設定資料集の彼女。
アニメや漫画でしか居そうに無い、カラフル髪なキャラ。
蓮集院財閥現総裁の孫娘…蓮集院天音。
つまり、俺だ。
(…どうしてこうなったんだっけ?)
たしか、仕事が終わって帰宅する途中だった。
残業が長引いたせいで、ネトゲをする時間が無くなる!
そう思いながら、駅から走っていたはずだ。
明日は休みだが、ネトゲがメンテのため出来ないから、どこに行こう。
そう考えてたら…たしか・・・。
…あぁ、急に、頭に激痛を感じたんだったな。
…強盗にやられたのか、車に轢かれたのかは正直判断できない。
ただ、この現状を見るに…俺は死んだ、んだろうな。
そして、未だに信じられないがゲームの中に入り込んだんだろう。
憑依?転生?前世を思い出した?
…最悪、植物人間になった俺が夢を見ている?
その辺は全然解からないが、俺は今ゲームの世界にいる。
そして、ゲーム内のキャラになってる。
それは、間違いない、と思う。
(でもなぁ、よりにもよってなぁ)
気を失う前にも思ったが、行く末が暗すぎる。
このキャラ…天音はどう進んでも途中で離脱してしまうのだ。
しかも、我侭だし空気読まないしで各キャラに嫌われている。
主人公に一方的に対抗心を持ち、絡んでくる。
ただ、プレイヤーからの人気は高かったな。
貧乳という希少価値性を訴える輩。
何だかんだで美少女、つまり萌えるという意見。
我侭で勝気なので、薄い本でも人気だった。
また、途中離脱時の熱い展開も良いと言われた。
主人公達がトラブルで出撃できない際、財閥製造の試作機での単独戦闘だ。
能力が低いため、どうやっても負ける。
だが、戦闘内でのセリフや、試作機を主人公に託すイベント。
ゲームのオープニングをアレンジしたBGMも加わり、実に熱い流れだった。
ちなみに、改造コードを使い敵に勝っても同じ展開だった。
リメイクが出す際は、ぜひ生存or復帰ルートを、という声も多かったな。
結局出なかったんだけど。
(…だがまぁ、それもゲーム通りだったら、だな)
俺の動き方で、何かが変わる…かも知れない。
もしかしたら、生き残れる…かも知れない。
そう考えないと、やっていけない気がする。
せっかく得た2度目の人生だ、やるだけやってみるかな)
どうせ一度死んだんだ、死んだはずだ。
だったら、死んだつもりで全力でやってやる!
俺は、このゲームに関する記憶をフル稼働し、何とか生き抜こうと決意した。