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居候猫の父の気がかり  作者: 小高まあな
第五幕 居候猫の恩返し
15/34

5−5

「うげっ」

 留守電に残された隆二のメッセージを聞いて、マオは小さく悲鳴のような声をあげた。

「ん?」

 向かいの女が首を傾げる。

「……なんでもなぁーい」

 聞かなかったことにしよう。そう決めると、ケータイをテーブルの上に置いた。

 あの後、ナンパから助けてくれた女と少し会話し、なんだか意気投合した。

 柚香と名乗ったその女性は、自分で作ったアクセサリーを売って生計をたてているらしい。マオが隆二へのプレゼントを探している話を聞くと、アクセサリーを見立ててくれると言い出した。

 アクセサリーなんて隆二絶対買わないし、いいかもしれない! この人、隆二に合ったことがあるらしいし、このペンダントを作った人のアクセサリーなら申し分ないし!

 渡りに舟な申し出にマオも乗っかり、柚香の作品を見るために近くのファーストフードに入ったところだ。

 あとちょっとで終わるのだ。途中で連れ戻されたり、隆二に来られたりしたら意味がない。これが終わるまでは、留守電を聞かなかったことにしておこう。用事が終わったら、ちゃんと電話するから。自分にそう言い訳する。

「ならいいけど?」

 言いながら柚香は、片手に持っていた大きめの紙袋から、いくつかのアクセサリーをテーブルに並べていく。

「まあ、あの人アクセサリーとか頓着なさそうだったけど」

「隆二が興味あるのは本とコーヒーだけだよ」

 小さく唇を尖らせながらマオが言うと、そんな感じっぽいね、と柚香も笑った。

「だから、シンプルな方がいいよね」

 メンズはこれぐらいかなー、と並べられたアクセサリーを見ていく。

 うーん、そもそも何かを身につけている隆二が思い浮かばない。

「ピアスは?」

「あいてないよ」

「じゃあ、この辺は論外」

 ピアスが幾つか袋に戻される。

「ペンダント系か、ブレスレット系か」

「んー」

 それらを眺めながら、まだちょっと痛い右手を擦る。そうしながら、隆二と言えば、手だな、と思った。

 最初にした約束も、そういえばそのうちに頭を撫でてくれる、というものだった。

 いつも頭を撫でてくれる手。最初の時、逃げようと繋いだ手。最近は、普通に繋いでくれる手。

「……ブレスレットだなぁ」

 小さく呟くと、

「そう?」

 とペンダント系統が袋にしまわれる。

 いくつか残ったブレスレットを眺めて、

「……これ、いいかなぁ」

 つかみあげたのは、シンプルな革のブレスレットだった。茶色い一枚の革が編み込まれている。

「ああ、いいんじゃない? シンプルだし」

「……うん、これにする。これください」

「はい、毎度」

 柚香が笑って受け取ると、袋にいれてくれる。値札に書かれた金額を手渡し、商品を受け取った。

「ありがとう」

「いいえ。喜んでくれるといいけど」

「んー、隆二が喜んだりするところ、想像できないけど」

 それよりも先に怒られそうだし。

「それでもきっと、嫌がらないでつけてくれると思うから」

「じゃあ、また、どこかで見かけるの楽しみにしてる」

「うん」

 大きく頷いた。

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