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第54話 煽った上で封印

「貴様たちは一体何者だ……? ただの魔剣士と旅芸人ごときに……、ありえん……」


 魔王のヤツ、オレらの偽造ステータスを勝手に見たな。

 オレたちのステータスを魔王が見れるなら、魔王のステータスももしかしたら見れるよね。

 魔王にステータスがあるのかはわからないけど、ちょっと確認してみよう。


「……何語で書いてるのこれ」


 魔王に対し解析スキルでステータスを見るが、その文字は全く読むことができず未知の記号が羅列されている。

 ずっと見ていると頭が痛くなりそうだ。

 魔王がこっちのステータスを把握しているのに、こっちは読めないなんて苛つく。


「うちらが何者かは秘密〜。教える義理はないからね〜」

「そうそう、別に知ったところでどうにもできないしー。いい歳して誰かの正体を知りたがるなんて、子供ですかー?」

「それに、その秘密の大きさが自分の存在を消し去る程のものだとしたら〜、それでも聞きたい〜?」

「オレらが何者かなんて、一生かけたって理解できっこないんだから諦めなー」

「こ、このっ!」


 我々の煽りに魔王は顔を歪ませながら魔法で攻撃を繰り出してきた。

 その攻撃を人差し指だけで消失させる。

 威力的に最後の力を振り絞ったって感じかな。


「ねえ、魔王ってさー、寝る時はちゃんとパジャマ着てるのー?」

「……は?」

「魔王は最近何か美味しいもの食べた〜?」

「魔王が好きな時期は暑い夏と寒い冬、どっちー?」

「お風呂とかってやっぱり溶岩のお風呂だったりする〜?」

「魔王からみて一番強い魔物ってどの魔物なのー?」

「貴様ら……、我に対し何を言っているのだ……?」

「あー、ごめんごめんー。ほんとはお前なんかにこれっぽっちも興味なんてないけど、可哀想だと思って話しかけてただけー」

「どうでもいいもんね〜」

「ねー」

「この我を、愚弄するだと……」


 興味があるようなフリをして散々質問していたのは嘘であることを伝え、我々はわざとらしく笑い合った。

 長年畏怖されてきた存在の魔王が、自分たちのような女子に小馬鹿にされるなんて思いもよらなかっただろうね。

 

 ていうかシリウスさんに剣で貫かれたのに、何でまだ生存できてるの?

 もう一回ステータス見てみよう。

 あ、今度は所々読むことができる。


 肩書きには魔王ではなく、悪しき力を持つ者となっている。

 体力値がほんの少しずつ回復してきているのを確認する。ほんとにほんのちょっとずつだけど。

 それから不老不死って書いてるけどマジか。

 それじゃあいくら攻撃しても倒すことはできないじゃん。


「シリウスさん、魔王って不老不死みたいですけど、どうしましょう」

「ふ、不老不死!? 本当かいオウリ!?」

「うちも今魔王のステータス見てるけど、ホントだ〜、不老不死って書いてる〜」

「……小娘共、我のステータスが読めたのか。フフフ、そうだ、我は老いることも死ぬこともない。貴様らがどんなに攻撃しようが無意味というもの。倒すことなど不可能なのだ。絶望しろ!」


