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デスゲームでタンクとかまじありえん

作者: きしと

 薄暗い小屋の中で少年は膝を抱え震えていた。


 「なんでこんなことに、なんで…」


 少年は意味のない問を発し続けていた。だが彼にはその理由がわかっていた。1つは悪意ある開発者による横暴、もう一つは自分のあこがれのために現在の状況が巻き起こされたことを。

 ただ一つ少年が今言えることと言えばこれである。


 「デスゲームでタンクとかまじありえん」



☆☆☆


 タンク…それは主にMMOなどで他のプレイヤーが操るキャラクターに敵の攻撃が向かないようにヘイトを管理し、攻撃を一身で受けるものを指す言葉だ。

 少年、源誠二はこのタンクに憧れていた、敵の攻撃を受け味方を守り、威風堂々と立ち続ける騎士。男でこれに憧れない人間はいるのだろうか、誠二は本気でそう思っていた。だからだろう新技術でついに作られた初のVRMMOでこのタンクと言う役割を持つ盾騎士を選んでしまったのは。それが不幸の始まりだとも知らずに…


 「うぉ~すっげ~な!!」


 少年、源誠二が操るキャラクター、セイジはその光景を目にして素直に関心していた。

 現実とは違う肉体、幻想的な風景、沢山の人々。

 VRMMOの初の稼働日には大勢の人がこの場所に集まっている。セイジ自身も遠くの山々を眺めながらこれからあそこを冒険するのかと希望に湧いていた。

 

 「はぁ~しかしこの中からみんなを探すのは大変そうだな。開発者の挨拶を聞いてからにしたほうが良いか」


 現在、この場所に全てのプレイヤーが集まっているのは初稼働日ということでこの場所で開発者からの挨拶があるからというためだった。多くのプレイヤーが早く冒険に出たいとそわそわしている。

 その中の何人かが、頭上を見上げ始めた、つられてセイジが目をそこに向けると画面に一人の男が映っていた。


 「やぁ、みんな今日はゲームをプレイしてくれてありがとう。今日は記念すべき日だからね、まあそういうわけでこのゲームからログアウトできないようにさせてもらったよ?」


 「へぇ?」


 思わず素っ頓狂な声を出してしまった。唐突すぎる。見れば周りもかなりざわついていた。


 「ああ、混乱もわかるよ。うん、要はあれ小説とかアニメとかでよくあるあれだよ。この世界で生き続けるためにはキャラがロストしたらいけないの」


 そういって開発者の男が画面の中で指を鳴らすと画面が切り替わり、一人の男がVRMMOをプレイするための装置を外され病院で倒れている映像が映し出された。


 「ユウト!!」


 どこかから悲鳴にも似た声が上がる。知り合いがいたのか。その声によりざわめきが一気に静まった。


 「まあ、なんとなく理解してもらえたかなこれで」


 開発者がそういうとあたりは罵声罵倒、怒りに湧いたプレイヤーたちの言葉で埋め尽くされた。


 「それで、まあつづきなんだけど」


 だが開発者は何のことも無いように話を続ける。


 「この世界から抜け出すためにはこの世界で終わりを作らないといけない。ご高名なみなさんなら意味は分かるよね?」


 そこらかしこでゲームクリアが脱出条件かと話す声が聞こえる。


 「まあ、せっかく作った世界なんだ、精一杯あがいて僕に君たちの滑稽な姿を見せてよ。それじゃあの」


 そういって画面は消えた



☆☆☆


 とんでもないことになった、セイジは素直にそう思っていた。まさか、小説やアニメであるようなことが自分の身に起こるとは。


 ---これからどうしよう。


何か行動しなければいけないがそれを見つけるのも難しい。この混乱の中で本来合流する予定だった。リアルでの友達、真紀、ミノル、峻、とは完全にはぐれ合流は絶望的になってしまった。


 ---みんな無事だといいけど…


 そう考えていた時、状況を確認するために外、つまりモンスターと戦いにいった一団が焦ったように帰ってきた。


 「みんな大変だ!!痛いんだ、ダメージを受けると現実みたいに痛いんだ!!」


 そうこの言葉こそ崩壊への序曲、開発者が残した悪意ある送り物だった。


☆☆☆


 あれからゲームの中で二週間がたった、今では僕はこの薄汚く小さな小屋でうずくまり隠れるしかなくなっている。まさかこんな事態になるとは…プレイヤーの誰もが考えていなかった。だがおそらく製作者は予想していたいや、この事態に陥らせるためにわざと痛みを作り、そしてこのゲームの仕様を考えていたのだろう。


 僕のクラス…それと同じ盾騎士の仲間は開始から二週間で四分の一に減っていた。


☆☆☆


 あれからこの状況まではあっと言う間だった。始まりはダメージに痛みを感じることから始まった。 実際、僕もあの後モンスターと戦い、そのリアルな痛みに恐れおののいた。

 僕は戦えなくなった。それはそうだろう、こんなゲームでモンスターと戦えるのは痛みを減らすシステムがあったり、やられても実際に死ぬ可能性がないからだ。

 それがなくなったとき、どれだけの人が戦えるか、始まりの町であり、第一の町であるこの町でおよそ半数のプレイヤーが残ることとなっていた。中でも残ることとなったプレイヤーたちのクラスには偏りがあった。まず一番多いのは前線でタンクの役割を果たさなくてはいけない盾騎士、デスゲームとなった世界で痛みに耐えながら攻撃を受け続ける気力を大勢の人は持ち合わせていなかった。次は僧侶だこのゲームでは直接的を攻撃しなくてはいけないため、パーティに入れて貰えなかった僧侶はどうすることもできなかった。他にも、剣騎士、狩人、斧騎士、盗賊、魔導師といったクラスがあったがそれぞれ残ったり、攻略へと進んで行ったりしていった。

 

 …そして一周間が立ったころ僕は一通のメールを受け取った、相手は前線で活躍している盾騎士の人で混乱の中情報を取り合おうと教えてもらったものだった。そこに書かれていた言葉は一言これだけだった。


 「逃げろ!!」


 なぜ、彼がこんなメールを送ったのかはわからない。だが不安に駆られた僕は知り合いの盾騎士に手当たり次第にメールをした。そして情報を整理し、絶望的な現状を知った。


 …盾騎士はもはや消耗品であると…


☆☆☆


 元来、MMOゲームにとってタンクの存在は大きいものである。多人数プレイを想定しているゲームバランスでは敵の攻撃力が基本的に高く、防御力の高いユニットで防ぎながら攻撃力の高いユニットがとどめを刺すという形になりやすい。それはVRMMOでも同じだ。

