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第32話 偽りのステータス

 勇者の装備を一新してからの戦闘は、一言で言うならヤバかった。


 特に付与効果の攻撃力アップと能力値上昇が完全にチートとしか言えない。

 今の勇者のレベルでは倒すことに時間がかかる魔物を、ほぼ一撃で倒してしまう。

 全属性ダメージ軽減の付与で受けるダメージ量は半分以下だし、それに体力値と魔力値の自動回復の付与もあるから回復もすぐだし。


 魔物の群れとの戦いが終わった後、空叶はしばらく茫然自失で立ち尽くしていた。

 自分が思っている以上の力に驚いたらしい。


 我ながらとんでもない代物を生成してしまった。

 後悔はないけど。


「……ほ、ほんとにこの力を持ったままでいいのかな……? 俺、なんだか物凄い罪悪感というか後ろめたさというか……」

「天宮君てば、やだな〜、誰に対して何の罪悪感なの〜。勇者が強くなっていくのは当たり前なんだから、そんなに気にしなくていいと思うよ〜」

「そうだよ、こやきの言う通り気にすることじゃないよ。それに空叶がその力を否定すると、じゃあ最初からチートステータスのオレたちはどうなるって話になるんだからさ」

「あ、ああ……、そうだよね」


 空叶は付与が付いた装備品で強大な力を得たことに戸惑っている。

 まあ、突然のことだからしょうがないよね。

 だけど、その感覚には慣れてもらうしかないかなと。折角色々考えて生成して作ったものだし。


「その装備品はオレとこやきからのプレゼントだと思ってもらえると嬉しいんだけど」

「これからの戦いも油断しないで頑張ってね〜」

「分かった。俺、頑張るよ。プレゼントありがとう!」

「うむ、その意気や良し! 頑張るのじゃぞ!」

「それ、お爺ちゃんの言葉じゃん。おうりってば〜、ウケる〜」

「あはははは!」


 オレたちの思いは空叶にしっかり伝わったようなので一安心。

 今の勇者のレベルはともかく、、付与効果ががっつりあるこのステータスなら魔王と戦ってもいけるんじゃない?


 魔王の居場所を突き止めたら行ってみるのもありよりのありだよね。

 よーし、待ってろよ魔王! チートの勇者を連れて行くからなー!


 ……なーんて、流石に声に出すと恥ずかしいので、脳内だけで思ってみた。







「もしや貴方は勇者様でしょうか?」


 イザークさんの住んでいる町へと着き、そのまま進んで行くと入り口で見張りの人に空叶は声をかけられた。


「そのサークレットの石の紋章と、今ステータスも確認させて頂きました。ローダン国からの通達の通りですね。直ぐに町長を呼んできますので、勇者様、しばしお待ちいただけますか?」


 そう言うと見張りの人は町の中へ走り出していった。

 

「空叶、いっつもこんな感じで止められてたの?」

「そうだね。ステータスまで確認されることは滅多にないけど、このサークレットだけでいつも判断されてたよ」

「そうなんだー。へえー」


 国からお達しがあったとはいえ、いつ来るかも分からない勇者の判別をするのは見張りの人たちかなり大変だろうな。

 きっと通達書にサークレットのことやステータスのことなど詳しく書いてあるのだろう。サークレットにはめ込んである石の魔力も関係しているのかな?


