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第8話 気付けば興味が湧いていた

「おまたせ! ごめんっ、遅くなって!」

「大丈夫大丈夫、いつものことじゃん。気にしないよ」

「あの村のお見送りも盛大だったね〜」


 先に村を出ていた我々二人の元へ天宮が遅れてやってくる。

 『勇者』は一人で旅をしていることにするため、町や村など人目のある場所では基本別行動を取っている。

 それ以外では常に一緒なので、いつも事前に待ち合わせをしているのだ。


 天宮が待ち合わせに遅く来る理由はいつも同じ。

 訪れた町や村で一泊した次の日、出発する時にそこの住民全てが集まっているんじゃないかと思うくらい多くの人たちが総出でお見送りをしてくる為だ。


 それだけこの世界が平和になることを切に願い、勇者という存在に希望を抱いているのだろう。

 自分たちの力ではどうにもできないから、叶えてくれる可能性のある者に望みを託すのは弱き者なら当然の心理だと思う。


 そんな大勢からの期待を受けて平然としていられる天宮は凄いな。

 自分だったらヘラヘラ笑いながら「あざーっす」とか言って、何度も振り返りながらお辞儀をペコペコして立ち去る姿しかイメージできない。


 天宮の場合は激励をひと通り受けた後、丁寧に感謝の意と世界を救うという決意を述べてから一礼し、「それでは」と言ってマントを翻し、振り返らずに立ち去っていくんだよ。


 遠くからスキル使って見送りの様子を眺めていたけど、初めてその立ち振る舞いを見た時ちょっと興奮してしまった。

 

 だって勇者っぽすぎじゃん。

 ほぼほぼ勇者みたいじゃん。

 あ、勇者だったか。

 

 絶対勇者補正かかってるよね。

 かかっていると信じたい。

 

 だって元からの気質なのだとしたら、自分が勇者になれなかったのは当然の結果じゃないか。


 覆るはずのない勇者のポジション、何でまだ少し悔しいっていう感情があるんだろう。この気持ち、いつか完全に消失するといいな。


「さっきの村の村長さんの孫娘さん可愛かったね〜。是非孫を勇者様の嫁にーとかって、あのジジイに押し付けられてたけど、断るのに時間が掛かったのは天宮くんの好みのタイプだったからなの〜?」

「えっ、いや、ちがっ!」

「だったら尚更、はっきりきっぱりビシッと断らないと誤解を生むよ〜。女の子を勘違いさせちゃうのは良くない良くない。まぁさっきの場面は多勢に無勢だったから、抜け出すのは大変だったみたいだけどね。でも天宮くんはこれからも言い寄られることが多くなるんだから、そこは充分気を付けていかないと〜」


 こやきがなにやら天宮に何か熱弁している。

 きっと『勇者を守りし者』として『勇者』にとって必要なことのアドバイスをしているのだろう。


 こやきとは昔からの付き合いで一番の親友だ。笑いのツボが同じで何でも気兼ねなく話せる。

 全国スクール漫才グランプリでは相方として芸の呼吸がめっちゃぴったりだったし。信頼してるから背中を預けることが出来る関係性だと思ってる。


 この世界に喚ばれて正直心細かったけど、こやきが隣にいてくれて心の底から安心してる。おかげでこの世界を楽しもうっていう余裕が生まれた。

 ほんと、こやきと一緒で良かった。こんな見知らぬ場所でも強気な自分でいられるよ。


 天宮は、あいつの本心はどんなんだろう。

 知らない世界に『勇者』として喚ばれて、世界を救って欲しいとお願いされて、一人で旅に出ることになって、勝手に期待されて、妬まれて毒を盛られて、それでも魔物と戦って……。


 ちょっと想像してみたけど、自分だったら確実に心折れてるよ。

 まず第一に一人っていうのがはいもう駄目ー。むーりー。

 

 だって寂しいじゃん。耐えられない、絶対耐えられない。

 勇者なら頼れる仲間たちと共に旅をするものじゃないのかな。

 悩んだ時は仲間に相談して、励まし合い困難を共に乗り越え、一緒に成長していき旅の目的を果たす、なんてのが理想。


 この手のゲームをプレイしてると仲間とのやり取りを脳内補完しちゃうことが多かったなー。



 ――なーんて、馬鹿じゃないの自分。理想は脳内とゲームだけにしとけ。この世界にいることは現実。そして勇者はオレじゃなくて天宮なんだよ。そう、オレじゃない。



「おうりは知ってた〜?」

「えっ? ごめん、話が聞こえてなかったよ」


 天宮に熱く語っていたこやきが急にこちらに話を振ってくる。考えごとをしていたのもあって全く聞いていなかった。


「中学の時に天宮くんのファンクラブがあったんだけど、内部はドロドロだったって話。自分に向けて笑ってくれたのーだとか思い違い女子が多発してたんだよ〜」

「いや、知らんし。というか天宮のことあんまし覚えてないって前に言ったじゃん。っていうかファンクラブなんてあったんだ。天宮ビジュ良いもんね」

「「えっ?」」

「えっ、て何さ?」

「いや〜、まさかおうりからそんな言葉聞くとは思ってもなかったから」

「そうかな?」

「そうだよ〜。でも滅多に他人を褒めないおうりに褒められて良かったね、天宮くん」

「あ、ありがとう……?」

「それよりそろそろ行こうか。天宮のレベルももっと上げないといけないし。体調とか大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。行こう」


 歩き出した天宮の後をこやきと二人付いていく。

 天宮の本心について少しだけ興味が湧いてきた。


 『勇者』を死なせないのはもちろん、ちゃんと魔王を倒すことが出来るようサポートをする係だけども、メンタルケアも『勇者を守りし者』の役目だと思う。

 いつかじっくり話ができたらいいな。


 ただ純粋に、天宮がゲームとかしたことあるのか聞いてみたいだけかもしれないけど。

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