 お互いを支え合い欠点を補い、長所を生かしながらプレイするそれが正しい形だ。だがそれはこのデスゲームでは崩されていた。

 …なんてことはない。ただみんな死にたくなかっただけだ。その結果前線に出る盾騎士は急激に減少し維持が難しくなった。ダメージを受けることを嫌う他のクラスは文字通り盾騎士を盾として扱い、おとりとして使ったり、見捨てて逃げ出したり、ダメージを受けることを全て盾騎士に強いた。お互いがお互いを嫌い合い、盾騎士とその他のクラスとでは大きな溝が開いていった、「盾騎士が少ないから俺らが危険な目に合うんだろうもっと前出ろよ。俺たちの経験値のために攻撃引き受けろよ」、「俺たちは道具じゃない、なんでお前らのためにそんなことをしなくてはいけないだ。勝手に戦えばいいだろう!!」多くの盾騎士がタンクの義務を放棄し町に返ってくる。溝が深くなるほど盾騎士は前線から数を減らしていった。そんな中動いたのがゲーム内最大の人口を誇る剣騎士だ。彼らは前線からいなくなった盾騎士を補充するために強硬策を取った。「全ては攻略のため、この世界からの解放のためだ!」といった彼らは第一次攻略遠征軍で上げたレベルとその人口の多さから盾騎士を次々と捕縛していった。捕まえられた盾騎士は文字通り道具として消耗品として無理やり盾として前線に出され、次々と数を減らしていった。…すべては経験値のために…。魔導師、盗賊などタンクがいて初めて能力を発揮する職業もこれに続き、もはや第一の町からも抜け出すことも困難になっていた。

 この状況を嫌った、ソロプレイ向きの狩人は町から離れ、第二の壁役として期待された斧騎士は忽然と姿を消した。第一の町は今や、盾狩りをする人々と逃げる盾騎士たちの戦場となっているのだ。


☆☆☆


 「何とかしてこの町から脱出しないと…いずれ僕もやつらにつかまって使いつぶされる…」


 セイジは手元の画面に描き出されているメールの画面を見ていた。そこにはこの町でまだ生き残っている盾騎士数人による脱出計画と、脱出先にある第三の町の情報が記載されていた。


 …第三の町「港町ルーダ」…第一次攻略遠征軍によって発見された二つの町のうちの一つで海に面した町だ、この町は第二次攻略遠征軍の基地として活用されていたが、剣騎士の多くが盾狩りのために第一の町に向かった瞬間を狙い、抑圧されていた盾騎士が反乱を起こし手動権を得た町だ。現在この町が唯一の盾騎士にとって安全な町と言える。ちなみに第二の町は以前から出入りがなく情報が途絶えているらしい。


 計画の決行は今日となっている。だが脱出は困難を極めるだろう。この町、第一の町はかなり広く、常に盾狩りたちが巡回をしている。東西南北にある門も常に警戒用の人員が配属されていた。門以外の脱出は巡回する人員から難しいと考えられている。ゆえに盾騎士たちが考えた脱出法は東西南北の門に同時に攻撃を仕掛け相手が混乱している間に突破するという簡潔なものだった。…この作戦ではおそらくほぼ大半の盾騎士が門を突破できず捕まるだろう。そして自分以外の門へ向かう盾騎士をおとりに使う作戦でもある。だが盾騎士たちに選択の余地はなかった。例え仲間を犠牲にしてもわずかな希望にすがる。盾騎士たちはそこまで追い込まれていたのだ。


 ---僕の向かう門は南か…


 現在僕は計画の決行時間までこの小屋で時間をつぶしている。外では巡回している盾狩りたちの怒声が聞こえていた。


 「おい、そっちいたか!!」

 「ち、さっきここらでみかけたんだが!」

 「どんくさい盾のくせしてちまちま隠れやがって!!」

 「おい!あっち行くぞ!!」


 その声一つ一つにいつ見つかるか、ここがばれるかと恐怖しながら、時を待つ、ここ数日ほとんど眠れなかった彼の目のしたには大きなクマが刻まれていた、こんなところまでリアルに再現されているこのゲームにイラつきを覚える。セイジはそう思っていた。


 足音が遠のき少し安心する。セイジは少し気を抜いてしまった。だからだろうセイジの近くに忍び寄る影に気が付かなかったのは。


 「ねぇ、キミ?」

 突然の声にその声のした方向へと振り返る、上げそうになる声は気力で無理やり押しとどめた。


 ---誰もいない?…


 しかし、声のした方向には誰もいなかった。疑問に思うセイジ、だがすぐに理由に気付いた。


 ---スキル[スニーキング]!盗賊か!


 気づいた時には既に遅かった、姿を隠した盗賊により、スキル[麻痺の牙]を使われ、状態異常[麻痺]に陥ったセイジはヒザをついた。


 --くそ!!あとちょっとで脱出できたのかもしれないのにこんなところでまだ僕は終わりたくない!!

 だが、思いもむなしく麻痺に陥った体はうごかない。セイジは仕方なく相手の出方をうかがった。しかし相手は何もしてこなかった。


 ---なんだ?なにを考えている。僕を捕まえに来たのではないのか?


 考えるセイジの前で盗賊は姿を現しこう言った。


 「あなた盾騎士ね、あなたを逃がしてあげるよ、その代り私と契約しない?」


 ミーファというなの赤髪に緑の目をした活発そうな女の子はそういった。


☆☆☆


 「契約…?襲ってきた相手とそんなものが結べると思っているのか?」


 僕は蔑み交じりの目線を少女に向けた。


 「あ~、襲ったのは悪いと思っているよ、でもそうでもしなくちゃこうやってゆっくりと話を聞いてくれなかったでしょ?あなたたち警戒心強いし」


 ---確かに彼女のいうことももっともだ、麻痺に陥り逃げられない状況にならなければ僕はおそらく話なんて聞かなかっただろう。だがだからといって信用するわけにもいかない。


 「目的はなんだ?」

 「目的?まあ、色々あるけど一番は私の利益のためかな?キミは捕まった盾騎士がどうなってるか知ってる?」

 「前線に出されてお前たちの消耗品の盾になるんだろう?経験値のために」

 僕ははっきりといった。


 「うん、確かにそれは正しい。だけど私たちっていう点が違う」

 「違う?」

 その言葉に僕は思わず疑問の声を返してしまう。


 「そう、盾を得るのは結局上の人たちだけ、数が少ないからね。捕まえたとしても私たちに使用権が回ってくることはないのさ、だから私たちは町を見回されてる、この町で巡回しているもののほとんどが低レベル体の人々だよ」


 なるほど…。僕は理解した、確かに数が少ない盾騎士を自分たちのために上が独占しても不思議はない。この世界はゲームだ。ステータスがレベルがすべてを決める。弱者に分け前をあたえるほど上は立派な人物ではないということか。