 前の街での偽物勇者たちは魅了魔法を使って勇者として認めさせたんだろうね。

 そんな悪いことを思いつくなら、もっとこの世界の為になることを考えればいいのに。


 悪人の思考なんて知らんけど。


「すみません、お待たせしました。町長、この方が勇者様です」

「勇者様、ファーゼイストの町へようこそお越しくださいました。後ろのお二方も、歓迎いたします」

「「はーい」」

「勇者様、長旅でお疲れでしょう。宿を準備しましたので、そちらで色々とお話をさせてください。それでは宿へご案内しますね」

「分かりました。ありがとうございます。仲間たちの部屋もお願いできますか?」

「はい、お任せください」


 空叶、しれっと我々のことを仲間たちって呼んだな。平然と言ってのけるなんて度胸が凄い。

 流石勇者、って言っていいのかな。


「このファーゼイストの町にはかの有名な大魔法使いルーファス様のご子息様ご夫妻や、そのお孫様方が住んでおります」

「そうなんですね。ご子息の方はイザークさんというお名前で合ってますか?」

「ええ、勇者様ご存知でしたか」

「はい。実はイザークさんに会うためにここへ来たんです。会うことは可能でしょうか?」

「そうですね。宿へお呼びしましょうか?」

「いえ、こちらからお伺いしたいので、都合を取り計らって頂けるとありがたいのですが」

「分かりました。すぐ確認を取りましょう」


 え、何か空叶のやり取り凄くない?

 初対面で町の偉いさんとさくさくやり取り交わせるなんて、一朝一夕じゃできないよね。


「あのお爺ちゃん、有名な大魔法使いだったんだね〜。まあ、弟子も各地にたくさんいるような話だったし、うちもステータス見たけど、実際レベル物凄く高かったよね」

「そうだよね。しがない魔法使いとかって言ってたけど、過去に何かしらの功績を成したんだろうね。生ける伝説になっているとみた」


 こやきと小声で爺様について話す。

 かの有名な、という言葉で言われちゃうくらい凄い人だったんだね。

 

「こちらが宿になります。どうぞ中へ」

「ありがとうございます」

「「ありがとーございまーす」」


 宿屋の前には人だかりが出来ていた。

 勇者来訪の話が直ぐ町の人たちに広まっているなんて、なんか怖っ。


「あれが勇者様かー」

「随分若い方なんだなあ」

「勇者様素敵ー!」


 こ、このギャラリーたちの騒音、久しぶりに聞いた。

 勇者見たさにしても騒ぎすぎじゃん。

 好奇の目にさらされているのが分かる。

 マジで勇者って毎度毎度こんな目に遭ってたのか。当事者ではないが、ざわつかれてるの、凄くしんどいんですけどー。

 

 空叶のこと、もっと労ってやらないといけない気がする。

 いや、ほんとのほんとに。


「勇者様、イザークからですが、今日は家に居るのでいつ来て頂いても構わないとのことです」

「町長さんありがとうございます。早速行ってみます。おうり、こやきさん、今大丈夫?」

「先に食料とか日用品の買い出しに行ってからがいいんだけど。その後でイザークさんの家に行きたいな」

「じゃあ俺も買い物一緒に行くよ」

「ダメだよー、天宮くんはお留守番でおねがーい。直ぐ帰って来るから待っててね」

「え、あ、分かった。待ってるね」

「じゃあおうり、行ってこよ〜」


 こやきの発言の意図が分かった。あのギャラリーは勇者の後を確実について来る。

 ガヤガヤと大勢の人たちを引き連れては、ゆっくり買い物なんて出来やしない。空叶には悪いが、しばらくギャラリーたちを惹きつけてて貰いたい。


「あーゆーのは時間が経てば自然と落ち着くからね〜。それと、おうりの偽ステータス、魔剣士で作り直したいんだけど良い?」

「え、ステータス変えるの、何かした?」

「んー、何だろ、勘かな。勇者のレベルと似たりよったりなのが仲間にいるのはインパクトが弱いって思ったから。今後のためにも今変えといた方が良いかなって」

「こやきのその勘は当たるよね。じゃあ作るのお願い」

「もう作ってたから貼り付けるね。ちなみにうちもレベルとか能力値とか上げてみたよ。肩書きは旅芸人のままだけど〜」


 早速こやきに偽ステータスを張り替えてもらう。

 肩書きは魔剣士、レベルは勇者のほぼ2倍程に設定されている。能力値も魔法戦士の時より爆上がりの数値になった。

 この偽造ステータスのレベルを見たら、あの爺様ですら驚くんじゃないかな?


「よし、じゃあ買い出し早く終わらせて、空叶の所へ戻ろう」


 こやきの偽造ステータスもだいぶ数値を上げてあるが、こんな高いレベルで何故旅芸人?、と逆に疑問に思われる気がするんだけど。

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