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終焉の約束---あの日「天使」と交わした契約  作者: MIKA_05


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第14話 episode2 手紙

翌朝、シャムは宿の食堂で朝食を取っていた。


 木のテーブルに並ぶのは、黒パンとスープ、それに少しの塩漬け肉。決して豪華ではないけれど、温かい食事だった。スープから立ち上る湯気を見つめながら、シャムは昨日のことを思い返していた。ゴブリンの家族。子供の笑顔。そして、依頼の失敗。


「おい、昨日ゴブリンに逃げられた勇者様がいるぞ」


 食堂の隅で、冒険者たちの声が聞こえた。


「逃げられたんじゃねえよ。戦わなかったんだよ」


「は? 何それ? ゴブリン相手にビビったのか?」


「いや、聞いた話じゃ、ゴブリンが可哀想だったんだとよ」


「...は? 魔物が可哀想? 頭おかしいんじゃねえの?」


「優しいんじゃなくて、ただの臆病者だろ」


「そんな奴が勇者とか、世も末だな」



 笑い声が響く。シャムは黙ってパンをかじった。口の中がパサパサで、飲み込むのが辛かった。


 早々に食事を終えて、部屋に戻ろうとすると、宿の主人が声をかけてきた。


「シャム様、これ」


 主人が一通の封筒を差し出した。茶色い封筒で、蝋で封がされている。


「手紙?」


「ええ。朝、行商人が届けてくれました。村から来たそうです」


 村。シャムの心臓が跳ねた。


「ありがとうございます」


 シャムは手紙を受け取って、急いで部屋に戻った。


_______


 部屋のベッドに座って、シャムは封筒を見つめた。封蝋には村長家の印が押されている。エルペの家からの手紙だ。


 手が震える。嬉しさと、でも少しの恐れ。もし「頑張って」と書いてあったら、昨日ゴブリンも倒せなかった自分は、どう答えればいいのだろう。


 シャムは封蝋を破って、手紙を開いた。便箋には、丸みを帯びた文字が並んでいた。エルペの文字だ。



『シャムへ


元気ですか? 王都に着いた頃でしょうか。


村はみんな元気です。火事の復興も順調です。

お父さんも、「シャムは立派にやっているだろう」って言っています。


私は毎日、お父さんの手伝いをしています。

大変だけど、楽しいです。みんなの笑顔を見ると、頑張ってよかったって思います。


シャムも大変だと思います。

でも、無理しないでください。

シャムは優しいから、きっと自分のことを後回しにしてしまうから。


いつか帰ってきてください。待っています。


エルペより』



 シャムは手紙を胸に抱いた。温かい。エルペの優しさが、紙を通して伝わってくる。


 目から涙が零れた。


 昨日からずっと、自分はダメなんだと思っていた。でも、エルペは「無理しないで」と言ってくれた。それだけで、少しだけ救われた気がした。


 シャムは机に向かって、返事を書いた。



『エルペへ


手紙、ありがとう。すごく嬉しかった。


王都に着きました。大きな街です。

冒険者ギルドに登録して、昨日初めての依頼を受けました。


でも...失敗してしまいました。

ゴブリンを倒す依頼だったけど、家族がいて、子供がいて...僕には倒せませんでした。


他の冒険者たちからは笑われています。

こんなんじゃ、勇者になんてなれない。


でも、エルペの手紙を読んで、少し元気が出ました。

ありがとう。


また手紙を書きます。


シャムより』



 手紙を封筒に入れて、シャムは窓の外を見た。昼過ぎの太陽が街を照らしている。


 このままじゃいけない。もう一度、ギルドに行こう。


_______


 冒険者ギルドに着くと、昼時で多くの冒険者で賑わっていた。シャムが掲示板に向かうと、昨日の受付嬢が声をかけてきた。


「また来たの」


「はい...」


「昨日の依頼、失敗したわね」


 受付嬢の声は事務的だった。責めているわけではない。ただ事実を述べているだけだった。


「はい...すみません」


「謝らなくていいわ。今日は何を探してるの?」


「薬草採取とか...簡単なものを」


「それが正解」


 受付嬢は掲示板から一枚の依頼書を取り出した。


「この『薬草採取』。危険も少ないし、報酬もそこそこ。ランクを上げたいなら、まず成功を積み重ねるしかないから」


「はい」


「ああ、それと」


 受付嬢がシャムを見た。感情のない、しかし真っ直ぐな視線だった。


「冒険者は結果が全て。失敗を悔やむより、次の成功を考えなさい」


「...分かりました」


 シャムは依頼書を受け取った。同情ではなかった。けれど、それが逆に楽だった。哀れまれるより、ずっとよかった。


お読みいただきありがとうございます!


今後も随時更新していきたいと思いますので、少しでも『切ないな』『続きが気になる』と思っていただけたら、**ブックマークや評価(★)**で応援いただけると、執筆の大きな励みになります!


よろしくお願いいたします!!

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