第22話 じゃあ質問です
偽物勇者たちの情報をこやきから送ってもらい見てみる。
模写されたステータスを確認すると、奴らの正体は年季の入ったただの冒険者三人組。年齢は25歳前後。同級生かなんかか?
勇者を語ってたリーダーみたいな奴の肩書きは魔法戦士。レベルは今の天宮よりはかなり上。年季の違いだろう。しょうがない。
でも解析スキルでステータス見られたら勇者じゃないこと一発で見破られるのにね。
他の二人は特に偽っていなくて、肩書きは賢者と武闘家とそのままだ。この二人もレベル高いな。能力値も高くて、使える魔法やスキルも結構ある。
この男武闘家なんて、前に会った武闘家のリオさんのレベルよりちょっとだけ上だ。要注意かもしれないね、
一般の冒険者が相手にするのならの話だけど。
「あの偽物勇者の人たち、ここの町長からルジアスの塔の鍵受け取ってたでしょ〜。封印されてる魔物を倒すためにって。あれは嘘だよ。塔にある宝物を取りに行くんだと思うよ〜」
「お宝目的ってわけかー。防具屋のおじさんの話で、ルジアスの塔の封じられた魔物が守ってた宝のひとつに良質の輝石があるんだって。質の良い輝石は高値で取り引きされるって話だし。それ狙いもありえるね」
「うんうん。それにその塔に入るにはこの街の町長が持っている鍵が必要だから、手っ取り早く信頼させて鍵を手に入れるために勇者の振りをしてるんじゃないかな〜」
「国は勇者が自国から魔王を倒すために旅立ったことを大っぴらに布告しているから、偽物が現れてもおかしくないかもしれないね。おーい、天宮ー、落ち込むなー」
オレとこやきの話を聞いていた天宮の表情がどんどん暗くなっていくのに気付く。しょうがないか、自分の名を語る偽物がいるなんて、当事者じゃないオレでも嫌な感情になるよ。
「そういえば天宮くんって、行く先々の町や村で勇者って分かられていたけど、何か目印みたいなのがあったりするの?」
「あー、それ、オレも気になった。自己申告制とかなのか?」
「いや、自分から名乗ったことはないよ。サークレットにはめ込まれている石の中にローダン国の紋章が入っていて、それを見て判断されていたかな」
天宮は収納魔法の中からしまっていたサークレットを出して見せてきた。赤い石の中には確かに何かが刻まれている。何か神秘的な魔力も帯びているようだ。
そういやあの偽物勇者もこれと似たようなサークレットを頭に着けていたな。どこかでこのことを知り、仲間の賢者の生成スキルでサークレットのレプリカを作ったのかもしれない。
本物の勇者よりも先に街に入って自分が勇者であることを認めさせてしまえば、後から本物が来ても覆すことが難しい。ここみたいに大きな街で大勢の人々を納得させていれば尚更だ。
カフェでの奢りパフォーマンスもそれなんだろうな。
でも町長がすんなり鍵を貸し出した時に、なーんか妙な違和感を強く感じたんだよねー。人を操る系の何かスキルとか魔法を発動していたのかもしれない。
「天宮あんまし心配すんな。お前はこの世界唯一無二の『勇者』だ。そしてオレとこやきも唯一無二の『勇者を守りし者』だよ。これは紛れもない事実!」
「そうだよ〜。そしてうちらがチートステータス持ちで無敵なのも事実だよ〜。それを踏まえて二人に質問です! 勇者の名を語る悪い偽物をずーっとずーっと野放しにしておきますか?」
「俺の、偽物……」
「……放置しない、刈り取るの」
「うん、おうりの好きなあのネタに似せたから、被せてくるの分かって言ってみた」
「ははっ、刈り取るって、いいねそれっ! あはははっ」
天宮大爆笑だ。芸人冥利に尽きるね。まだ芸人じゃないけど。
ネタのほんの一部でこの反応なら、ネタを一本まるっと見た時はどうなるんだろう。笑い狂っちゃったりして。なーんて。
「大勢の前でステータス開示して、この人勇者じゃありませーんってのは?」
