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終焉の約束---あの日「天使」と交わした契約  作者: MIKA_05


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第7話 episode1 願い

 その日の午後、シャムはエルペの家を訪ねた。


 村長の家は火事を免れていて、大きな屋敷はそのまま残っている。門をくぐると、手入れの行き届いた庭が広がっていて、色とりどりの花が咲いている。火事の後とは思えないほど平和な光景だった。


 使用人に案内されて、エルペの部屋に入る。窓から差し込む午後の日差しが、部屋全体を柔らかく照らしている。ベッドの上では、エルペが本を読んでいた。


「シャム!」


 エルペは本を置いて、満面の笑顔で迎えてくれた。まだ少し顔色が悪いけれど、目には生気が戻っている。


「来てくれたのね。ありがとう。椅子に座って」


 シャムは窓際の椅子に腰を下ろした。エルペはベッドに座り直して、シャムを見つめる。


「調子はどう?」とシャムは尋ねた。


「もう大丈夫よ。明日には起き上がれそう。お医者様も、あと二日で完全に回復するって」


 エルペは明るく答える。その声には、いつもの元気が戻ってきている。


「そっか...よかった」


 シャムは安堵のため息をついた。本当によかった。あの時、間に合ってよかった。もし遅れていたら、エルペは...



「ねえ、シャム」


 エルペが真剣な顔になった。窓の外を見て、それからシャムを見つめる。


「あの時、ありがとう。シャムが助けてくれなかったら、私...きっと死んでた」


「いいよ、そんなこと」


 シャムは首を横に振る。でも、エルペは続けた。


「でも本当に...あの時のシャム、すごかったわ」


 エルペの目が輝いている。


「...私、最初見た時、信じられなかった。だってシャムって、いつも体が弱くて...ごめん、でも本当のことだから」


 エルペは少し申し訳なさそうに笑う。


「でも、あの時のシャムは違った。まるで別人みたいに強くて...まるで、物語に出てくる勇者みたいだった」



 勇者。その言葉にシャムは胸が熱くなった。



「覚えてる? 私たちの約束」


 エルペが優しく微笑む。窓から差し込む日差しが、彼女の髪を金色に輝かせている。


「一緒に勇者になるって、丘の上で約束したよね。あの時はまだ子供で、夢物語だと思ってた。でも...」


 エルペは窓の外を見る。青い空が広がっている。


「あの時のシャムを見て、思ったの。これは運命かもしれないって。私たち、本当に勇者になれるかもしれない」



 シャムは何も言えなかった。エルペは知らない。あの力が、契約によって得たものだということを。代償があるということを。そして、自分が本当に勇者にふさわしいかどうかも分からない。



「シャム、私ね」


 エルペがシャムを真っ直ぐ見つめた。その目には、強い決意が宿っている。


「今回の火事で、考えたの」


「...うん」


「私、この村を守りたい。村長の娘として、いつかこの村を継ぐ者として...ちゃんと村のことを学んで、みんなを守れる人間になりたい」


 エルペの声は静かだが、強い意志が込められている。


「あの日、子供が助けを求めていた。私、何も考えずに飛び込んだ。でも、それだけじゃだめなんだって気づいたの。もっと強くならなきゃ、もっと賢くならなきゃ、本当に誰かを守ることはできない」



 シャムは黙って聞いていた。



「だから、私はここに残る。村で学んで、強くなって、いつかこの村を守れる村長になる」


 エルペは窓の外を見る。


「でも、シャムは...」


 彼女はシャムに視線を戻した。


「シャムは、きっと外の世界に行くべきだと思う」


「え...?」


「あの時のシャム、本当にすごかった。あんな力、普通の人には出せない。きっと、何か特別な理由があるんだと思う」


 エルペは優しく微笑む。


「シャムには、もっと大きな使命があるんじゃないかな。この小さな村じゃなくて、もっと広い世界で、たくさんの人を救う...そういう運命があるんじゃないかって」



 シャムは何も言えなかった。エルペの言葉が、胸に突き刺さる。



「約束、覚えてる? 一緒に勇者になるって」


 エルペの声が少し震えた。


「でも...きっと、一緒じゃなくてもいいんだと思う。私はここで、シャムはあっちで、それぞれの場所で勇者になれば...それも、約束を果たすことになるよね」



 シャムの胸が痛んだ。エルペは笑っている。でも、その笑顔は少し寂しそうだ。



「私ね、シャムがいつか村を出ていくこと、なんとなく分かってた。だって、シャムはずっと優しくて、困ってる人を放っておけなくて...そういう人は、きっと広い世界に行くべきなんだって」

「シャムは誰よりも優しいから。その優しさが世界の人たちを救えるんじゃないっかって」」


「エルペ...」



「だから、行って。シャムの力を優しさを、もっとたくさんの人のために使って」


 エルペは真っ直ぐシャムを見つめる。


「そして、いつか...強くなって帰ってきて。その時、私もちゃんとした村長になってるから。二人で、この村を、この世界を、もっといい場所にしよう」



 シャムは頷いた。言葉が出なかった。ただ、頷くことしかできなかった。



 エルペは笑顔を見せた。でも、その目には涙が光っている。



「約束だよ、シャム。必ず、帰ってきてね」



「...うん。約束する」



 シャムは答えた。でも、心の中では不安が渦巻いている。



 この力は何なのか。


 代償とは何なのか。


 そして、本当にエルペの元に帰ってこれるのか。



 答えは分からない。でも、一つだけ確かなことがある。エルペが信じてくれている。だから、進むしかない。あの日、丘の上で交わした約束を、別々の場所で果たすのだ。



 シャムは窓の外を見た。青い空が、どこまでも広がっている。あの空の向こうに、何が待っているのか。希望か、それとも絶望か。



 分からない。



 でも、進むしかない。



 運命は、既に動き始めている。

お読みいただきありがとうございます!


今後も随時更新していきたいと思いますので、少しでも『切ないな』『続きが気になる』と思っていただけたら、**ブックマークや評価(★)**で応援いただけると、執筆の大きな励みになります!


よろしくお願いいたします!!

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