表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導甲冑マジェスティア  作者: 後藤
1/3

オープニングのオープニング

某ゲームを再プレイして懐かしくなり執筆

『ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ』


(… … …は?)


暗闇から抜け出したと思ったら、いきなりの轟音が鼓膜を振るわせる。

ガタンガタンと、体も上下に振動、って痛い痛い肩に何か食い込んでる!

目の前には揺れる風景。

轟音と共に耳に入る、不安をかき立てる警告音。

全くもって意味がわからない。


<トレビアンジェル!大丈夫か!?おい!>


「え?え?何だこれ?」


目の前の風景の一部が、突如男の顔に変わる。

見たこと無いおっさんだ。

…いや、どこかで会ったか?

てか、轟音以上の声が耳に痛い!


よく解からないまま、前の風景を見る。

…山と森と、遠くに街が見えるが…これ宙に浮いてないか?

飛んでるのか?それとも落ちてるのか?


ここは…所謂コクピット?

改めて周りを見ると、様々なボタンや計器を見る事ができる。

ただ、それらは見るからに異常を伝えてる、気がする。


<…無事のようじゃな、カレッジ君、動けるか!>


「…無事とは言いづらい、ですがね。何とかやってみますよ、っとぉ!」


前からはおっさんの声、後からは女性の野太い声。

誰かいるのかと振り向こうとすると、体が一層揺れる。


「うああああああああ!?」

「お嬢、ちっとばかし無茶しますよ!」


『ジュゴォォォォォォォォ』


まるで、熱した鉄を水に入れたときのような音。

目の前も蒸気か煙かわからないが、白い気体で埋め尽くされる。



「ちょ!一体何が!」

「まさか飛行訓練を狙われるなんてね…、舌噛むから黙ってて下さいな」


変な方向からの重力が体にかかり、気持ち悪い。

白い気体の向こうには、さっきより大きくなった森が見える。


<トレビアンジェルの飛行部位、被害甚大!>

<自衛隊より連絡!敵4体撃墜!>

<敵指揮官型は依然健在!ゲキテツ苦戦中>

<あぁ、くそ!おい、さっさと援護にきやがれ!>

「着地後に問題が無ければいくよ!それまでがんばりな!」


矢継ぎ早に聞こえてくる、様々な会話。

理解は出来ないが、俺が置かれた現状はなんとなくやばい気がする。

色々と把握したいが、振動と轟音がそれを許してくれない。

赤いライトが点滅しだしたぞ、何だってんだほんとに!


<トレビアンジェル着地8秒前!6、5、4…>


「お嬢!衝突に備えな!」

「備えるって言われぐぎぃぃぃぃぃい!」


『ズウゥゥゥゥゥゥゥウゥッゥッドドドドドド』


「いでででだだだだ!」


尻と、肩と、背中が痛い!

洗濯機の中に放り込まれている気分だ。

だが、徐々に痛みが軽くなっている。


<トレビアンジェル着地成功>

<現在位置、有浦山中腹…人的被害無し!>

<今のショックで多くの異常が発生!>


「くそっ!反応しない!」


後ろから、ガッチャガッチャと音がする。

警告とか、ランプの点滅とか、目にも耳にも五月蝿い!

というか、本当に誰なんだ?


そこで、ふと、とある単語が引っかかった。

ん?…トレビアンジェル?

それって…。


<機体再起動に必要な魔力が足りません!>

<魔導回路損傷の可能性あり>

<…仕方ない、2人とも機体を降りるんじゃ>


「あぁクソッ!おいゲキテツ!後は頼んだよ!」


<くっ…!やるしかないか…>

<すまん甲斐君、急いで援護を回す>

<なるだけ早めにお願いし、うぉっっとぉ!>


ガコンと音が鳴り、体を締め付けていた固定具が緩くなる。

それと同時に、体と首を捻って後からの声の主を見る。

…あぁ、やっぱり。


「カレッジの姐御だ」

「…はぁ!?おいお嬢、あんた大丈夫か!?」


筋肉質で身長180近く。

小麦色に焼けた肌と、勝気な目。

ショートヘアーで、グラマーな体。

アメリカンハーフのスチュワート=カレッジ=水島…の姐御25歳。

設定資料集のまんまの彼女が、そこに居た。


「…ぼー、っとして、どうしたんだい?いいから出るよ!」


今、目の前に居るのは間違いなくゲームのキャラだ。

となると、本当に現状を理解できない。

いや、理解というか…そんな事ありえるのか?

そもそも、俺は一体…いや、姐御と一緒に乗ってるんなら予想はつく。

予想というか確信というか、でも俺、男だぞ?


「えと、もしかして俺は蓮集院天音、ですか?」


一応、確認を取るかと姐御に尋ねてみる。

すると、姐御は一瞬ぽかんとし、なにやら慌てだした。


「おい!救護班を呼んどくれ!お嬢の様子が変だ」


まぁ、そういう反応になるよな。

やっぱ俺は蓮集院天音、か。

…俺、男なんだけどな。

しかしコレはどうしたものか…てか、俺はどうなったんだ?

…夢見てるのか?



<蓮集院君が!?どうした、頭でも打ったのかね?>


「いえ、大丈夫です…貴方は如月所長ですね?」


<いきなり何を…確かに、いつもと感じが違うな>


「えと、俺は今ゲームの中に居るって、ことなんですかね?それか、夢?」


<…救護班を回す!カレッジ君、彼女を頼むぞ!>

<ゲキテツに敵の攻撃が直撃!>

<畜生!畜生畜生ちくしょぉぉぉぉ!>


…なんだろう、体がだるいし頭も痛い。

うまく言えないが、記憶がごちゃごちゃだ。

姐御が俺の体を抱きかかえ、外に出る。


 あぁ、コレは始まりだ。

何回も見た事がある、ゲームの始まり。



「…おい、そこのあんた!何してるんだい!」

「すみません、この子、貸してください!」


 …頭がズキズキする。


「無駄だよ、一般人がそいつを動かせ…え?」

「…いい子だね、お兄ちゃんを助けるの手伝ってくれる?」


機械的な音を響かせ、トレビアンジェルが立ち上がった。

その振動が体を揺らすので、頭の不快感がより強くなる。


「嘘、でしょ…」


姐御が歩き出すトレビアンジェルを見て、そう漏らす。

さっきの声は女だったな…なら、女主人公ルートか。

なら、ゲキテツとそのパイロットを助けに行ったんだろう。


 ゲーム通りなら、この後に女主人公が敵を倒す。

初めての戦闘なのに、だ。

その事がきっかけとなり、物語が始まるはずだ。



これが夢なのか現実なのかは判らない。

だけど、間違いないだろう。



ここはゲーム『魔導甲冑マジェスティア』の中。

今のやり取りからチュートリアルが始まるはずだ。

しかも、俺はその中のキャラになっているみたいだ。


もちろん知っているキャラだ。

知っているだけに、目の前が真っ暗になりかける。


簡単言うとライバルキャラ。

ステータスが低くて、他キャラとの関係が良くないキャラ。


そして、進め方で異なるもののゲーム中盤で死亡。

もしくは廃人となり表舞台から消えるキャラ。


(お先真っ暗じゃねぇか…)

心の中の悪態をつきながら、頭痛と眠気に飲み込まれる。


俺は、途中離脱確定のライバルキャラ。

蓮集院天音ってキャラになってしまっているようだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