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居候猫の父の気がかり  作者: 小高まあな
第五幕 居候猫の恩返し
14/34

5−4

「ただいま」

 スーパーの袋を片手に帰って来た隆二は、言いながらドアをあけた。

「……マオ?」

 いつもならとんでくる居候猫の姿がない。部屋も暗い。テレビもついていない。

「マオっ」

 急に不安になって、靴を脱ぐのももどかしく、片足は脱がないまま部屋にあがった。

 いつものソファーに居候猫の姿はない。

「マオっ」

 もう一度名前を呼んだところで、テーブルの上のメモに気づいた。慌ててそれに目を通す。

 マオのあの、へたくそな字で、「おかいものいってきます。ごはんにはかえってきます。ごめんなさい」なんて書いてあった。

「出かけるなつっただろうが、あのバカっ」

 舌打ちすると、ポケットからケータイをとりだす。慣れない手つきでマオの番号を呼び出すと、電話をかけた。

 ぷるるると呼び出し音はするが、マオは出ない。いらいらと指でテーブルを何度も叩く。

 落ち着け。何かがあったから出ないとは限らない。マオのことだ、約束を破ったことはわかっていて、怒られるのが嫌で電話を無視しているだけかもしれない。

 留守番電話サービスに接続される。

「怒ってないからこれ聞いたらすぐに電話しろ」

 吐きすてるようにそう言ってから、どう考えてもこの言い方は怒っているな、と考えを改めた。

「かけ直さないともっと怒るぞ、このバカ」

 早口で続けた。

 そのまま電話を切る。

 まったく、あのバカは。

 舌打ちを一つすると、いつでも出られるようにケータイをまたポケットにしまう。

 探しに行って入れ違いになるのも嫌だし、ご飯までに帰ると言っているのならば、ぼちぼち戻ってくるころだろう。出かけたから即、何があるわけでもない。落ち着け。

 自分に言い聞かせると、一つ深呼吸。

 とりあえず、少しだけ待ってみよう。

 そう決めると、履いたままだった靴を脱ぎ、買ったものを冷蔵庫にしまいはじめた。


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