第8話 episode1 背中
今回はスマホでの投稿です!
もしかしたら、段落や空白とかがおかしくなっているかもしれませんが、帰宅後確認して修正していきます。
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あの日からさらに一週間が経った。
エルペは完全に回復し、また以前のように村中を走り回っている。火事の復興も順調に進んでいて、焼けた家の半分はすでに再建されていた。村には少しずつ、活気が戻ってきている。
シャムの日常も、表面上は元に戻っていた。朝は父と畑に出て、昼は村の復興を手伝い、夕方になればエルペと村外れの丘で過ごす。あの日、約束を交わした丘。二人にとって、特別な場所。
でも、シャムは知っていた。
もう、元には戻れない。
背中の紋様は消えない。力は増していく。毎日、自分が何か別の存在になっていくような感覚がある。鏡を見ても、同じ顔。でも、中身が違う。自分が、自分でなくなっていくような、そんな恐怖があった。
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その日の夕方、シャムとエルペは丘の上にいた。
春の終わりの風が、草を揺らしている。村を見下ろせるこの場所で、二人は並んで座っていた。夕陽が沈みかけていて、空がオレンジ色に染まっている。
「ねえ、シャム」
エルペが話しかけてきた。
「最近、様子がおかしいよ。何かあった?」
「え...いや、何も...」
「嘘」
エルペはシャムを見つめた。その目は真剣だ。
「子供の頃からの友達だもん。シャムが何か隠してるの、分かるよ」
シャムは答えられなかった。言えない。この力のこと、背中の紋様のこと、全部言えない。
「火事の時から、ずっとおかしい。あんな力、普通じゃない。シャム、何か...」
エルペが言いかけた時――
背中が、熱くなった。
突然、焼けるような熱さが襲ってくる。
「っ...!」
シャムは思わず背中に手をやった。
「シャム!? どうしたの!?」
エルペが慌ててシャムの背中を見た。
そして――
目を見開いた。
「シャム...あなたの背中...光ってる...!」
「え...?」
「服の上からでも分かる...すごく、光ってる...!」
エルペは震える手でシャムの服をめくった。
そこには――
金色に輝く紋様があった。
複雑な模様が背中一面に広がっていて、まるで生きているかのように脈動し、光を放っている。美しくて、でも恐ろしい光景。
「これ...何...?」
エルペの声が震えている。
「僕も...よく分からないんだ...」
シャムは正直に答えた。もう、隠せない。
「火事の夜、君を助けた時...誰かに会ったんだ。光の存在に」
「光...?」
「その人が、力をくれた。君を救うために、契約をした」
シャムは全てを話した。あの夜のこと、契約のこと、代償のこと。エルペは黙って聞いていた。
「そっか...」
エルペは呟いた。
「だから、あんな力が...」
二人の間に、沈黙が流れた。
風が吹く。
草が揺れる。
夕陽が、さらに沈んでいく。
「ねえ、シャム」
エルペが口を開いた。
「これ、村長さんと神父様に見てもらおうよ」
「え...?」
「だって、こんな重要なこと。一人で抱え込むのは辛いでしょ。ちゃんと、大人に相談しよう」
シャムは迷った。でも、エルペの目を見て、頷いた。
彼女は正しい。
一人で抱え込むには、あまりにも大きすぎる。
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その夜、村長の屋敷に人が集まった。
村長、神父、そして村の長老たち。シャムは大広間の真ん中に立たされていた。背中をさらして。
神父が近づいてくる。年老いた神父は、長年この村の神殿を守ってきた人物だ。シャムが幼い頃、よく神殿で遊んでいた時、優しく見守ってくれた。
「シャム、背中を見せてくれるか」
神父の声は穏やかだった。
シャムは服をめくった。
紋様が現れる。今は光っていないけれど、はっきりとその形が見える。
神父は息を呑んだ。
「これは...」
長い沈黙。
神父は震える手で、シャムの背中に触れた。その手が、紋様をなぞる。
「信じられない...こんなものが本当に存在するなんて...」
神父が呟く。
「これは...聖痕のようだ...いや、聖痕に違いない...!」
「聖痕...?」
村長が前に出る。
「聖痕というのは...神に選ばれた者の印だよ。伝説の中にしか存在しないと思われていた...」
神父は興奮と戸惑いが混じった表情で言葉を続ける。
「でも、私の知識だけでは断言できない。こんなに完璧な聖痕は、古い書物でしか見たことがないんだ」
神父はシャムを見つめた。
「シャム、お前は王都に行った方がいい。大神殿には、もっと詳しい神官たちがいる。そこで正式に確認してもらうべきだろう」
シャムは何も言えなかった。
あの光は、神だったのだろうか。
優しい声色だった。慈愛に満ちた姿だった。まさしく希望のような、光り輝く存在だった。
でも、なにか...
心の奥底で、小さな違和感がある。
何かが、引っかかっている。
でも、それが何なのか分からない。
今、この場で、その不安を口にすることもできない。
「シャム」
村長が重々しく、でも優しい声で言った。
「もしこれが本当に聖痕なら、お前は王都に行って、大神殿で確認を受けた方がいい」
「え...?」
「聖痕を持つ者は...世界のために戦う運命にあるそうだ。確認が取れるまで、ここに留まるのは...」
村長は言葉を切って、シャムの目をじっと見つめた。
「いや、確認なんて必要ないかもしれないな。私には分かる。お前は、特別な子だ。昔からそうだった」
村長の目には、確信と、そして父親のような優しさと悲しみが混じっている。
「明日、旅立ちなさい。王都へ、そして...もし本当に選ばれた者なら、世界のために」
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その夜、シャムは眠れなかった。
明日、村を出る。急すぎる。心の準備ができていない。でも、もう決まってしまった。村全体が、シャムを「勇者」として送り出すことを決めた。
窓の外を見る。星が輝いている。あの星の下に、どんな世界が広がっているのだろう。
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