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居候猫の父の気がかり  作者: 小高まあな
第七幕 猫の手だって厭わない
23/34

7−2

 すっかり朝になって、通りは通勤通学の人々であふれはじめた。

 隆二は走りにくくなった通りに舌打ちする。

 エミリから一度連絡があったが、特にマオがかかわっていそうな事件事故はないらしい。それにひとまず胸を撫で下ろしたものの、だったら何故ここまで見つからないのかが不安になるところだ。

 人の間をすり抜けて、勢いよく走りながら、角を曲がったところで、

「わ」

「きゃっ」

 反対側から来た人影にぶつかりそうになった。慌てて立ち止まる。

「うわっ、びっくりした」

 角でぶつかりそうになったのは、例のコンビニのオカルトマニアな店員、菊だった。

「あ、お久しぶりですー、お元気でしたか? どうしたんですか血相をかえて、またヴァンパイア」

「こいつ、知らないかっ!?」

 なんだか無駄な話をはじめそうな菊を遮って、二つ折りのケータイを開く。待ち受けに設定された、マオの写真。それがまさかこんなところで、役に立つとは。

「わ、かわいー。どなたです? 恋人さん?」

「いいからっ」

「……んー、見たことないですね」

「そうか、ありがとう」

 ケータイを奪い返すと、再び走り出そうとした隆二に、

「あの」

 菊が躊躇いがちに声をかける。

「また人探しですか? 手伝いましょうか?」

「頼む」

 迷わなかった。その手を掴むことに。

「じゃあ、連絡先と、あとその写真いいですか? 皆に回します」

「……ごめん、やって」

 ケータイをそのまま渡す。写真いいですか? ってどういうことだよ。

 菊はきょとんとした顔をしてから、少し微笑むと、

「わかりました」

 うけとったそれを操作する。ああ、やっぱり若い子ってすげーな。

「できました」

 しばらくしてから、菊が隆二にケータイを返す。

「写真をまわして友達に見なかったか聞いてみます。なにかあったら、電話しますね」

「頼んだ」

 いつだったか、エミリを探し出してくれた彼女の情報網ならば、見つかるかもしれない。ならばそれにすがることに躊躇わない。

 手段は選ばない。差し出された手は拒まない。プライドや見栄なんてどうだっていい。自分だって成長するのだ。びびたるものだけど。

 菊に軽く頭をさげると、また走り出した。


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