第20話 街ブラは楽し
「必要な物資はこれで全部買った、っと」
食料や日用品など、先程市場や雑貨店で購入した物を全て収納魔法にしまう。その様子を天宮はまじまじと見ている。
「野営の時いつも暖かくて美味しい食事を食べれるのは、春日野さんたちがこうやって食材を購入してくれてるおかげなんだよね。本当いつもありがとう」
「いーってことよ、気にすんなー。元は天宮が倒した魔物から石を回収して換金したお金だから。それにたまーに魔物狩り祭りをした分とかも合わせると蓄えは結構あるよ。天宮も欲しいものあったら折角だし買っちゃえばー」
「そうだね、いいのがあれば買おうかな」
「あ、そうだ。防具屋とか道具屋みたいな所寄るって話だったよね。行ってみていいかな?」
「いいよ、行こう。その前に春日野さん、お腹空いてない?」
「そーだね、とっくにお昼過ぎてたもんね」
空腹を感じ取ると市場の並びにある屋台からの美味しそうな匂いに惹きつけられる。肉が焼ける香ばしい匂い、芳醇なスパイスの香り、甘い果実やお菓子の匂いなどが食欲をどんどん刺激してくる。
「天宮、良かったら屋台で色々買って食べない? 屋台飯に抵抗がなければだけど」
「大丈夫だよ。行ってみようか」
天宮はにこやかな笑顔を向けると、オレの手を取り屋台の方へ歩いていく。
そんなに急ぐほどお腹が空いていたのか。まあ人が多いから手を繋いでいたほうがはぐれなくていいよね。
屋台を巡り歩き、気になった食べ物と飲み物をそれぞれ購入した後、休憩スペースになっている場所へ行き空いている椅子に腰掛けた。
「さーって、食べよ食べよ!」
自分も思った以上にお腹が空いていたようで早速食べ始める。手のひらより大きなサイズの肉まんに一口かぶりつく。肉汁がじゅわっと溢れ出し、濃厚な肉の旨味が口の中いっぱいに広がる。ザクザク野菜の食感もいい感じ。それをよく冷えている炭酸水で流し込む。
美味しいもの食べると幸せになるなー。
肉まんはけっこうなボリュームだったけど、あっという間に食べてしまった。
そしてデザートタイムへと突入中。揚げ団子にとろりとした琥珀色の蜜がかかっている。揚げたてのカリッとした外側の生地と、中のもちもちしている団子の食感がとても良き。それに濃厚な蜜が合わさり、口の中に甘さがいっぱい広がる。
甘味は正義だ。
ふと目の前に座っている天宮と目が合う。天宮はたしか肉と野菜が挟んであるずっしりとしたパンを買ってたけど、どうやらすでに食べ終わっていたようだ。今は飲み物をゆっくり飲んでいる。
「なに? オレの顔になんかついてる?」
「い、いや何も付いてないよ。美味しそうに食べてるからつい……」
「?」
天宮の顔が赤くなっていく。実際美味しいものだからそういう顔になってるのは否めないのだけど。
「天宮ー、はい、あーんして」
「えっ!?」
「早く口開けて。蜜が垂れちゃうから」
最後の揚げ団子を竹串に刺し、入れ物の底に残っている蜜をたっぷりつけて天宮の口元へ持っていく。
小ぶりサイズだから一口でいけるはず。
美味しいものは共有しないとね。
「んぐっ、あっ、熱っ!」
「あっ、ごめん! 熱かった!?」
「だ、大丈夫。美味しかったよ、ごちそうさま」
天宮は飲み物で口を冷やしながら笑ってお礼を言ってくる。
なんかさっきのって熱々のたこ焼きを食べた時のリアクションっぽくってちょっとウケる。
「屋台にたこ焼きなかったなー……」
「春日野さん、たこ焼き好きなの?」
「大好物だよ。あれは神の食べ物と言っても過言じゃないからね!」
「ふふっ、そうなんだ」
「たこ焼きマスターになれるならなってみたいなー。たこ焼き検定とかあるなら受けたいね」
「あはははっ、どれだけたこ焼き好きなのさ!」
「だってめっちゃ美味しいじゃん! あ、でも過去に3食たこ焼きしか食べないでいたら3日目には兄さんたちに泣かれた記憶があるや」
「3食たこ焼きって、あははははっ!」
