5−6
遅い。
時計を見て、隆二は一つ舌打ちをした。
ご飯までに帰ってくるって言ったのに、帰ってくる気配がない。あれから三回追加で電話をかけたがちっともでないし。
苛立ちは段々不安に変わっていく。もう一度電話をかけて出なかったら、探しに行こう。
そう決めて、電話をかけると、意外にも今度はかけはじめて直ぐに電話に出る音がした。
「マオっ」
怒鳴りつけるように名前を呼ぶと、
「あー、もしもし?」
返ってきたのは、マオの声じゃなかった。
「……誰だ」
低い声で誰何。
「あー、あのおにーさん? この前ペンダント買ってくれた。私私、アクセサリー売りの」
言われてみれば、そのやる気のなさそうな声には聞き覚えがあった。京介似のアクセサリー売りの女。
それがなんで、マオの電話に?
「ええっと、話せば長くなるんだけど、マオちゃん? とは道であって。私のペンダントつけてくれてるから話してて。ちょっと一緒にお茶してて」
「……ああ」
その言葉に、ちょっとだけ安堵する。おしゃべりに夢中になって、電話に気がつかなかったのか。ありそうなことだ。
「……あの、マオは?」
「それなんだけど」
女はなんだか言いにくそうにした。それに収まっていた不安がまた暴れ出す。
「追加の飲み物をね、買いに行ってくれたの。……それから三十分ぐらい経つんだけど戻って来なくって。レジ一階だから見に行ったんだけどいなくって。ケータイはテーブルにおきっぱなしだし。そしたら、おにーさんからの電話があったから」
言われた言葉に、目眩がする。
いなくなった?
「今、どこに?」
あげられたのは駅前のファーストフードの名前だった。そこならマオと二人で行ったことがあるから知っている。
一階にレジがあって、二階が客席になっていた。駅前だからかいつも混んでいるが、そんな三十分も戻って来られないような混雑ではないし、ましてや行方をくらますスペースがあるわけがない。
「あんのバカっ」
舌打ち。
何があったというのだ。どうしてこうなるんだ。
もっと早く探しに行けばよかった。
「今から行くんで待っていてください」
一方的にそう言い切ると、電話の向こうの女の返事も待たずに通話を終えた。
ひっかけるように靴を履くと、駅前に向かって容赦ないスピードで走り出した。