 「だからね、わざわざキミを上に差し出すより、キミと直接取引して契約をした方が私にとってお得なのよ。…盗賊は防御力低いから単体でのレベル上げには向いてないし、キミも使いつぶされるよりは対等な協力関係のある仲間の方がいいでしょ?」


 確かに、これはお互いに利益のある提案だ…だが…


 「僕に契約を結ぶメリットはないね、僕はもうこの町を出る、そのための準備もしてある。使いつぶされる可能性がないなら契約の意味もない」


 …そう、僕はこの町を抜ける。わざわざリスクをおかして信用できない味方を作る必要はないのだ。

 「それって盾騎士たちが計画している同時作戦のこと?たぶん失敗するよ?」


 「え?なんでそれを知っている!!」

 僕は思わず声を荒げてしまった。その後、声を小さくしてもう一度訪ねる。

 「なんで知っているんだ!」

 彼女は僕の勢いに少し驚きながらも言葉を繋いだ。


 「それは、もともとこの計画は剣騎士たちが立てているものだからよ」

 その答えに僕は時が止まったように動かなくなる。


 「…なんで…」


 「もともと情報自体が嘘なの、不思議に思わなかった?町から出ていることの少ない、現在、外に出ることすら難しい盾騎士がいくらメールだからといってこれだけの情報のやり取りをできるなんて」


 「……」


 「わざと真実と偽の情報を上手く混ぜながらとらえた盾騎士を利用して流し、それによって隠れている盾騎士をあぶりだす作戦なのよ、これは」


 「……」


 「だから成功はありえない、もちろん偽情報の中にも正しい情報はある、第三の町が盾騎士のものになっていることは本当だからこの町から出れば逃げれられるけど、現状盾騎士だけではこの町を出る可能性はゼロよ」


 「……」


 「そこで私というわけ、盗賊は様々なスキルがあるはさっきのスニーキングだってそうだし、麻痺の牙も…盗賊と手を組めばこの町を出ることは不可能じゃない、だから手伝ってあげるその代りあなたは私専属の盾騎士としてモンスターと戦ってもらう。これが契約よ」


 「…その話が本当の可能性は…」


 「じゃあ、嘘だと思うの?」


 彼女の言葉に思わず息が詰まる。彼女の言葉を嘘と決めつけるのは簡単だ、だがそれでいいのだろうか?彼女は盾騎士の作戦を知っていた、彼女の話が本当のことだという可能性は高い。ここで彼女との契約をせずに盾騎士の作戦を実行すれば、僕に未来はないかもしれない。…だが彼女と契約すれば少しの希望は残る。この状況で僕にほとんど選択の意思は残ってはいなかった。


 「……わかった。…契約する。」


 「本当ありがとう!私はミーファよろしくね!」

 少女はその年に似合う朗らかな笑顔を見せて手を差し出してきた。


 「セイジだ、よろしく頼む」

 僕は手をだしその手を握る。


 ここで彼女と僕の契約は成立したのだった。



☆☆☆


 「この道であっているのか?」

 僕はミーファに質問を投げかけていた。


 「巡回している奴らを出し抜くには迂回するしかないからね、まあ、信じてついてきてよ。」


 今、僕とミーファは門ではなくこの町を囲んでいる壁の一部分に向かっていた、彼女の話では周りに大きな建物があり、盗賊のスキル[軽業]を掛ければ乗り越えることが可能だろうとのことだった。盾狩りたちは盾騎士に盗賊の仲間ができるとは思っていないだろうから巡回の人々にさえ気を使えば脱出は可能であると。

 それを聞いた僕たちは盾騎士たちの計画に合わせて動き出した、彼らをおとりにすることで逃げやすくするためだ、ちなみに計画が漏れていることは一部の盾騎士にしか伝えていない。誰が捕まった盾騎士かわからないためだ、だから計画は実行される。…それにもう後がない彼らは知られていても実行するしかないということも考えられた。


 一歩一歩しっかりと歩いていく。周りの目が音が空気がこれほど怖いのは盾狩りが始まったあの時以来だ。


 「あと、どれくらいだ?」

 僕は緊張に耐え切れず思わず言葉を出す。


 「あと5,6分かなもうすぐだよ。最後まで気を抜かないで」


 彼女がそういった時、遠くから大きな音がした、何かが破裂するような音、そしてその後に戦闘音が始まった。


 「な、なに!?」


 彼女は思わず取り乱す。


 「まさか…。計画が知られている可能性があるからって決行を早めたのか!!」


 おそらく今の考えが正しいのだろう、なりふり構わない彼らは自暴自棄になり計画を早めてしまったのだ。


 「まずい、急がないとこっちにも盾狩りが来る!!多少無理でも突破しなきゃ」


 彼女の言葉にうなずき、僕たちは警戒しての迂回をあきらめ目標の門へとまっすぐ向かっていった。

☆☆☆


 しばらく走り続け目標の建物がまじかに迫ったとき、目の前に二つの人影が見えた。


 「盾狩り!!」


 僕はその人影がなんなのか理解する。


 「!!盾騎士、こんなところにくそ、捕まえるぞ!」

 二つの人影がこちらへと向かってくる。もはや戦って突破するしかない。


 「やってやる!!シールドパニッシュ!!」

 スキルを発動し、二人のうち一人魔導師の男を吹き飛ばす


 「ぐぁあ!」

 「タケル!!っち!!」

 もう一人の男、剣騎士の男はそれを見たあと切りかかってきた。


 「何が目的かはしらねーがこっから先はいかせねー、スラッシュ!」

 敵の攻撃スキルを僕は盾による防御で可能な限り受け流す。


 「くぅ、リフレクトバインド」

 攻撃反射型行動抑制スキルを使い相手を止める。


 …この戦い元から相手は不利だった相手の勝利条件がこちらの捕縛なのに対してこちらはこの場をしのいで突破すればいい、僕は剣騎士の男のわきを抜け予定のポイントへと向かった。


 「っ!!させるかよ!闘気解放!」

  だが、ちょうど剣騎士を抜き去ったところで剣騎士は状態異常回復スキルを使う。


 「くっ!!」

 男の手が僕へと向かう、このままでは捕まる!!そう思った僕と男の間に彼女、ミーファは割り込んできた。


 「させない!!!」

 「女!?どこから!?」


 彼女は男の手がちょうど自分の胸に当たる位置来るように調整し、そのまま押し出した。


 その瞬間ハラスメント防止の表示と共に男は大きく吹っ飛ばされた。

 「がぁあ!」


 「よし!今のうちに行くよ軽業!!」


 そうして僕は彼女と共に壁を乗り越え第一の町を後にした。



☆☆☆


 「なんとか脱出できたか…」

 僕たちは第一の町から離れ、第三の町との間にある深い森林の中で身を隠していた。


 「えへへ~私と契約してよかったでしょ、特に最後のあれとか」

 「確かに助かったな」


 …そう、あの戦闘の時、彼女は直接、剣騎士の男と戦ったわけではないが彼女は戦闘のサポートをしっかりとしていた。まず戦闘開始直後、スニーキングを使い姿を消し、魔導師の男に麻痺の牙を使い無効化した。その後、おれが捕まりそうになった時、盗賊としてふっとばす技がない彼女はハラスメント警告を利用するという荒業で僕を助けたのだった。


