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居候猫の父の気がかり  作者: 小高まあな
第五幕 居候猫の恩返し
16/34

5−6

 遅い。

 時計を見て、隆二は一つ舌打ちをした。

 ご飯までに帰ってくるって言ったのに、帰ってくる気配がない。あれから三回追加で電話をかけたがちっともでないし。

 苛立ちは段々不安に変わっていく。もう一度電話をかけて出なかったら、探しに行こう。

 そう決めて、電話をかけると、意外にも今度はかけはじめて直ぐに電話に出る音がした。

「マオっ」

 怒鳴りつけるように名前を呼ぶと、

「あー、もしもし?」

 返ってきたのは、マオの声じゃなかった。

「……誰だ」

 低い声で誰何。

「あー、あのおにーさん? この前ペンダント買ってくれた。私私、アクセサリー売りの」

 言われてみれば、そのやる気のなさそうな声には聞き覚えがあった。京介似のアクセサリー売りの女。

 それがなんで、マオの電話に?

「ええっと、話せば長くなるんだけど、マオちゃん? とは道であって。私のペンダントつけてくれてるから話してて。ちょっと一緒にお茶してて」

「……ああ」

 その言葉に、ちょっとだけ安堵する。おしゃべりに夢中になって、電話に気がつかなかったのか。ありそうなことだ。

「……あの、マオは?」

「それなんだけど」

 女はなんだか言いにくそうにした。それに収まっていた不安がまた暴れ出す。

「追加の飲み物をね、買いに行ってくれたの。……それから三十分ぐらい経つんだけど戻って来なくって。レジ一階だから見に行ったんだけどいなくって。ケータイはテーブルにおきっぱなしだし。そしたら、おにーさんからの電話があったから」

 言われた言葉に、目眩がする。

 いなくなった?

「今、どこに?」

 あげられたのは駅前のファーストフードの名前だった。そこならマオと二人で行ったことがあるから知っている。

 一階にレジがあって、二階が客席になっていた。駅前だからかいつも混んでいるが、そんな三十分も戻って来られないような混雑ではないし、ましてや行方をくらますスペースがあるわけがない。

「あんのバカっ」

 舌打ち。

 何があったというのだ。どうしてこうなるんだ。

 もっと早く探しに行けばよかった。

「今から行くんで待っていてください」

 一方的にそう言い切ると、電話の向こうの女の返事も待たずに通話を終えた。

 ひっかけるように靴を履くと、駅前に向かって容赦ないスピードで走り出した。

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