5−5
「うげっ」
留守電に残された隆二のメッセージを聞いて、マオは小さく悲鳴のような声をあげた。
「ん?」
向かいの女が首を傾げる。
「……なんでもなぁーい」
聞かなかったことにしよう。そう決めると、ケータイをテーブルの上に置いた。
あの後、ナンパから助けてくれた女と少し会話し、なんだか意気投合した。
柚香と名乗ったその女性は、自分で作ったアクセサリーを売って生計をたてているらしい。マオが隆二へのプレゼントを探している話を聞くと、アクセサリーを見立ててくれると言い出した。
アクセサリーなんて隆二絶対買わないし、いいかもしれない! この人、隆二に合ったことがあるらしいし、このペンダントを作った人のアクセサリーなら申し分ないし!
渡りに舟な申し出にマオも乗っかり、柚香の作品を見るために近くのファーストフードに入ったところだ。
あとちょっとで終わるのだ。途中で連れ戻されたり、隆二に来られたりしたら意味がない。これが終わるまでは、留守電を聞かなかったことにしておこう。用事が終わったら、ちゃんと電話するから。自分にそう言い訳する。
「ならいいけど?」
言いながら柚香は、片手に持っていた大きめの紙袋から、いくつかのアクセサリーをテーブルに並べていく。
「まあ、あの人アクセサリーとか頓着なさそうだったけど」
「隆二が興味あるのは本とコーヒーだけだよ」
小さく唇を尖らせながらマオが言うと、そんな感じっぽいね、と柚香も笑った。
「だから、シンプルな方がいいよね」
メンズはこれぐらいかなー、と並べられたアクセサリーを見ていく。
うーん、そもそも何かを身につけている隆二が思い浮かばない。
「ピアスは?」
「あいてないよ」
「じゃあ、この辺は論外」
ピアスが幾つか袋に戻される。
「ペンダント系か、ブレスレット系か」
「んー」
それらを眺めながら、まだちょっと痛い右手を擦る。そうしながら、隆二と言えば、手だな、と思った。
最初にした約束も、そういえばそのうちに頭を撫でてくれる、というものだった。
いつも頭を撫でてくれる手。最初の時、逃げようと繋いだ手。最近は、普通に繋いでくれる手。
「……ブレスレットだなぁ」
小さく呟くと、
「そう?」
とペンダント系統が袋にしまわれる。
いくつか残ったブレスレットを眺めて、
「……これ、いいかなぁ」
つかみあげたのは、シンプルな革のブレスレットだった。茶色い一枚の革が編み込まれている。
「ああ、いいんじゃない? シンプルだし」
「……うん、これにする。これください」
「はい、毎度」
柚香が笑って受け取ると、袋にいれてくれる。値札に書かれた金額を手渡し、商品を受け取った。
「ありがとう」
「いいえ。喜んでくれるといいけど」
「んー、隆二が喜んだりするところ、想像できないけど」
それよりも先に怒られそうだし。
「それでもきっと、嫌がらないでつけてくれると思うから」
「じゃあ、また、どこかで見かけるの楽しみにしてる」
「うん」
大きく頷いた。




