頭部より輝く竜殺しの剣
念願の武器を手に入れ一転攻勢、翔けるハゲウス…と思いきや?
「なんだか凄いイベントバトル的な雰囲気がするな…。」
それもそのはず、たまたま拾った農具がいきなり龍殺しの武器になるなんて怪しすぎる。
___そう想うというのも愚かなる人如きでは致し方なしですね。
相対するドラゴンよりも不遜な発言が聞こえた気がするが…。
俺の発言に対する突っ込みか、はたまた俺の思考を読んだ後の感想か知らないが脳内に声がした。
___不敬なる人間よ、愚かなる愚考は止め、上空の敵へと私を投擲するのです。
「凄い剣は平然と脳内に喋りかけるものなんだなー…。」
やはりそうか、この武器か、武器が持ち主に命令するとは世も末だな。
邪悪な色の焔を吸収し黄金に輝く剣を眺め場違いな感想を平然としながら俺は物思いに耽る。
もしかすると、俺は多重人格で入れ替わった隙にVRMMOの世界へとダイブしたのかもしれないな。
___愚考は人類の特権、しかし今のそれは身を滅ぼしますよ。
「だがしかし、せっかく手に入れた武器を投げるなんてとんでもない。」
それもそのはず、どういう理屈か知らないが、ドラゴンの火焔球を防いだこの武器を投げては無防備になってしまう。これでは投げたくても投げれない。
___私を大切に扱うのも結構ですが、そろそろ煙が晴れます。
鉈が砕け散り舞った煙が晴れ、姿が露になるにつれ龍は驚きの咆哮を上げた。
最初は目を見開き何かを探すも、すぐにその目は俺の手に収まる黄金の輝きに定まった。
「ヌゥゥ...適格者ト想イモシタガ、人間、手ニシテイル物ハ神代ノ遺物カ。」
何やら焔龍の方はこの武器を知っているらしかったが、今日来たばかりの俺にはさっぱりだ。
後は異世界の者同士仲良くやってくれ…。
「今其ヲ渡セバ、貴殿ノ命ノ選定、神ニ委ネルト誓オウ。」
ドラゴンの方はどうやら、見逃してくれるらしかった。
だが、今日生き延びられるとは限らない。そう、こんな龍の跋扈する場所で。
___龍の言葉に偽りは無いでしょう、ですが!渡した場合は私手ずから殺しますからね。
「なるほどね。」
とても恐ろしい発言が聞こえた。
「よし!分かった!」
そして俺の判断は早かった。
「渡すからちょっと降りてきてくれ!」
___なんと愚かな…。
「ヨカロウ。」
地上に近づくにつれ振動する大気によって、俺の中の恐怖が増幅される。
だが、目の前の絶対的な力を持つ龍に対し「見逃す」と言わせるこの剣は一体何なのだろうか?
そんなレアアイテムを渡すことが許されるのだろうか・・・。
___答えは断じて否!!!
「よし、じゃあ受け取れ!!!」
目の前に降り立った直後の龍に対し俺は全力の投擲を行った。
着陸時の隙を狙い黄金の閃光が龍を穿つ。
そう、騙し撃ちである。
「愚カ」
しかし、予測していたかの様に龍はその光を掴み取る。
硬い大地をバターの様に削り取るその巨腕は、器用にも爪先で刀身を掴んでいた。
「終わったな…。」
絶望し切った俺の声に合わせて脳内に声が響く。
___ええ、終わりです。
自信満々なその声に合わせ、刀身が赤熱していく。
それはまるで、龍の放った火焔球を思わせる邪悪な色に。
「マサカ!獄焔ノ支配者タルコノ身ヲ焦ガス炎ナドト!」
マグマを思わせるその色は次第に燃え移り、徐々にその身を侵食する。
___竜呪詠唱を反転詠唱しました。価値ある貴方は焼失します。
「ナント愚カナ!価値ヲ認メナガラモ我ガ身ヲ消滅サセヨウトハ!!」
それは炉にくべた古紙が一瞬で燃え尽きるかの様に、儚く、無慈悲に、膨大な歴史と共に価値が消えていく。
___この世界に選定者は必要ありません。そもそも価値など、それぞれが勝手に決め付ける物で、存在などしないんですから。
「然リ、成ラバ後悔セヌ事ダ、選定者無キ無価値ナ世界ニ…」
胴体と首を光が食い荒らし、落ちた頭は地面に着く前に消え去った。
多少なりの儚さを伴って。