 魔王の口元は三日月のように歪み、高慢な笑みを浮かべ、圧倒的な力の差を誇示するように悠然と言葉を吐き出した。


「やだー、不老不死なんてどんだけお金積まれても絶対なりたくなーい! 永遠の囚人じゃん! それに無限に笑えるお笑いなんてないからつまらんよねー」

「うちも不老不死なんてイヤ〜。ずっと生きるんだよ〜。今は楽しいかもだけどいつかは楽しくなくなるよ〜」

「今までもこれからも魔王はずーっとずーっと一人ぼっちじゃーん。ぼっち魔王じゃーん!」

「一人だと寂しくて寂しくて震えて泣いちゃう〜? 魔王泣いちゃう〜? 夜に枕を濡らしちゃってる〜?」

「……私も、不老不死になるのはごめんだな」

「「ぶはっ!」」


 オレとこやきがわざと魔王を煽り散らかしている所へシリウスさんが凄い真面目な顔して言ってくるもんだから、それが我々にはものすごく可笑しく感じて笑ってしまった。

 不老不死ってなりたくてなれるものじゃないと思うんだけどな。


「貴様らのような一瞬の命が永遠を理解できるものか! ぐあぁっ!」

「あ、ごめんなさーい! ちょーっと縛りキツめの拘束魔法かけちゃったー。苦しくしてごめーんね。解除する気は全然ないけどー」

「貴方に聞きたいことがあるんだ〜。この魔導書、何なのか知ってる〜?」


 こやきは収納魔法から例の魔導書を取り出して魔王に見せた。

 魔導書を一瞥し、知らないと言う魔王。

 だけど魔王の表情が一瞬こわばり、ぴくりと肩が震えたのを見逃さなかった。


「ホントは知ってるんでしょー? 知ってること吐き出したほうが楽になれるよー」

「我は知らん」

「君たち、この魔導書はどこで手に入れたんだ?」

「えーっと、ロー……」


 素直にローダン国から持ち出したって言ったらマズイかな。

 シリウスさんはローダン国の王子だし、国の物を勝手に持ってきたこと知られたらヤバいよね。

 

「ローダン国からですよ〜」

「こやきー!? それシリウスさんに言っちゃうー!?」

「……あ!」

「だ、だ、大丈夫です! 騒動にならないようにレプリカ置いてきたので全然大丈夫です!」

「責めるわけではないよ。私が旅に出る前から国の魔術師たちがその魔導書の解読研究をしていたので、見覚えがあると思っただけなんだ」

「そーなんですねー」

「異世界の勇者を喚んだ時に使ったみたいで、うちらが元の世界に帰るための手掛かりが何かあればいいなって持ってきちゃいました〜」

「見せて貰ってもいいかな?」

「どうぞどうぞ〜」


 こやきはシリウスさんに魔導書を手渡す。

 異世界から勇者を喚ぶ為に使われたものだけど、オレとこやきが調べても結局何も分からなかったし。

 魔導書の中に貯められたエネルギーは既に空っぽになっている。


 ……まてよ、空っぽならまたエネルギーを貯めればいいんじゃないかな。

 例えば、そう、この世界に悪影響を及ぼす程の力を持っている魔王からとか。


「見てみたけどすまない、私には何も分からなかったよ」

「いえいえ〜、うちらも何にも分からないでいるので〜。おうりどうしようか〜」

「……封じ込めてみない?」

「え、何を〜?」

「もちろん、魔王のことを」


 そう言って魔王へ視線を向ける。

 表情に出さないようにしているが、呼吸が乱れて、キョロキョロと視線を彷徨わせている。

 確実に挙動不審になっているのが分かる。


「この魔導書には今は空になってますが、膨大なエネルギーが取り込まれていたようです。だったらまた貯めてみればいいのかなーって思って。その為には、魔王をこの中に封印するのが手っ取り早いですよね」

「あ、それいいね〜。それに封じ込めちゃえば、もう悪さ出来なくなるし、やろうやろう!」

「そうだな、不老不死故に倒せないのならば、封印するのが最良の得策だろう」

「満場一致で決定だね」

「ふん、封印などというぬるい発想で、この絶望を終わらせられるとでも思ったか? 愚か者どもめ!」

「声に動揺が表れているよ〜」

「焦ってるのが丸わかりー」


 拘束魔法のせいで身動きは取れないが、身体が震えているのは怒りのせいだろうな。

 すっごい血走った目で、顔を歪ませながらこっちを睨んでるよ。

 封印は決定事項なので止めないけどね。


「んじゃ、早々にやっちゃいますか。こやき、準備はいい?」

「いつでもオッケーだよ。シリウスさんは離れてて下さいね〜」

「分かった」

「待て! その魔導書は我を封じるのではなく、我の力を増幅させるものなのだぞ!」

「はい、嘘乙ー!」

「お疲れ様でした〜」

「……あ、ああ、やめろ! やめろぉぉぉっ!」


 こやきと二人で一緒に魔導書を広げて魔王へと向け、魔力を流し込んだ。

 魔導書から光の鎖が放たれ、魔王の身体を絡め取っていく。

 それが光の渦となって魔王は魔導書へと吸い込まれていった。


「永遠に生きて、孤独にのたうち回れ……」

「ふはっ! おうり何それ〜」

「あー、こやき笑うなんてひっどー」


 封印が完了したので格好いい言葉を言ってみたのだが、こやきに笑われ恥ずかしくなる。

 魔王を封じ込めた魔導書は、悪い影響が出ないように更にしっかりと我々二人の魔力で結界魔法をダブルがけしておいた。


「これで、世界は救われたんだな……」

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