「うちもその方法思ったけど、あの人たち魅了魔法使ってるから厳しいね。この街で実行したら多分うちらがバッシング受けちゃうかも。特に女子たちに」
「あー、あの違和感の正体は魅了魔法だったんだ。だとしたら女子だけじゃなく、町長もがっつり影響受けちゃってんじゃん。大事な鍵渡してたし!」
「一般の人たちなんて状態異常への耐性ゼロだからね〜。でも、あの程度の魅了魔法なら、この街の規模くらいまとめて一気に解除できるけど、逆に掛けられてない人たちへの負担を考えると現実的じゃないし。かといって一人ずつ解除も面倒くさいし」
「とりあえず奴らは刈り取り決定として、ルジアスの塔へ行ってみようか。お宝が気になるし。あいつら、いつ行くとかこやき聞いてた?」
「明日午後にはって言ってたよ」
「じゃあオレらは午前中に出発しようよ。天宮もそれでいい? 塔の魔物でレベル上げするのもいいかもね」
「ああ、いいよ」
「よし、予定決まりだね。じゃ夕食まで解散解散。二人とも、18時に食堂待ち合わせでいいかな?」
「俺も一緒に夕食いいの?」
「あったりまえじゃん。もしかして別が良かった?」
オレの問いに天宮はブンブンと首を横に振る。
そっか、考えてみれば三人で夕食ってのは町の中では初めてだ。天宮、今までは知らない人たちに囲まれて過ごしていたんだよね。さぞかし気が休まらなかっただろう。
今日くらいは勇者であることを忘れて、ゆっくり過ごしてもらいたい。
こやきと天宮がそれぞれ自室へ戻っていった後、静かな部屋の中で一人ベットに横になった。窓を閉めれば外の喧騒もほとんど聞こえてこない。
それにしても偽物勇者たち、魅了魔法を使っていたなんて、マジでどう料理してやろうか。塔のお宝を先に全部回収してみようか。それとも鍵付きの扉を開けれなくしてやるって手もある。勇者と名乗ったこと、絶対に許さん。
天宮はあいつらとは戦わせないようにしないと。レベルと経験の差が大きい。でも本物がいることを分からせたいし。そうなると一回は偽物たちに本物の勇者の姿を見せないといけない。どうしようかな……。
「あっ、ちょっと面白そうなこと思いついちゃった! ふふふっ、良いかも! こういうのはノリで良いんだよ! よし、こやきと打ち合わせしよーっと」
ふと突然閃いたことをこやきにコールして伝える。
面白そうと即オーケーとのこと。その準備品はお互い生成スキルで作り出し、明日出発の時にそれをお披露目をすることにした。天宮には内緒なので夕食時顔合わせた時冷静でいなければ。
「ふふふ……」
「おうりってば、何ニヤニヤしてんのさ〜」
「い、いやー、ここのご飯美味しいなーって思ってー」
夕食時こやきに言われ、自分がニヤつく笑いをしていたことに少し恥ずかしくなる。よほど自分の閃いたアイデアが楽しいと感じているみたいだ。
「そうだね。このハンバーグ美味しいね。かかってるトマトのソースもすごくいいよ」
「天宮のそれトマトソースなんだ。こっちのチーズソースもめっちゃ美味しいよー。こやきはオレらと同じ肉料理にしなかったね」
「お昼にガッツリ食べたからね〜。きのこパスタで充分。付け合わせのスープとサラダも美味しいし。実はカフェで頼んだお肉のワンプレートセットなんだけど、あの店で一番高いメニューだったんだ」
「へー、やるじゃんこやき。偽物らの財布にダメージ喰らわした感じだね」
「ほんとはこのお店で一番高いメニュー上から五品ください、ってのをやってみたかったけどね。食べきれないと食材が勿体ないからやめたの」
「いつかやってみよーね、他人の支払いの時にでも」
「ラジャー」
夕食後は天宮と明日の朝食の待ち合わせ時間を決めて解散した。その後入浴を早々と済ませて生成スキルで制作開始。
明日の天宮の反応がちょっと楽しみだ。