 「じゃあ、私の役割はしっかりと果たしたわけだし、第三の町までしっかりとレベル上げに付き合ってもらうよ。」

 「わかってるよ」


 僕はそういい深い森林の中を進んでいった。



☆☆☆


 「いまだ!!」

 「オッケー!」


 僕の後ろから飛び出した彼女はスキル[裏切り]を使い高火力の攻撃を持ってモンスターを倒す。


 「やったー。これで10匹目調子いいね!」

 彼女の素直な言葉に僕も思わずうなずく


 「しっかりとした仲間がいると戦闘も変わるな、初めてソロで戦ったときよりも断然楽になった。」

 僕たちはその後もたわいのない話をしながらモンスターを探しに奥へと進んでいく。

 そんな時突然森の奥から悲鳴が聞こえた。


 「なに?!悲鳴!?」

 「もしかしたら生き残りの盾騎士かもしれないとりあえず見に行こう」


 僕たちは悲鳴のした方向へと慎重に足を進めていった。


☆☆☆


 彼女は一人モンスターと戦っていた。相手はこの森の最弱モンスター一体、だが彼女にとってはそんな相手でも強敵だった。


 「っ、まだまだヒール」


 彼女は長期戦を覚悟し自分を癒しながら戦闘を継続する。そんな中不意に聞こえた音のする方向へ目を向けるとそこには新手のモンスターがいた。


 「そんな、増援…」


 彼女の戦いはさらに激しさを増すのだった。



☆☆☆


 「ほら、あそこ!」


 彼女の指が指し示す方向へと視線を向けるとそこでは金髪に緑の目をした僧侶の女性が複数のモンスターに囲まれ攻撃を受けているところだった。


 「どうする?」


 僕は彼女に確認を取った、相手が盾狩りのメンバーである可能性がある以上迂闊に助けることはできない。パーティで行動していることもあり、彼女の意思を確認したかったのだ。


 「助けるに決まってるでしょ!!いくよ!!」

 彼女はそういうとこちらの確認も待たず駆け出してしまった。


 「おいおい、突っ込んでいっちゃうのかよ」

 僕はそういいながら彼女を追って戦闘に参加した。



☆☆☆


 「助太刀します!!」

 そういってミーファは一匹のスライムを切りつける。


 「あ、ありがとうございます。」


 「右半分は任せろ、挑発」

 スキルを使い僕は右半分の敵の注意を引きつける。


 そして近くのスライム叩き潰す、スライムは最弱モンスターなだけあって戦士職のキャラならほとんど一撃で倒せる。

 それから残り5匹を手早く片付けた。



☆☆☆


 「あの、ありがとうございました。」

 助け出された金髪の女性がそういって頭を下げた。


 「気にする必要はないよ。連れが勝手に突っ込んでいったからそれを助けただけだし」

 僕はそういって、ミーファに視線を向ける。


 「え、私のせいになってるの!?」


 ミーファは驚いて僕に顔を向ける


 「なってるね」


 「そんな~ひどいよ~」

 そういって彼女は頭俯け落ち込んだ。


 「ふふ、わざわざ気遣ってもらってありがとうございます。」

 金髪の彼女はそういって笑った。


 「あ~、別にそんな気はなかったんだけど…まあ、いいや僕たちはこれで失礼するね」

 僕はそういって歩き出そうとする。ミーファは肩をつかみ僕を止めた。


 「え!?置いてっちゃうの、そりゃないでしょ」

 「置いてかないのか?僕たちに今そんな余裕はないだろう?」


 そう僕たちは今追われている身、明らかに戦闘能力の高くない彼女を連れていくの自殺行為であり、こちらのためにもあちらのためにもならない。僕は最初から助けるだけ助けておいていくつもりだった。


 ---簡単に見捨てるなってちょっと心が荒んでるかな…


 冷酷な発想を簡単にできるようになっている自分にちょっとうんざりしつつ冷静な判断を下す。

 ミーファは僕の言葉に一瞬言葉に詰まるものの気を取り直し言葉放つ


 「余裕がなくても作るの!それに戦闘能力がなくても彼女が僧侶なら頼りになるわ」

 「そこが疑問なんだ、そもそもソロプレイ向きじゃない僧侶がなんで一人でここで戦闘しているんだ?」

 僕とミーファの視線が彼女に向けられる。彼女は二人の視線を受け、顔を俯かせながら答えた。


 「それは…その、最近の第一の町の様子が原因ですわ」

 「第一の町?」


 「そうです、だんだんと人が人と思わなくなり自分のために利用するようになって、そんな時、ふと思ったのです。戦闘に向かない職業だからとクリアを他人任せにして引きこもっている私も彼らと同じ人をモノとして自分のために扱ってしまっている人間なのではないのかと…そう思ったらいてもたってもいられなくて一人で飛び出したんです。仲間と共に行こうとしたこともありましたが誰もついてきてはくださいませんでした…」


 「へぇ~たいそうご立派な理由だな」

 茶化すようにセイジは言ったが内心は感心していた


 ---同族嫌悪からの行動だとしても実際に行動に移せる人間は少ない、最終的に動けた…それだけでも彼女と今もあの町に残っている人間では器が違うというところかな。


 「うん、すごいよ。僧侶で一人でも頑張って行動しようなんて。」

 ミーファはセイジの言い方にも疑問を覚えず素直に関心していた。


 「そんなことはありませんよ、結局逃げていたことには変わりありません。」

 彼女は顔を俯かせたままそう言う。

 暗くなった空気にいたたまれなくなった僕は話を早々にここから立ち去ろうとした。


 「理由は分かった、それじゃあ行くか」

 「そうだねみんなで行こう。」

 「やっぱりつれていくのか…」

 「そうですそんなの悪いですよ!」

 「いいのあなたたち二人を救ったのだから私がリーダーなの!!だから言うこと聞く」


 そういって彼女は無理やり僧侶の女性、リンさんを仲間に加えることにした。


 ---まあ、仕方ないか…


 見捨てようとした僕だったが連れて行くことになって少しほっとしていることに自分でも気づかなかった。



☆☆☆


 「さていくか…」


 第一の町の南門、森への入り口にある集団が集まっていた。

 彼らは森へと逃げ込んだセイジたちを捕縛するために用意された盾狩りの一団であった。


 「シュン準備は終わったか?」

 彼らのリーダーと思わしき青年が剣騎士の少年に声をかける。


 「大丈夫です、ミナカタ隊長、準備終わりました。」

 シュンと呼ばれた青年は隊長であるミナカタにそう返す。


 「よしでは出発するぞ!!」


 そういって総勢6人からなる捜索隊は町を出発した。


 ---セイジ、真紀、ミノルは無事かな…


 追う相手が自分の親友のセイジであるということをシュンが知ることも無く…

 新たな争いの火種は芽吹いたのだった。


☆☆☆


 リンを仲間に加えてから数時間が立った。幾度かの戦闘をこなしお互いにそれなりに打ち解けてきていた。

 

