9−2
とりあえず着替えて来い、とマオを隣の部屋に連れて行くと、次に玄関の扉をあけた。
「……あ、お話終わりました?」
扉の横に寄りかかるようにして立ち。ケータイをいじっていたエミリに頷きかける。
「悪かったな」
「いえ」
エミリは再び部屋の中に入りながら、
「どんな恥ずかしい言葉で、マオさんを説得されたんです?」
悪戯っぽく笑った。
見抜かれている。
「ほっとけ」
苦々しく言葉を返した。
またダイニングに戻ってくると、部屋着に着替えたマオも部屋から出て来た。首元にはしっかりとペンダントがついていて、それに少し微笑む。
「マオさん」
エミリが立ち上がると、マオの目の前に立った。
「ごめんなさい」
そこで頭を下げる。
「エミリさん?」
マオが驚いたように声をかける。
「一条のこと知らなくって。研究所のことなのに、何も知らなくって。心霊写真のことも、知ってたら送らなかったのに。ごめんなさい」
早口の謝罪に驚いたのは、隆二も一緒だった。エミリが気に病んでいたのはわかっていたが、まさかここまでとは。ずっと、この半月、どこで謝ろうか考えていたのだろう。
「え、待って。エミリさんが悪いんじゃないよっ」
「でもっ」
「エミリさんが助けてくれたの、知ってるもん。ありがとう」
「マオさん……」
二人ともなんだか声が泣きそうになっている。おいおい大丈夫だろうな、と思っていると、
「本当、最悪の前に間に合って良かったです」
「うん、ありがとうっ」
何故か二人して抱き合って号泣。
なんでこうなった?
感情の波に一人置いて行かれた隆二は、間抜けな顔をして、わんわん泣く少女達を見る。
それにしても、緑の髪と赤い服。クリスマスみたいなやつらだなーと、どこまでもひとでなしなことを思った。
「……あー、そろそろいいか?」
二人が思う存分泣き、落ち着いたところでそう声をかけた。
「はい、すみません」
ハンカチで目元を拭きながら、エミリが頷く。マオはティッシュを探して彷徨いはじめた。
「あー、その引っ越しの件だが」
置いてあったティッシュの箱をマオに渡しながら、本題を切り出す。
「決まりました? 場所」
「ああ。マオの希望で」
その場所を告げると、エミリが驚いたような顔をした。
「いいか?」
「こちらは構いませんが……、神山さんはそれでいいんですか?」
いいか悪いかで言われたら、正直微妙だけど、
「どこでもいいって言ったの俺だしなー」
そう呟くと、マオがふふっと楽しそうに笑った。僅かなものではあるが久しぶりの笑みに、心の底で安堵する。
「わかりました」
エミリも小さく微笑むと、
「それじゃあ、準備できたらご連絡しますね」




