7−3
マオは先ほどとは違う路地裏の、駐車場の影隠れた。
乱れた呼吸を整える。
あと、ちょっと。
体内の感覚でわかる。あと少しで実体化がとける。そうすれば、遠慮なく飛んで帰ればいい。隆二の家へ。
それまで見つかりませんように。
祈るようにペンダントを握りしめる。
「かのーん」
男の声がする。思っていたよりも近くだ。
あと少し。あと少しだから。
ぎゅっと目をつぶる。
声。足音。
あっち行け。あっち行けあっち行け!
体から体温が消えていくのがわかる。実体化がとける前兆。
あとちょっとだ。
ここまで来たら、あとはもう待つだけだ。
少し視界が揺らぐ。
耐えるように一度目を閉じる。
ふわりと、体が浮くような感覚。浮遊感。
目を開ける。
目の前に手をかざすと、透けて地面が見えた。よかった、ようやく実体化がとけた。
今なら逃げ出せる。
そう思って動き出そうとしたとき、かしゃんっと何かの音がした。視線を落とすと、着ていた服と、ペンダントが転がっていた。
それに一瞬、足が止まる。
ペンダント。せっかく隆二がくれたペンダント。それをこの場所においておくことに、一瞬の躊躇いが生じた。
それが、間違っていた。
「見つけた」
すぐ後ろから声がして悲鳴をあげかけたときにはもう遅かった。
腕を掴まれる。
その白い手袋は、エミリがつけているものによく似ている。幽霊が触れるというあの手袋。
そんな風に思った次の瞬間には、銃を突きつけられ、撃たれた。




