続 煉獄の試練
閑話休題
「はぁ…はぁ……。」
見渡す限りの荒野で2人、クタクタになりながらも歩き続けていた。
「ハァ…お前の国…近くにあるんじゃなかったのかよ……。」
太陽が真上にあるので、今は多分昼頃。
「うぅむ……竜の身では瞬く間であったが……人の身ではこうも……労するとは……難儀なものだ……。」
裸に焼け焦げたジャンバーだけを羽織った幼女が吐露する。
熱に耐性があるらしいのだが、どうも普通に疲れてきたらしい。
が、それもそのはず、身の丈程はいかないにしても、一振りの剣を持って少女が歩くのだ、すぐに草臥れていてもおかしくはない。
「それにしても……。」
煌々と照らす太陽、20キロ以上歩いたにも関わらず、未だに居座り続けるそれを、憎たらしく眺める。
「なあ…そろそろ…日が傾いてもいい頃だと思うんだが…。」
体感的にもう夕方だが一向に傾く気配が無い…。
もう足の感覚も無いし、流石の俺も限界だ。
「何を頓痴気な事を…。」
間抜けを見るかの様な目線を受けた。
何だ…?こいつにはこの異変がわからないのか…?
しかし俺は忘れていた、ここが普通じゃ無いことを。
「もしかして、自転の周期が違うのか…。」
ゲーム内時間という奴か、いやそれはおかしい。
普通逆だろ…。
「いつまで歩けばいいんだよ…。」
途方に暮れ段々弱気になってきた。
「軟弱な……。悠久の時を…生きた…我が身には……須臾の…戯れよ……。」
※須臾 (わずかの間)
「強気な事言って、もうフラフラじゃねぇか…ほら、剣を渡せよ、重いだろ?」
紳士な俺は、極限状態ですら、少女に対して優しさを見せる事が出来る。
「うむ、そうか…では、貴様の甘言に…乗るとしよう…。」
目論見通り、俺は剣を受け取った。
「ふう、そろそろ、杖が欲しかったんだ。」
俺は、剣を杖代わりにして足への負荷を分散した。
___不敬な!神聖なる我が身に対する冒涜です!今すぐに止めなさい!
俺には何も聞こえなかった。
「なっ…!謀ったな…!今すぐにその杖を返すのだ!」
自分の愚かさと騙された事に気がついた龍は、すぐに取り返そうとするが、身長の差が絶対的な壁となって立ち塞がった。
___ですから、私は杖ではありません!
余計な横槍は無視しつつ、俺の杖を高く持ち上げていると、痺れを切らしたのか、少女は俺の体に密着し、体を擦りつけてながらジャンプしだした。
「さっさとっ…よこせっ…!」
ま、不味い…胸が…擦れて。
「はっ、なんならそのジャンパーも、持ってやろうか?」
「なっ…戯けがっ!」
ようやく意識した様で、体を抱えながら身を離した。
「龍王である我を、その様な邪な眼で見るとは…。やはり貴様は獄焔を望むか…。」
口元を邪悪な炎で照らしながら、自らを龍王と謳う幼女は、照れ隠しか俺を睨む。
だが、俺にはその脅しはもはや通用しない。
「へっ…!この剣があればこっちのもんだ、お前の火なんか怖くねーよ!」
俺の天下だった。
この状況なら何でもし放題だし、勝者の権利を行使しても良かった。
あんな事やこんな事、いやーでもそんな…ね?
___この身を愚弄しておきながら、斯様な些事に使おうなどとは思わない事です。
え、ちょっと待って!
「ほぅ…。」
何やら刺さる視線が凶悪になった気がした。
不味い、これは…殺気…!
「あ、その、御免なさい…。」
紳士な俺は真摯に謝った。
「身の程を弁えよ…。」
許してくれたようだ。
王だけにどうやら、器は大きかった。
「とりあえず、あの岩場で休もう。」
行く先に見えた陰で休むことを提案した。
当然、さっきのやり取りでももうヘトヘトだ。
「貴様のお陰でとんだ徒労だ…。」
どうやらこいつも疲れていただけらしかった。




