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第55話 手掛かりを求めて

「おうり! こやきさん!」

「あ、空叶、お疲れー」

「レナードさんアルガーさんもお疲れ様でした〜」


 硬化魔法が解けた空叶たち三人がこちらへ向かって走ってくる。

 魔法の持続時間が結構長かったみたいだ。


「硬化魔法で動けなかったけど見てたよ! その魔導書に魔王を封じ込めたんだね!」

「うん、あいつ不老不死だったからさー。それしか方法ないと思ったんだー」

「コヤキさん、あちらの方はもしやローダン国のシリウス王子でしょうか?」

「レナードさんご存じだったんですか〜? そうですよ〜。一緒に戦ってくれました〜」

「そうなんですね。何年か前に城で見かけたくらいですが、まさかここでお会いするとは思ってもいませんでした」

「数年前に消息不明になったっていう話を聞いてたぜ。単独で魔王討伐の旅に出ていたんだな」


 シリウスさんを見ると放心状態になっている。

 それもそうだよね、やっと魔王を倒せて悲願を達成できたんだから。

 

「シリウスさん初めまして。空叶と言います。魔王討伐に力を貸して頂いて、本当にありがとうございました!」

「ああ、初めましてだね、勇者ソラト。君のことはオウリから聞いていたよ。こちらこそお礼を言わせてくれ、みんなも、共に戦ってくれて、ありがとう!」

「シリウス王子、私たちの方こそお力添え感謝致します!」

「王子の魔王への渾身の一撃、見事だったぜ!」

「アルガー、シリウス王子に対して失礼ですよ!」

「本当に……、本当、に、ありが、とう……」


 シリウスさんの目に涙が溜まっている。

 彼が瞬きをするたびに、目に溜まった涙がこぼれそうになる。

 

「王子、ちょっと外の空気を吸いに行こうか」

「ソラト様、私たちシリウス王子と少しここを離れますね」


 アルガーさんとレナードさんが凄くスムーズにシリウスさんを連れ出して行った。

 そっか、あの三人は同年代だよね。

 それにしたってシリウスさんをフォローする二人の行動や声がけが完璧すぎる。


「レナードさんとアルガーさんって、理解と配慮がプロフェッショナルだね〜」

「うん、俺もたくさん頼らせて貰ったよ」

「頼れるお兄さんズって感じだよね。それで〜、これで天宮くんの旅はおしまい、なのかな?」

「そう、だね。元々魔王を倒す為の旅だったから」

「うちとおうりは最初から元の世界へ戻ることが目的なんだけど、天宮くんはこれからどうするの?」

「どうって……?」

「この世界に留まれば勇者としての栄誉が与えられるよ。でも元の世界に戻ればそれらはなくなっちゃうって話」

「俺も、元の世界に帰ろうと思ってるよ」

「後悔するかもよ〜、定番の勇者と王女が結ばれる展開があるかもしれないし〜」

「そんなのいいよ。次は帰ることを目的にするよ」

「りょーかい、ならおうりにもそれを伝えないとね。魔王を倒した後の天宮くんのこと、おうりかなりモヤっていたから」

「え! そうなの!?」

「本人から聞いたわけじゃないけど、多分ね。あ、おうりが戻って来た〜」


 シリウスさんたちが戻ってくる間にでもと、元の世界へ帰るための手掛かりを見つける為にオレはこの神殿を探ってみた。

 だけど何にも見つからなかった。

 肩を落としてこやきたちの所へ戻る。


「ただいまー……」

「おかえり〜、その様子じゃ何もなかったみたいだね〜」

「なかったー……。奥の方には祭壇があって、魔王が何かしようとしてた魔力の痕跡があったくらいー」

「おうり! 聞いて欲しい話があるんだ!」

「わっ! 空叶、急に大きな声で、どうしたー?」

「俺も元の世界へ帰るよ! 手掛かりを一緒に探そう!」

「う、うん、りょーかーい」


 オレの両手を握りながら空叶は言ってきた。

 こやきを見ると、やっぱりによによしている。

 この状況も温かく見守ってるっていうのー?

