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第43話 ついて来る条件

「魔王の居場所なんですが、目星が確実についたというわけではないんですよ」

「そうなんだよ。偶然行った場所から、今まで感じたことのない不快な魔力を感じ取ったってだけなんだ」


 本題の魔王の居場所について話を聞いているのだが、どうやらはっきりと場所の特定をしたわけではなさそうだ。

 目星が付きそうだとしか言ってなかったから仕方がない。


「その場所を知りたいです! お願いします、教えて下さい!」

「オレからもお願いします!」

「お願いしまーす」


 空叶の真剣さに、オレとこやきも一緒になって頭を下げる。 

 しばしの沈黙後、レナードさんが自身の収納魔法から地図を出し、オレたちに見せながら詳しく教えてくれた。


「ここの森の奥にある洞窟を抜けて進むと、神殿のような建物がありました。入ろうにも強力な結界が張られていたのと、地図の何処にも書いていない場所だったので一旦引き返したのです」

「その後ルーファスの爺さんなら何か知ってるかと思って聞きに行ったけど、分からんって言われてさ。神殿のことや結界のことを色々情報探っていたんだが、未だに何も掴めていない。どん詰まり状態ってわけだ」

 

 地図で教えて貰った場所には我々は一度も行ったことがない。

 地図に書いていない神殿とかって怪しさ爆発級だよね。

 それに強力な結界があるのも、もしかしたらここに魔王がいるかもしれないって思っちゃうよ。

 アルガーさんが感じ取った不快な魔力も、高確率で当たりっぽい気がするし。


 今までの旅は地図にある町や村を訪れて、そこで魔王の情報を集める、それだけしかしてこなかったんだよね。

 怪しげな所を調べたり、洞窟探索とかは一切してきてない。


 情報収集のために様々なダンジョンを巡るなんてのは、勇者が魔王を倒すことを目的としたRPGゲームのデフォだと個人的には思っている。

 そのシナリオがこの世界で通用しているのかは知らないけど、やっと得た魔王への手掛かり、行ってみるしかないよね。


「レナードさん、アルガーさん、貴重な情報、教えて頂きありがとうございました」

「ソラト様、そこへ行かれるのですね。先程も話しましたが、神殿に入るには強力な結界が張られており、我々でも解くことが出来ませんでした。昨日帰ってきてから結界魔力の解析をしているので、解除方法が分かればお力になれるかと」

「それにあの森の辺りや洞窟内の魔物の強さは半端なかったぜ。ソラトには俺たちの力が必要になると思うんだが」


 あー?

 二人のこの言い回し方はアレだよね。

 勇者の仲間になりたいってことだよね。


 前に空叶はオレとこやきの二人がいるから断るって言ってくれた。

 でもでも、さっきレナードさんから人生経験豊富な大人のアドバイスを貰った時の空叶の表情を思い出すと、この二人を仲間にする考えが生まれてもおかしくないかも。

 決めるのは空叶だけど、うーん、なんだかもやもやするなー。


「失礼しまーす。お茶をお持ちしました〜」


 女性の声がすると同時に客間のドアが開けられる。

 お茶を乗せたトレーを運んできたのは、高めのツインテールがぴょこんと兎の耳のように揺れる女性。

 リボンが付いているふわふわなケープの下には、ひざ上丈のワンピースを着ている。 

 この人からも爺様と似た魔力を感じ取る。

 

 彼女はテーブルにトレーを置くと、並んで座っているオレら三人を見つめてくる。

 そしてオレとこやきの間にいる空叶の手をいきなり握りしめてきた。

 

