6−1
件のファーストフード店につくと、京介似のあの女性が、困ったような顔をして座っていた。
「マオはっ?」
挨拶や礼儀なんて抜きに、斬りつけるように尋ねると、軽く首を横に振られた。
「一階に飲み物を買いに?」
「そう。奢ってくれるっていうからお言葉に甘えちゃって。……なんかごめんなさい」
「いや」
別にこの女性が悪いわけではない。
というか、何があったのか今の段階ではわからない。ろくでもないことになっているのは、わかるけれども。
飲み物を買いに行って姿を消した。鞄は持っていったようだが、ケータイがここにあるんじゃなんの意味もない。
「……俺、探すんで。万が一見つかったら、今から言う番号に電話して欲しい」
覚えている自分の電話番号を告げると、慌てたように女がメモをした。機械音痴でも、数字を覚えることは苦ではない。
「それじゃあ」
と、マオのケータイをもって立ち去ろうとするところを、
「待って」
慌てたように呼び止められた。
「これ」
渡されたのは、いつだったかペンダントを買った時のと同じような袋。
「貴方にって、マオちゃんが」
「マオが?」
予想外の言葉に、怪訝な顔になる。
それから、そっと袋を開けてみた。出て来たのはシンプルな革のブレスレットだった。
「今日は、それを買いに出て来たみたいよ。いつもお世話になってるからって、嬉しそうに言ってたけど?」
付け足された言葉に、なんとも言えない気分になる。
そんなことのために、わざわざ一人で出かけたのか。お世話になっているお礼? そんなこと、考えたりしなくってよかったのに。
ブレスレットをもう一度袋に戻す。
これはちゃんと、マオの手から渡してもらおう。じゃないと、素直に喜べない。喜びたいと、嬉しいと思っているのだから、俺は。
「……ありがとう」
女になんとかそれだけいうと、足早に店を後にした。
そうでもしないと、何故だか知らないが泣きそうだった。