 まあ、いいけどね。 


「結局魔導書のことは魔王に聞いても無駄だったし。ていうか魔王を封じ込めてから時間そんなに経ってないのに、結構エネルギー貯まってきてるね。どれくらい貯めることができるのかな?」

「別世界の俺たちを喚ぶことが出来るくらいだから、エネルギー貯蓄の容量はすごいんだろうね」

「そーだよねー。あーあ、帰るための手がかりが魔王にあるって考察は違ったみたいだしー。行き詰まっちゃったねー」

「そんな行き詰まった時こそ、ご長寿の知恵袋を借りてみるのはどうかな~」

「こやき、もしかしてルジアスの塔の爺様のこと言ってるの?」


 こやきはいつも通りのにこにこ顔で微笑みながら力強く頷いた。






「本当にお城に戻らなくていいんですか?」

「ああ、君たちには世話になったから、今度は私が何か力になりたいと思ってるよ。帰るのはその後でもいいさ」


 オレたちはシリウスさんたちに旅の目的のことを話した。

 てっきりすぐにでも国へ帰るのかと思っていたら、なんとついて行くと言われたのだ。

 レナードさんとアルガーさんも同じ気持ちのようで、元の世界へ帰る手掛かり探しに協力してくれるという。


「俺たちもソラトたちの目的のために力を貸すぜ!」

「私もご助力致します」

「皆さん、ありがとうございます!」

「「ありがとうございまーす!」」

「それで、その魔導書のことを聞きにルーファスの爺さんの所へ行くんだろ。移動魔法は任せてくれていいぜ」

「この魔導書、実に興味深いですね。お爺様が知っていると良いですが。それでは行ってみましょう」


 元の世界へ帰るための手掛かり探しがどれくらい時間が掛かるのかは分からないけど、諦めないよ。

 ぜーったい帰るんだからね。








「着いたぜー。皆大丈夫か?」


 アルガーさんの移動魔法でルジアスの塔の屋上へと到着した我々6名。

 久しぶり過ぎて、何だか懐かしさが込み上げてくるよ。

 色々あったもんなー、不法侵入しちゃったりとか。

 

 屋上から階段を降りていき、こやきが先頭で爺様の部屋のドアをノックして勢いよく開けた。


「こんにちは〜、お爺ちゃんいますか〜?」

「おお、コヤキか! 元気そうじゃな。急に来るからびっくりしたわい」

「爺様久しぶりー」

「ルーファスさん、お久しぶりです!」

「オウリにソラトも来たのか。久しぶりじゃのう」

「お爺様、お変わりないですか?」

「爺さん、俺たちも来たぜ!」

「お前たちも一緒だったんじゃな。大きくなったのう」

「いやいや、俺たちこの間来たばっかりじゃん。変わってねえっての」


 なんか大所帯過ぎてわちゃわちゃしてる。

 親戚の家に従兄弟たちが集まった時みたいな感じ。

 爺様、対応が若干大変になってるっぽい。


「初めまして、ルーファス様。私はシリウスと申します」

「そなたは……、ローダン国の王子ではないか?」

「お爺ちゃん聞いて〜、皆で魔王を討ち取ったんだよ〜! シリウスさんも一緒だったんだ〜」

「なんと!?」

「爺さん、中に入ってもいいか?」

「今回はプリンを持ってきてるよ〜」

「たくさん話があるようじゃな。さあ、入れ入れ」

「お邪魔します」

「お邪魔しまーす」


 我々は爺様に続いて部屋の中へと入って行く。

 前と同じように爺様は魔法で大き目のテーブルと椅子を用意してくれた。

 そしてこやきが手際よくお茶の用意をし始めたのでオレも手伝う。


「皆さんお茶行き渡りましたね〜。さあどうぞ。スイーツも召し上がって下さいね〜」

「ではさっそく頂くとするかの」

「頂きます」

「美味そうー」

「ご馳走になりますね」


 カップからは湯気がゆらゆらと立ち上り、皆の表情は和らいでいた。

 淹れたての熱い紅茶が体内に染み渡っていく。

 先刻前に激しい戦いをしていたのがまるで幻だったかのように、今はゆったりできている。


 一息つき緊張が解けたのを見計らって、爺様が口を開いた。


「お主ら、本当に魔王を討伐してきたようじゃな。辺りの魔物らから邪悪な支配の魔力が消失したのを確認しておるぞ」

「えへへ〜、うちらめっちゃ頑張ったよ〜」

「うむ、大したものだ。これでこの世界も平穏が戻るであろう。どれ、魔王との戦いのこと、聞かせてくれるかの?」


 爺様の言葉を皮切りに、紅茶の温かさに癒されながらオレたちは話をし始めた。

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