「あなたがかねてよりお噂の勇者様ですのね! ずっと会いたいと思っていました!」


 この人突然なんなんだ。

 無理くり来て空叶の手を握るから、手前に座ってるオレの足が僅かに踏まれているんですけどー。

 キラキラした目で空叶のことを凝視してるよ。空叶、びっくりして固まってるじゃん。

 それよりなにより、足踏んでること気付いて欲しい。


「わたし、リリーナと言います! 勇者様のお名前を教えて欲しいですわ!」

「リリーナ、ソラト様が困ってらっしゃる。離れなさい」

「勇者様のお名前はソラト様と言うんですのね! 素敵なお名前ですわ! ご年齢はおいくつですの?」

「おい、リリーナ、ソラトが戸惑っているじゃないか。いきなり手を握るなんて失礼にも程があるだろ」

「そうですよね~。それに〜、おうりの足を踏みつけてるのって、リリーナさん意図的なんですか〜?」 

「あら、ごめんなさいね〜」


 謝罪の言葉を言いながら離れていくリリーナ。

 絶対悪いと思ってないよね。

 こやき、言ってくれてマジサンキュー。


「急に妹が悪かった。ずっと前から勇者に憧れていて、はっちゃけてしまったようだ」

「アルガー兄様! はっちゃけてってなんですの!」

「我が妹ながら年甲斐もなくはしゃいで、兄として恥ずかしい。」

「レナード兄様まで、わたしのことそんな風に思わなくてもよろしいのでは!?」


 爺様の三人の孫が勢揃いか。

 リリーナはお兄さんたちにまだ何かやいやい言っている。

 さっさとステータス見ちゃおう。


 肩書きは魔道士ね。確か中級職だったっけ。上級職が大魔道士だったかな。

 主に攻撃に特化した魔法を修得している。連続呪文のスキルも持ってるんだ。他には特に目立った能力はなさそう。

 レベルもそれなりで、お兄さんたちと一緒に修行中なんだろうな。


「ソラトたち三人はリリーナより2つ下の16だそうだ。それと両隣の二人はソラトの仲間のオウリとコヤキだ」

「仲間ですって!? 勇者様はお一人で旅をしていると聞いていましたのに!?」


 よしよし、ちゃんと勇者が一人で旅をしていることになってるね。

 最初の時は偽ステータスを持つなんて考えもしなかったから別行動してたけど、ローダン国からだいぶ離れたし、偽造ステータスもあるし、これからもこのまま仲間設定でいっちゃおう。


「ソラト様、わたしのことも仲間にしてください! 必ずお役に立ってみせますわ!」

「リリーナさんのお気持ちは有り難いのですが、僕の仲間はこの二人だけで大丈夫です」

「そんな……、で、ではついて行くのなら構いませんわよね!」

「えっ!? つ、ついて行くとは……?」

「文字通りですわ!」


 おーーい、どうやっても構うだろ。

 それに、ついて行くって、この人なんか怖い。

 ストーカーという概念がこの世界にあるかは知らないけど、執着心強くてやっぱ怖っ。

 

「実のところ俺たちも勇者の仲間になりたいと前から思っていたんだ。だがソラトの仲間になるのが難しいなら、せめて別パーティーとして旅について行くことを許して欲しい!」

「私からもお願いしたいです。仲間ではなくとも共に魔王と戦い、この世界に平和を取り戻しましょう!」


 あーーー?、なに、なんなんこの展開は?

 チートステータスの力を大っぴらに使えなくなるから、ぶっちゃけついてこられると困るんですけどー。

 だけど、リリーナ以外の二人からは、純粋に勇者の力になりたいっていう熱量がガッツリ伝わってくるよ。

 伝わってくるんだけども……。


「おうり……、こやきさん……、どうしたら……」


 あ、こっちはこっちでかなり困惑している。

 多分だけど、レナードさんとアルガーさんの人柄が良いから、空叶はズバッと断ることが出来ないんだろうな。

 この場を収めるための言葉が全然出てこないや。


「天宮くんが嫌じゃないなら、レナードさんとアルガーさんのお二人がついてくるのはいいんじゃないかな〜。別パーティーで良いって言ってるし」

「わたしはっ!?」

「うちら以外の人たちと旅をするっていう経験をしてもいいと思うよ〜。レナードさんとアルガーさんの二人なら安心できるからね〜、おうりが」

「だからわたしは!?」

「オレが何だって?」

「もちろん天宮くんの意思を尊重するから大丈夫だよ。いいよね、おうり」

「オッケーオッケー」


 流石こやき、動かないと思った場面を難なく動かした。

 確かに別パーティーとしてついてくる分なら、色々ごまかしができそうだし何とかなる気がする。


「ただし条件付きでお願いしますね〜」

「条件?」

「うちとおうりって、ものすっごく強いんですよ〜。うちらの超特別級な強さのことを秘密にするなら同行いいですよ〜。このことはルーファスさんとも約束してますし〜」


 爺様とそんな約束したっけ?

 だけどこやきのその言い回しなら、チートステータスの力を多少使っても良さそうだね。


 あ、でも今度から一人魔物狩り祭りは出来なくなるのかな?

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