 「へぇ~リンさんはリアルは大学生なんだ~」

 「はい、教育課に通っているんですよ。」


 女性陣が話に花を咲かせ居ている。

 僕はあたりを警戒しながらその会話に適当に相槌を打っていた。


 「ちょっとセイジ適当すぎない、気にならないの私のリアルの話とか」

 「はいはい気になります気になりますよ」

 「何その態度!私はねリアルでもあなたと…」

 

 ミーファが言葉をつづけようとしたときそれを止め彼女は何かに気付いたようにまわりを見渡した。

 「シーフアイに反応がある?この近くに何かがある?」

 そういって彼女は見つけた、この一帯に罠が仕掛けられていることに…


 「気を付けて罠がある!!近くに敵がいるかも!」

 「なんだと!!」


 僕らは全員警戒態勢へと移る。

 そこに声が投げかけられた。


 「おーいちょっと待ってくれ、こっちにはそっちを攻撃する意思はない!」

 そういって狩人の少年が木の上から降りてくる。


 「おれはミノル、この辺は狩人の隠れ里があるから罠があるんだ、迂回ルート教えてあげるから警戒を解いてくれ。」

 突然現れたことよりも僕は別のことに驚いていた。


 「ミノル…その顔…もしかして夕嶺ミノルか?」

 「ん?なんで俺の名前を知っている?」

 ミノルは僕の言葉にそう返した。僕はすかさず理由を答える。


 「僕だ!セイジだよ!風立セイジ!」

 ミノルはその言葉に驚き目を見開いた。


 「セイジか久しぶりだな!まさかこんなところで合うとは思わなかったぞ!」


 僕は深い森の中で旧友と再会したのだった。


☆☆☆


 「そうか…第一の町にいたのか…大変だったな…」

 「まあな、でも何とかにげだしてここまで来られたんだよ。」

 「私のおかげでね」

 「はいはいそうですね~」

 「まったく扱い雑だよホント!!」

 「ははは、仲良いな真紀がいたら嫉妬しそうだぞ」


 久しぶりの再会に弾む会話。僕らは森の中を移動しながらミノルと会話を楽しんでいた。

 あたりの警戒はリンが担当してくれている。


 「楽しそうですねセイジさん」

 リンは警戒の合間を縫って声をかけてくる。

 

 「そりゃな。もう会えないかもしれないと思っていた友達がこうして生きてまた会えたんだから…そういえば峻と真紀は今どうしているんだろう?」

 「あのね、私…」


 ミーファが何かをしゃべろうとするがミノルはそれを遮って言葉をつげる。


 「大変だ、セイジ。今、狩人の仲間から連絡があったんだが、どうやら盾狩りの一団が森の中をこちらに向かって進んできてるらしい。」

 「盾狩りが?!」

 「そうだ。みんなは先に向かってくれ!できるだけ急いだほうが良い。俺は少し様子を見てくる」

 「そんな!?危ないだろ、やめろよ!!」

 「大丈夫だ俺は盾じゃないから危険は少ないし、見てくるだけだ…できるだけ速くすすめよ」


 そういってミノルはさっていった。


☆☆☆


 ---あれか、盾狩りの一団っていうのは


 ミノルはセイジたちと別れた来た道を戻り、盾狩りの集団を発見していた。それほど距離は離れておらずこのペースだと追いつかれる危険性も高かった。


 ---とりあえず、情報だけでもあつめねぇーと剣が3に盗賊1、僧侶が1に魔道が1の6人パーティーか…

 

 そうやって様子を確認していると、盾狩りの一団…その中の剣騎士たちが会話を始めた。


 「シュンあとどれくらいで盾とぶつかると思う?」

 「こちらは町から休みなく歩いているのでそろそろ追いつく頃合いかと…」

 「そうか全員戦闘準備をしておけよ」


 その声に盾狩りの一団はおうと声をあげる。だがそれよりもミノルはあのシュンと呼ばれた少年から目を離せなくなっていた。


 「あの顔…ほとんどいじってないなら…それに名前も…まさかお前なのか?」

 友人が友人を狙うために進んでいる、その事実に驚き混乱していた。そして決意を固める。


 「もし、おまえが峻なら俺が止めてやる。俺の目の前で友達同士を戦わせるなんてことさせね~」


 ミノルは盾狩りの一団を攻撃するための準備に移るのだった。


☆☆☆


 深い森の中進む盾狩りの一団、突然彼らの中の僧侶が悲鳴をあげた。

 「ぎゃっ」


 そしてそのまま僧侶は倒れ、動かなくなった。

 状況に気付いたミナカタは声をあげる。

 「敵襲だ戦闘態勢を取れ!!」


 全員であたりを警戒するが敵の姿は見えない。

 

 ---僧侶に刺さっているのは弓矢…敵は狩人か…しかしなぜ狩人が?

 ミナカタは思考するが考えても仕方ない。今は敵の対処をする方がさきだとあたりを探るがまだ見つからない。


 ---どこにもいない…なかなかプレイヤースキルの高い相手だな…

 そう考えた瞬間、今度は魔導師の男が無効化される。


 「くそ!!どこだ!出てきやがれ!!」

  焦れた剣騎士の一人が叫ぶが状況は好転しない。


 「森は俺たちの狩場だぜ、さっさと落ちな」

 その声が響いてきたかと思うと盗賊と剣騎士の一人が無効化される。


 「ちっ、ここはもうだめだ。走り抜けるぞシュン。」

 この場での敗北を悟ったミナカタはシュンと共に敵のテリトリーを抜けるために走り出す。

 「はい!!」


 森の中の逃亡戦が始まった。


☆☆☆


 「くっそ!!止まれそっちいったら困るんだよ!」

 ミノルは焦っていた。麻痺薬を塗った弓矢を使って無効化した四人をロープで木に縛りつけた後、逃げ出した二人を追っていたが、この二人が予想外に強く、攻撃を回避されつくしている。このままではこの先にいるセイジたちと合流してしまう危険性が高かった。


