5−4
「ただいま」
スーパーの袋を片手に帰って来た隆二は、言いながらドアをあけた。
「……マオ?」
いつもならとんでくる居候猫の姿がない。部屋も暗い。テレビもついていない。
「マオっ」
急に不安になって、靴を脱ぐのももどかしく、片足は脱がないまま部屋にあがった。
いつものソファーに居候猫の姿はない。
「マオっ」
もう一度名前を呼んだところで、テーブルの上のメモに気づいた。慌ててそれに目を通す。
マオのあの、へたくそな字で、「おかいものいってきます。ごはんにはかえってきます。ごめんなさい」なんて書いてあった。
「出かけるなつっただろうが、あのバカっ」
舌打ちすると、ポケットからケータイをとりだす。慣れない手つきでマオの番号を呼び出すと、電話をかけた。
ぷるるると呼び出し音はするが、マオは出ない。いらいらと指でテーブルを何度も叩く。
落ち着け。何かがあったから出ないとは限らない。マオのことだ、約束を破ったことはわかっていて、怒られるのが嫌で電話を無視しているだけかもしれない。
留守番電話サービスに接続される。
「怒ってないからこれ聞いたらすぐに電話しろ」
吐きすてるようにそう言ってから、どう考えてもこの言い方は怒っているな、と考えを改めた。
「かけ直さないともっと怒るぞ、このバカ」
早口で続けた。
そのまま電話を切る。
まったく、あのバカは。
舌打ちを一つすると、いつでも出られるようにケータイをまたポケットにしまう。
探しに行って入れ違いになるのも嫌だし、ご飯までに帰ると言っているのならば、ぼちぼち戻ってくるころだろう。出かけたから即、何があるわけでもない。落ち着け。
自分に言い聞かせると、一つ深呼吸。
とりあえず、少しだけ待ってみよう。
そう決めると、履いたままだった靴を脱ぎ、買ったものを冷蔵庫にしまいはじめた。




