7−2
すっかり朝になって、通りは通勤通学の人々であふれはじめた。
隆二は走りにくくなった通りに舌打ちする。
エミリから一度連絡があったが、特にマオがかかわっていそうな事件事故はないらしい。それにひとまず胸を撫で下ろしたものの、だったら何故ここまで見つからないのかが不安になるところだ。
人の間をすり抜けて、勢いよく走りながら、角を曲がったところで、
「わ」
「きゃっ」
反対側から来た人影にぶつかりそうになった。慌てて立ち止まる。
「うわっ、びっくりした」
角でぶつかりそうになったのは、例のコンビニのオカルトマニアな店員、菊だった。
「あ、お久しぶりですー、お元気でしたか? どうしたんですか血相をかえて、またヴァンパイア」
「こいつ、知らないかっ!?」
なんだか無駄な話をはじめそうな菊を遮って、二つ折りのケータイを開く。待ち受けに設定された、マオの写真。それがまさかこんなところで、役に立つとは。
「わ、かわいー。どなたです? 恋人さん?」
「いいからっ」
「……んー、見たことないですね」
「そうか、ありがとう」
ケータイを奪い返すと、再び走り出そうとした隆二に、
「あの」
菊が躊躇いがちに声をかける。
「また人探しですか? 手伝いましょうか?」
「頼む」
迷わなかった。その手を掴むことに。
「じゃあ、連絡先と、あとその写真いいですか? 皆に回します」
「……ごめん、やって」
ケータイをそのまま渡す。写真いいですか? ってどういうことだよ。
菊はきょとんとした顔をしてから、少し微笑むと、
「わかりました」
うけとったそれを操作する。ああ、やっぱり若い子ってすげーな。
「できました」
しばらくしてから、菊が隆二にケータイを返す。
「写真をまわして友達に見なかったか聞いてみます。なにかあったら、電話しますね」
「頼んだ」
いつだったか、エミリを探し出してくれた彼女の情報網ならば、見つかるかもしれない。ならばそれにすがることに躊躇わない。
手段は選ばない。差し出された手は拒まない。プライドや見栄なんてどうだっていい。自分だって成長するのだ。びびたるものだけど。
菊に軽く頭をさげると、また走り出した。




