煉獄の試練、負けるなハゲウス!
目の前の光景に、夢を見ているのか、幻覚を見ているのか、はたまたゲームの世界に居るのか。
とりあえず確実なのは、俺がこの場で怪物と相対するも、こうして平然と喋りながら生き長らえている事、そして周りの残り火達が、熱を放ちながらこれが現実であると、俺に証明し続けているという事だった。
「どうもあんたはアイツについて知っているみたいだな、とりあえずここは何処であんたが何者なのか教えてくれないか?」
今は混乱しているし、時間稼ぎにでも適当な話をしているが、ドラゴンはといえば口腔を邪悪に照らし、今にも俺を丸焼きにしようとしているのが見て取れた。
「愚カ、僅カデモ生キ延ビ様ナドト足掻ク民草ヨ、其ノ答エハ我ガ選定ノ焔ヲ凌ギシ後、如何様ニモ応エヨウ。」
無慈悲過ぎる。
「やれやれ、さっき凌いだはずなんだがな…。」
ため息を吐き、とりあえず、乱れた頭と呼吸を整えた。
「逃レシ者ヨ、神代ヨリ選定ヲ下ス我ガ獄焔、汝ガ身ニ受ケシ時マデ、我ガ汝ヲ認メル等ト、夢ニモ想ワヌ事ダ。」
どうやら選んで殺すタイプの技らしいな、だがしかし…。
一面焼け野原だし絶対に死ぬだろ!
「俺は丸焦げに焼かれるのなんか御免なんで、逃げるか倒すかさせて貰おうかな。」
焼死と言えば、最も惨いと言われる類の死に方であり、自殺をするにしても絶対に選ばない。
仮に俺がやるとすれば、気持ち良くなれる薬で安楽死だろう、だからどう転んでもありえない。
昔、火刑にされた罪人が居ると聞く、だがとても正気の沙汰じゃないね。
罪人を法で裁くというよりも、敵を罰する為の法であった頃の刑だからこそ残酷な方法で裁いているし、相手への憎しみに溢れているのだが…。
こんな地獄送りな目に遭うほどの事したかなー…そういえばしたかなー…。
ギルドの装備売り払い仲間を降したにも関わらず優勝しなかったりとか。
だけどあれは回線悪かっただけだし決して俺のせいではない。俺は悪く無い。
でもまさかこんな超常現象に出くわすとは夢にも思わなかったな…。
「だがまあせっかくだし、焔龍殺し、楽しむとするか!」
火事場の馬鹿力か足取りは軽かった。
ゲームだと思えばなんてことない。
ドラゴンくらい、数え切れないほど殺してきたわけで。
だからこそ対策もいくらでも在る。
「グオオオォォォン!!!!」
もはや焔龍は言葉を発さずに咆哮と共に火焔球を放つ。
正確に狙うそれを横に飛び退き避ける。
そして受身を取りすぐさま走る。
またもや火焔球を放とうとする焔龍へと詰め寄りながらも野次を飛ばす。
「どうにも3秒ほど撃つのに間隔がある様だな!」
無意味な挑発に乗ってか、焔龍はこちらを迎え撃つ構えだ。
行動を変えた為に、僅かだが隙が生まれた。
しかし、僅かでも隙があれば懐に潜れるはず。
「人ノ身デ在リナガラ絶対者ニ刃向カウ蛮勇、褒メラレタ物デハ無イゾ。」
俺を捕える為にか龍の凶悪な腕が伸び、焼け落ちた大地ごと削り取った。
だが、間一髪。
俺はそれよりも早く懐に潜り、その勢いのまま足の関節へと斬撃を送り込む。
「セエェェェイ!!!」
渾身の一撃。
速度と質量の全てが乗ったその技は、通常の兵士相手ならば兜を叩き割り、腕ごと鎧を砕く。
その自信が俺にはあった。
だがしかし、俺の剣は弾かれた。
いや違った、ボロボロの鉈が弾かれたのだった。
「やっぱ無理かあああああぁぁぁぁぁ!!!!」
鱗と金属が奏でる硬音と共に俺の絶叫が鳴り響く。
弾かれた勢いを回転して整えるが、すぐさま龍が羽ばたいた風に吹き飛ばされる形となり距離を離された。
「また最初に戻る、か…。」
吹き付ける風から目を庇いつつ、龍を確認しようとするとそこに巨体は見当たらず。
代わりに空から唸り声が聞こえた。
「グォォンンッ!!!終ワリダ!!!」
そう、龍は空を飛べるのだった。
上空からの避けようも無い焔に、俺は無意味とわかりつつも、咄嗟に鉈で防ごうとした。
凄まじい衝撃が世界を揺らし身を焦がす。
強すぎる熱量が故に何も感じなかったのか意外と痛みは無いのだろうか。
だが目に入る情報がそれを否定する。
「なんだ、燃えていないのか…?」
焔は鉈に吸い込まれ消えていた。
そしてその身は変化した。
「草を薙ぐ者よ...汝に蛇を祓う力を与えよう」
光輝く刀身から、自然と声が聞こえた様な気がした。
どこか懐かしい様な不思議な感覚だった。
「ハハッ…」
俺は笑うしかなかった。