 ---確実に倒すために強い奴を後回しにしたのは失敗だったか、くそこのままじゃまじでまずいぞ


 ミノルの思いも適わず、セイジとシュンの戦いはまじかに迫っていた…


☆☆☆


 セイジたちは森の中を先へと進んでいた。だが今は突如聞こえてきた戦闘音に足を止めていた。


 「この音、誰かが戦っているのか!?」

 「どうやらこっちに向かってきてるみたい。どうするセイジ?」

 「ミノルが戦っている可能性が高い。助太刀に行こう!」

 

 そういってセイジたちは音のする方向へと向かっていった。


☆☆☆


 「隊長!前からも何か来ます!!」

 シュンのその言葉にミナカタは反応する。

 「新手か!!くっそこのままでは逃げ切れん。戦うぞ!!」


 そして、セイジが飛び出してきた。

 「盾騎士!!捕縛対象か!」

 「シールドインパクト!!」

 広範囲に広がる衝撃波がシュンとミナカタを吹き飛ばす。


 「がぁ」

 「くそ!!」


 その攻撃により、ミナカタとシュンは引き離された、セイジはミナカタに対し、追撃を掛ける。

 「シールドパニッシュ!!」

 「くっ」


 セイジの攻撃が次々とミナカタへヒットしていく、反撃をしようとするミナカタを後方から来た弓矢が止めた。


 「っち」

 ミナカタはそれを弓矢は避けたがそれにより、さらにシュンと引き離されてしまった。


 「ミナカタさん!うぉおおお」

 それを見たシュンはセイジとの距離を詰め切りかかってきた。


 「やめろシュン!そういつはセイジだぞ!」

 その言葉に攻撃をしかけようとしていたシュンと反撃をしようとしていたセイジの動きが止まった。

 「セイジ?」

 「シュン?」


 その時、戦場に一瞬の隙が生まれた。ミナカタはそれを理解すると、ミノルに切りかかる。


 「しまった!」

 ミノルは斜めに切り裂かれ、倒れた。

 

 「ミノル!!」

 セイジの声が響き渡るそれと同時にミナカタはシュンへと呼びかける。


 「道はできた。撤退するぞ!」

 「あ、え、はい」

 その言葉に状況に混乱しながらもシュンはミノルのわきを抜けて撤退した。


 「待って!」

 セイジは一瞬追おうと考えるがミノルを助けるのが先だと考えて追うのをあきらめミノルのそばへ行く。

 「ミノル大丈夫か!?」

 「へ、へまやっちまった。だが大丈夫だ。まだLPも残っている」

 「そうかよかった。リンに直してもらう。リン!ミノルを頼む」

 「わかりました」


 リンはミノルの治療を始める。それを見ながらセイジはミノルを問い詰めた。


 「ミノルなんで勝手に戦闘なんてしたんだ。偵察だけの約束だっただろう」

 

  その言葉にミノルは顔をしかめながら答えを返す。

 「シュンがあの剣騎士だってことが偵察中にわかったんだ、だからセイジとは戦わせたくなかった。セイジとシュンは親友だからな。俺が足止めしてなんとか追い返すつもりだった。だけど逃がすどころか逆にセイジの方へ行かせてしまったすまん。」

 「謝るところはそこじゃないでしょ、勝手に危険なことをしたことを誤らなくちゃ」

 横からミーファがそう声をかけた。

 

 「確かにそうだなセイジすまん」

 ミノルはそう素直に謝った。

 「…俺のためにしてくれたのはわかったからな…だが次からはこんなことをしないでくれよ」


 こうして盾狩りの追跡隊との死闘は終わった。


☆☆☆


 あれから少しの時間が過ぎ…第三の町の前にセイジたちは来ていた。


 「ミノルはやっぱりついてきてくれないのか?」

 「ああ、狩人たちの隠れ里のこともあるし、第三の町は盾騎士たちの町で俺らよそもんは居ずらいからな」

 「そうか…わかった。元気でやれよ。クリアまで死ぬなよ。」

 「おう」


 そういってミノルは去っていた。


 「さて、俺たちも行くかそういえば二人は俺と一緒の行動でいいのか?」

 「もちろん、契約はまだ続いているしね」

 「助けてもらった恩もありますからついていきます」


 こうして俺たちは第三の町へと入っていった。


☆☆☆


 「そこで止まれ!!」

 第三の町の門番をしている盾騎士がそうセイジたちに呼びかける。


 「お前たちは何者だ?」

 その質問にセイジは答える。

 「俺は盾騎士のセイジ、そして横にいるのは俺の仲間だ。俺たちは第一の町からここに逃げてきた」 「第一の町?あそこから逃げてこられたのか?ちょっと待ってろ。今リーダーを呼んでくる」


 そういって門番の一人が町の中へと入っていった。

 しばらくたった後。門番が一人の男を付けて帰ってきた。その男は明らかにレベルの高そうな装備を装備した男で高レベル者ということが一目でセイジたちにはわかった。


 「待たせたね、私は現在この町のプレイヤーのリーダーをやっているオルトと言う。あの第一の町から逃げ出してきた盾騎士がいると聞いてね。大変だったね。この町は盾騎士のための町だ。もう安全だからゆっくりとしていくといい。」

 「恩に着ます。」

 

 セイジたちはオルトの案内で町へと入っていった。


☆☆☆


 セイジたちが町で暮らし始めて一周間が立った。町での暮らしは非常に快適で、ミーファとリンが盗賊と僧侶ということで警戒されたり、嫌がらせをされることもあったが、それらもミーファの元気さで何とか乗り切り平和に暮らしていた。だが日を追うごとに町の空気がピリピリとし出した。第一の町の盾騎士たちが全員捕まったことで他の盾騎士を捕まえるためにこの町へ戦争をしかけてくるのではないかそういう噂が広がっていた。


 「なんかピリピリしてるねぇ~この町大丈夫かな?」

 ミーファが言葉を投げかける。

 「大丈夫だと信じたいけどな、いざと言うときのために第二の町へ逃げる準備をしておこう」

 「もう逃げる準備するの?」

 「当たり前だ、あんな大変な思いをしてここまで来たんだ。こんなところで捕まってたまるか。第二の町はおそらく盾騎士の代用品となるのを恐れた斧騎士たちが占拠している。上手くいけば町に入れてもらえるかもしれないかな」


 そうミーファと会話していると突然リンが部屋へと飛び込んできた。


 「セイジ、ミーファ大変。戦争が!」


 その言葉と共に大きな爆裂音があたりに降り注いだ。そして何かが部屋の天井にぶつかり部屋を吹き飛ばした。


☆☆☆


 「うぐぅ」

 セイジはダメージからくる痛みにうめきながら、体を起こしステータスを確認する。

 

