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屋根裏部屋の天体望遠鏡

掲載日:2026/09/09

今晩は皆既月食が見られるというので、早々に会社から帰って、屋根裏部屋に籠った。

部屋などと言うと大層な感じがするが、二人も入ればギチギチになってしまう、屋根裏のちょっとしたスペースだ。

祖父が自分で改装して作った空間。

天体望遠鏡が置いてある。

そう、ここは星空を眺める場所なのだ。


祖父も父も天体観測が好きで、僕も自然と興味を持つようになった。

大人になって、息子に星の名前をつけるぐらいには、天体観測が好きになっていた。

息子も、やはり星が好きなようで、子供用の図鑑を買ってやったら、そこに載っているほとんどの星の名前は、すっかり覚えてしまったようだ。

その息子と、皆既月食を見ようというのが、今夜の企みだ。


天体望遠鏡をセットして、月を探す。

1〜2cmのずれが、広大な星空では数kmのずれになるので、あんばいが難しい。


望遠鏡を覗きながら調整していると、ぼんやりと星空が目の前に広がった。

ん?これは、ちょっとおかしいな。

星の姿をとらえることはあっても、風景全体が見えるというのは、これまでに無かったことだ。


僕は、ぼんやりとした星空にピントを合わせた。

そして、とんでもないものを見つけた。


汽車だ。

星々の間を汽車が走っている。


銀河鉄道だ。


僕は少なからず興奮した。

乗っているのは二人の少年か。

それとも、少年と謎の美女との二人連れか。


僕は、汽車の車窓へとレンズをズームさせた。


見える。


汽車には、たくさんの人が乗っていた。

国民服、というのだろうか。カーキ色の服を着た男が煙草を吸っている。

新聞を読んだり、弁当を広げている男もいた。

モンペを履いた女性が、おかっぱ頭の女の子にリンゴを剥いてやっている。


あの汽車の中は、戦時中なのか?

あの人たちは汽車に乗ったまま、ずっと星空の中をさまよっているのか?


あの人たちを見ていたら、思い出したことがある。


僕は実の祖父の顔を知らない。

僕の父が生まれたばかりの年に戦地にかり出され、そのまま帰って来られなかったらしい。

僕が知っている祖父は、その親友だ。


僕のよく知っている祖父は、あの汽車の中に、かつての親友の姿を見たのだろうか。

今となっては確かめようもない。


夜空の彼方に、汽笛の音がフゥーーーと、たなびいたような気がした。



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― 新着の感想 ―
夜空の汽車が見えるなんてロマンチックですね。 でも見えた風景はちょっと切なくて。星空をさまよっているのかなあ。旅行を楽しんでいればいいんですが……。 主人公の祖母は再婚したということですよね? 星に…
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