第11話 episode1 登録
大神殿を出た後、シャムは冒険者ギルドに向かった。
老神官が教えてくれた場所。冒険者たちが集まり、依頼を受け、そして報酬を得る場所。勇者として認定されたからには、ここで正式に登録し、冒険を始めなければならない。
冒険者ギルドは、大神殿とは対照的だった。騒がしく、荒々しく、そして活気に満ちていた。建物の中には多くの冒険者がいて、酒を飲み、笑い、時には喧嘩をしている。受付には若い女性が立っていて、次々と訪れる冒険者の対応をしている。
「すみません」
シャムが声をかけると、受付の女性が振り向いた。
「はい、新規登録ですか?」
「はい、お願いします」
「分かりました。では、この用紙に名前と得意なことを記入してください」
シャムは紙を受け取って、記入した。名前、年齢、出身地、そして...
職業:勇者
受付の女性が紙を見て、目を丸くした。
「勇者...ですか?」
「大神殿で、認定されました」
「え、本当ですか? 聖痕を...」
「はい」
シャムは少し恥ずかしそうに、背中を見せた。紋様が現れる。
受付の女性だけでなく、周りの冒険者たちも気づいて集まってきた。
「本物だ...」
「勇者が来たのか」
「すごいな...」
ざわめきが広がる。シャムは居心地が悪かった。こんなに注目されるのは、慣れない。
「失礼しました」
受付の女性が我に返って、カードを作り始めた。
「えっと、登録完了です。これがあなたの冒険者カードになります」
彼女がカードを渡してくれた。
「勇者であっても、ランクは全員Fランクからのスタートです。依頼をこなして実績を積めば、すぐに上がると思いますが」
「分かりました。ありがとうございます」
シャムはカードを受け取って、ギルドを出た。
_______
その夜、シャムは安宿に泊まっていた。
窓から見える王都の夜景は美しかった。無数の明かりが、街全体を照らしている。星よりも多い光。これが、都会なのか。
シャムはベッドに座って、冒険者カードを見つめていた。そこには、自分の名前と、「勇者」という文字が刻まれている。
勇者。
エルペと約束した、あの夢。
でも、今の自分は、本当に勇者なのだろうか?
背中の聖痕が、微かに熱を持っている。いつものことだ。でも、今夜は特に強く感じる。まるで、何かが反応しているかのように。
シャムは窓の外を見た。あの星空の向こうに、村がある。エルペがいる。彼女は今、何をしているだろう。約束を、覚えているだろうか。
「必ず、帰る」
シャムは小さく呟いた。
「強くなって、世界を救って、そして必ず村に帰る」
それが、エルペとの約束。
それが、自分の使命。
たとえ、この力が何であれ。
たとえ、代償が何であれ。
進むしかない。
シャムは、そう決めた。
明日から、本格的な冒険が始まる。
仲間を探し、依頼を受け、魔物と戦い、人々を救う。
そして、いつか世界を救う。
勇者として。
シャムは、ベッドに横になった。
窓から差し込む月の光が、部屋を薄く照らしている。
目を閉じると、エルペの笑顔が浮かんだ。
「待っててね、エルペ」
シャムは、そう呟いて、眠りについた。
長い旅が、始まろうとしている。
運命の旅が。
そして、その先に何が待っているのか、シャムはまだ知らない。
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