 ---LPが半分も減っている。一体何が…


 当たりを見渡すと周りは大量の瓦礫と燃え盛る木、廃墟のようになった部屋の様子が映し出された。

 「ミーファ、リン大丈夫か!」

 僕は二人の姿を探し声をかける。するとすぐそばの瓦礫の中からミーファが起き上がり声をあげた。

 「私は大丈夫、リンは?」

 その質問により二人でリンを探す、そして燃え盛る大きな瓦礫の中に埋もれているリンを見つけ出した。


 「そんな…」

 ミーファの声が響き渡る。セイジはリンを助け出そうと近づくがそれをリン本人が止めた。


 「ち、近づかないでください…」

 「だ、だけど」

 「二人…がかりでもこの瓦礫を…どけるのは無理です。…今も火によるダメージを受け続けてます。助けようとすればあなたたちも巻き込まれます。私のことは見捨てて早く第二の町へ…何のためにここまで逃げているのかを思い出してください…」

 「そ、そんな…二人なら無理でも他に人を連れて来れば…」

 「剣騎士と盾騎士の…戦争が始まったのです。ここに来れるものなどいませんよ」

 「くっそ!」

 「がぁあ、く、もともとあの森でやられていたかもしれない身です。場所が変わっただけのこと…さあ早く行ってください。」

 「でも…」

 「でもじゃありません!ここに来るまで様々なものを犠牲にしてきたのでしょう!?」

 「…!!」

 「なら進むべきです!犠牲にしたものを背負って、もしこのことを気に病むならこの世界で生き抜き続けてください。それがあなたのすべきことです」


 僕は無言でミーファの手を取った。


 「セイジ?」


 そして第三の町を後にした…


☆☆☆


 「ちょっとセイジどういうつもり?!なんでリンを見捨てたの?!」

 ミーファは怒りながらセイジへと詰問する、セイジは苦々しい顔でその問いに答えた。


 「リンの言う通りだ…僕は犠牲にしてきたんだ、第一の町で一緒に逃げるはずだった盾騎士たちを…それだけじゃない。痛みに耐えられなくて第一の町に引きこもって出てる犠牲に見て見ぬふりをしてきた…それなのにリンを助けたいからという理由で犠牲を無視して生き残ってきた命を無駄にするなんて…そんなことは許されないんだ。」

 「セイジ…」

 「僕はあいつらと…剣騎士たちと違う、あいつらが犠牲を作りそれを無視して自分のために生きていくなら…僕は全てを背負って生きる、例え醜くても最後まで自分の力であがく。それがリンが望んだことでもあると思う」

 「…」

 「だから、第二の町まで向かう、最後まで自分の足であがいて見せる」


 こうして僕たちは第二の町へと向かった。


☆☆☆


 「こ、これは…」


 唖然とする僕とミーファの前に現れたのは数日かけてやっとたどり着いた第二の町が燃えている光景だった。


 「そんな…もう第二の町まで襲われていたなんて…」

 「ど、どうするのセイジ!ここがこうなってしまった以上行く当てがもうないわ!?」

 「いや、まだ狩人だちの隠れ里があるはず、一度引き返して…「そこはもうないよ」」


 突然の声に振り返る、そこにいたのはシュンだった。


 「シュン!?もうないってどういうことだよ!?」

 「決まってるじゃないか僕たちがつぶしたからだよ」

 「潰された…?もう?」

 「そ、そんな。ミノルはミノルはどうなったんだ!?」

 「ミノル?そうかあの時の狩人はやっぱりミノルだったのか。もういないよ俺が消した」


 その言葉に驚愕し、続く言葉が出てこない。するとシュンの方から話を切り出してきた。


 「ミナカタさん覚えているか?ほらあの時俺と一緒にいた剣騎士だよ」

 「確かに剣騎士がもう一人いたけどそれがどうかしたのか?」

 「彼もね消されたんだよ。ギルドに、粛清されたんだ」

 「!!」

 「ミナカタさんは作戦の失敗の責任を取らされて消された。奴らにとってはプレイヤーが一人減ろうが関係ないんだ。それが攻略から遠ざかる行為だっていうことは誰にだってわかるのに…」

 「セイジ…この世界はレベルが全てなんだ。強い奴にはかなわない。だからこそ生き残るためには媚びて言う通りにして必死でご機嫌とりをしないといけないんだ」

 「…」

 「だから作戦を失敗させるわけにはいかない、相手がだれであろうとどんな理由があろうと命令は絶対なんだ…だからセイジ…俺のためにここで消えてくれ!」


 そういい、シュンが切りかかってくる。セイジは盾でそれを防ぐ。


 「シュン!本気なのか!?」

 「本気さ!」

 「っセイジ!シュン!二人ともやめて」


 そして二人の戦闘を止めるためにミーファが戦闘介入する。しかし


 「邪魔だ!」


 そう言いながらシュンの放ったスキルによる一撃によってミーファは切り裂かれた。


 「え?」


 そしてLPがゼロになり…


 「結局いいそびれちゃったかな…」


 光となって世界から消滅した。


 「ミーファ!?シュンおまえ~!!」


 セイジの強力な一撃がミーファを切り隙の出来たシュンに直撃する。


 「…これで終われる。もう…奪わずにすむ…」


 そしてシュンも光と消えた


☆☆☆


 「いや~よく頑張ったね~さすが町から逃げ続けてきただけのことはあるよ」


 そう言いながら男とそれに引き連れられた魔導師たちが茫然とするセイジの前に現れた。


 「…お前らは何者だ…」

 「僕は剣騎士たちをまとめるギルドのトップ、まあギルドマスターってやつだよ」

 「ギルドマスター…お前がシュンにあんな命令をしたやつか…」

 「そうだよ、この世界はデスゲームになった、いわば現実さ、弱肉強食の世界。やられなきゃ、奪わなきゃやられちゃうの、だからさ当たり前のことでしょしっかりとした盾を手に入れられなきゃ俺たちの身があぶないんだからさ、その為には邪魔なやつらや使い捨てにちょうどいい剣騎士の犠牲なんて容易いものだろ?」

