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居候猫の父の気がかり  作者: 小高まあな
第六幕 The cat is in the cream pot.
21/34

6−5

 隆二は、一度試しに家に戻って来た。入れ違いになっている可能性も考慮して。けれども、やはりそこにマオの姿はなかった。

 舌打ちすると、マオのケータイをテーブルの上に置く。戻って来たら連絡しろ、のメッセージをつけて。

 それから、ブレスレットの袋も隣に置いた。マオから直接渡されるまで、これは自分のものじゃない。

 時計を見る。夜中の三時だ。

 ここまで本当に姿が見えないなんて、本当になにかあったんじゃないか。もう、戻って来ないんじゃないか。

 考えると、心臓がぞっと凍える。

 と、ポケットにいれたケータイが震えた。

 慌てて取り出す。着信表示は、進藤エミリだった。

「もしもし。夜分にすみません。今、留守電聞きました。今日は珍しく、ずっと外だったので」

 眠気を噛み殺したような声。

「どうしました?」

「マオが帰って来ないんだ」

 告げると、電話の向こうの空気が変わった。

「いつから?」

 返ってきた声は、張りつめていた。

「夕方から」

 言いながら、ここまでの出来事を説明する。

「……わかりました」

 返事をしたエミリには、もう眠気は感じられなかった。

「わたしもすぐにそちらに……」

「いや、それは大丈夫」

 エミリがここに来るまでには、また時間がかかってしまう。研究所とは距離が離れているし、もう電車もない時間だ。それにあんな赤服に夜間出歩かれたら、また別のトラブルを引き起こしてしまうだろう。

 それよりも、

「調べて欲しいことがある」

「はい」

 それを告げるには、勇気が必要だった。一拍おいてから、早口で。

「夕方から今まで、うちの辺りで起きた事件事故、調べてくれないか」

 電話の向こうで、エミリが息を呑んだのがわかった。

「神山、さん。それは……」

「そうじゃなければいいと思ってる。だけど」

 なんらかの事件事故に巻き込まれたんじゃないか。そして怪我なりなんなりして病院に搬送されて、連絡先がわからず隆二のところに連絡が来ない。その可能性だって十分考えられる。

「可能性を否定して、見逃すなんてことの方が、あってはならないだろ」

 怪我をしているのならばはやく会いにいってやりたいし、最悪なことがあるのだとしてもはやく傍に行きたい。このまま見逃してひとりぼっちにさせてしまうことが、一番あってはならないことだ。

 絞り出すように発した言葉に、エミリは少し躊躇ってから、

「わかりました」

 力強い声で返事した。

「なにかわかったらすぐに連絡します」

「すまない、夜遅くに」

「いつものことですよ」

「頼む」

「はい」

 通話を終える。

 何もないのが一番いい。だけれども、何もないままここまで連絡がないわけがないのだ。何かあったことは、否定できない。

 もう一度マオを探すために部屋を出た。

 覚悟はしている。だけど、希望は捨てない。次にこの部屋に入るときは、二人一緒に、だ。

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