 「…」

 「さて、お話もこれくらいにしようかな魔導師たち拘束魔法だ!」


 当たりを囲んだ魔導師たちから放たれた光の鎖がセイジを捕える。


 「ふん、ここまで逃げた割には案外あっけなかったな。」

 「…まだだ」

 「…ん?」

 「まだ終わってない!」


 セイジはそういうのと同時に地面に向かってシールドインパクトを放つ、地面に押し付けられた衝撃が反射し、光の鎖を断ち切る。


 「地面に攻撃をあて反動で鎖を断ち切る!?ばかな!?こんなことゲームでできるわけがない!?」

 土煙の中、セイジは姿を現す、それはすでにギルドマスターを名乗る男の目の前だった。


 「ゲームじゃない、俺たちは必死に今をいきているんだ!」


 攻撃がギルドマスターに当たるだが圧倒的なレベル差を持つギルドマスターを倒すことはできなかった。


 「俺に!傷を!低レベルのくせに!ふざけんじゃねぇ~!」

 そういって放たれた一撃によってセイジは光と消えた


☆☆☆


 「お、気づいたぞ!」


 目を覚ますとセイジはどこかの病室にいた、そして目の前には見知った男…ミノルがいた。


 「ミノル?…なんでここにというかここはどこだ?」

 「ここは近所の病院、誠二お前は現実に帰還したんだ!」

 「現実に?なんで?俺はゲーム内でやられたはずじゃ?」

 「…落ち着いて聞いてほしい。そもそもあの世界はデスゲームじゃなかったんだ」

 「!!どういうことだ!?」

 「全てあの開発者の悪意によるものだったんだ。あいつは一度もデスゲームと言う言葉は使わなかった、あえてそう間違われるようなニュアンスでしゃべっていただけなんだ、状況とそう推察させる言葉を使ってあいつはあの世界をデスゲームに見せかけた。本当の世界の脱出方法があのゲームでロストするということだと匂わせないようにな」


 ---確かにやつはデスゲームとは一言も言わなかった。やつが言ったのは

 『「ああ、混乱もわかるよ。うん、要はあれ小説とかアニメとかでよくあるあれだよ。この世界で生き続けるためにはキャラがロストしたらいけないの」

 「この世界から抜け出すためにはこの世界で終わりを作らないといけない。ご高名なみなさんなら意味は分かるよね?」』


 この世界で生き続けるためにはということは別に元の肉体が死ぬといっているわけではなくあくまであの世界の話だ、そして抜け出すためにはこの世界で終わりを作らないといけないは要はあの世界でロストしなければいけないと言い換えることもできる…だからってこんな紛らわしい言い方…。


 「あの開発者はな、愉快犯なんだ。あえてデスゲームと誤認させることで、それを知らずロストすることが脱出の方法なのに醜く生き残るためにお互いを犠牲にし合う、そんな姿を見て笑うためにあの世界を作ったそうだ。わざわざ外部からの救出を無理にした状態でな。最初に見た犠牲者、あれはダイブ用の装置を取り外してしまった犠牲者だ。…良く考えれば、ゲーム開始のあの場でもうロストしている人間なんているはずないのに、みんな動揺して気が付かなかったんだな。まあ、そういった理由でゲームは今も続いてる。剣騎士たちギルドの連中も今も醜くあの世界で争ってるよ。」

 「なんていうか、剣騎士たちはまあ自業自得ってところか。そんなことよりもシュンやリン、ミーファたちもこの世界に無事戻ってきているのか?」

 「ああ、シュンはついさっき目覚めたばっかだから別場所で説明を受けてる。リンはミーファのところによって説明してるよ。そういえばミーファの正体知っているか見たらびっくりすると思うぜ」

 「正体?それよりみんな無事かよかった。」


 その時、病室へと向かってくる足音が聞こえてきた。


 「む、人が?なるほどそういうことか」


 ミノルは一人何か納得したようにすると。部屋を出ていった。


 「お邪魔な俺は出ていくとするよ」


 ミノルが出ていった後少しして二人の少女と一人の少年が部屋に入ってきた。


 「シュン、真紀!それとそちらの女性は?」

 「私はリンですよ。セイジさん」

 「え、リンさん?っていうことはミーファは真紀だったのか?」

 「そういうこと、隠してて後免ね」

 「セイジすまん」

 「もういいよ、過ぎたことだし結局全員無事だったんだからさ」


 こうして僕たちのあの世界に取り込まれた日々は終わった。結局小説の主人公のように何かをなしたわけではないけどこうやってみんな無事だったんだからそれでよかったと思う。でもだだ一ついえることはやっぱりデスゲームでタンクとかまじありえん、だろう。

後半まとまらなくなってしまった。小説は難しい。

一応設定

剣騎士

最大多数の人数を誇るジョブ。デスゲーム開始時、タンク役である騎士の有用性にいち早く着目。これを確保し、第一次攻略遠征を起こした。これにより、第三の町までの街道を解放したが多くの騎士を犠牲にした。遠征により、高レベルを多数抱え、遠征による恐怖、危険性を認識し逃げ出した騎士の捕縛のためにかなり汚い手を使う騎士たちの敵。


魔導師

剣士と一緒に第一次攻略遠征を企画したジョブ。剣士たちのおこぼれを預かり、それなりの高ランクが揃う。二番目の人数を誇るジョブであり、盾役がいないとしっかりとした戦闘ができないため必死さは剣士より上。対人魔法を用い騎士たちの捕縛に当たる。


盗賊

数は少ないが最も騎士を必要とするジョブ。回避力は高いが守備力は低く、遠距離攻撃も少ない。盾役によるヘイト管理を必要とする技も多くあり、魔導師に並ぶ必死さを誇る。彼らの使う罠や発見能力は多くの騎士をとらえ残りの騎士たちを追い詰めていく。


僧侶

魔導師と同じように後衛職だが、敵への接近が少なく魔導師ほど敵の注目を浴びない(攻撃をしない)ため騎士への軋轢は他のジョブに比べて少ない。ただ、戦闘で経験値を得ることが難しく。ほとんどが町で引きこもっている。


狩人

もともとこのジョブを取るものは変わり者が多く、弓を使った遠距離のヒットアンドアウェイが可能なため騎士を必要としない。騎士の余りの惨状に協力的なものも多い。


斧騎士

攻撃力重視のジョブであるがHPが多く盾役を務めることも可能。そのため騎士の扱いが自分たちに来るのではないかと恐怖し、暗躍している。


盾騎士

いわゆるタンクを務めるジョブ。デスゲームによってその価値が急上昇し、命を狙われることとなった。剣士の次に多かったが第一次攻略遠征によって多くのものが命を落とし、生き残っているものも使い捨てにされるために捕縛されるため多く急速に数を減らしている。


第一の町「はじまりの町」

剣騎士たちと魔導師によって占拠された町。見つかった盾騎士は確実に経験値のためのエサにされる。多くのプレイヤーが引きこもっている町でもある。


第二の町「ウォールキャニオン」

山間の壁のような崖に挟まれた町。何かしらの情報規制が敷かれており内部の詳細は不明。


第三の町「港町ルーダ」

攻略組に良いように使われていた盾騎士たちが反旗を翻し乗っ取った海岸都市。逃げてきた盾騎士たちを匿うための一種のシェルターになっている。今この町は剣騎士たちに狙われ戦争の危機に陥っている

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱりデスゲームになったら間違いなく盾役と罠対抗役が死の危険ナンバーワンだよね。
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