おもしろおかしな話をしたわけじゃないのにめっちゃウケてるー。うわっ、ちょっと周りの人たちが注目してきているじゃん。
「あ、天宮、そろそろ行こう」
「そうだね、ふふふっ」
テーブルの上を急いで片付けてその場を後にする。笑い泣き後の涙を拭う天宮。
笑えるのは良いことだからよしとしよう。
お腹を満たした後、防具屋を目指して歩いた。大きい街なので所々に街の案内板があった。冒険者風の格好をした人たちを多く目にする。時々聞こえてくる「勇者がこの街に来ている」という話に少し苛つく。
あの偽物勇者たちが勇者ということになっているのは『勇者を守りし者』をやらせてもらってる身としてマジで許せない。
どうしてくれようか、本当に。
「春日野さん、防具屋通り過ぎるよ」
「あっ、ごめんごめん」
考えすぎていて店の前を素通りするところだった。とりあえずあの偽物どものことはこやきが情報収集してるから、処罰の沙汰はまた後で会議を開こう。
早速防具屋に入ることにする。
状態異常への耐性のある装備品がすぐ見つかればいいな。お金に糸目はつけなくても平気なくらいガッツリ持ってるし。
「おじゃましまーす」
中の様子を伺いながら、重厚な扉を開けていく。鉄や煤、革のような独特な匂いがする。店に入ってみると盾や鎧などが台座に置かれて陳列されている。鍵付きの棚には腕輪やタリスマンなどのアイテム類が並べられていた。
あ、この雰囲気はなんかちょっとワクワクするね。
「嬢ちゃんたち、何が欲しいんだ?」
店のカウンターにいる人が声をかけてきた。
がっしりした体つきで無造作な短髪に革の鎧を身に着けている店員の男性。この人絶対昔に冒険者やってたって感じの雰囲気がある。
「えーっと、状態異常への耐性が付いてる装備品とかアイテムが見たいんですがー、ありますかー?」
「あるにはあるが、耐性付与付きは高えぞ」
「あ、それは全然大丈夫ですー」
「そうか、それなら……」
店員の人はカウンターから出てくると店内を案内して色々商品を見せて説明してくれた。
状態異常耐性プラス40%の鎧、麻痺と毒を防げる盾、混乱と眠り、麻痺への耐性が付いている腕輪や指輪、魔力封じ耐性の付与の付いたアミュレットなどなど。
顔に見合わず懇切丁寧に説明をしてもらったが、どれも状態異常の攻撃を完全に防げるものではなかった。
「うちにはこれ以上の品物は置いてねえな。大体状態異常を完全に防ぐことができるもんなんて……、あー、あれはただの噂話だったな」
「おじさん何か知ってるみたいな感じだねー。その噂話教えて欲しいなー」
「まあ聞きてえなら話してもいいけどよ。この街を北西に行ったところにある塔を知ってるか? ルジアスの塔っていうんだがよ」
「ルジアスの塔……」
「そこの塔の一番上には魔物が封じられてるって昔からの話なんだが、なんでもその魔物が守っていた宝のひとつにかなり質の良い輝石があるらしいって話だ」
「輝石って?」
「輝石ってのはいろんな付与を付けることができる石だな。通常生成スキルや高い魔力持ちの奴なんかに頼んで輝石に付与を付けてもらったりするぜ。それを加工して装備品に付けることで付与の効果のある強力な武器や防具にすることができる。アイテム類にも使うことが多いな」
「えー、知らなかったー。輝石ってすごいね!」
「ただ輝石にも質の良し悪しがあるぞ。質の悪いのはそこら辺にごろごろ転がっている。いくつもの付与を付けれる良質な輝石ほど入手が難しい。取り引き価格も高値だしな」
「へー、良いこと聞いちゃったー。ルジアスの塔ねー」
あれ、ルジアスの塔ってあのクサレ偽物らが町長から塔の鍵貰ってなかったっけ?
「まさか嬢ちゃんたち行くつもりじゃねえだろうな? 無駄だぜ。塔にはいくつも鍵が掛けられてて、その鍵は代々町長の家が管理しているみてえだからよ。それに……」
「それに?」
「あの塔は魔物の巣窟になってるらしくて、宝を持ち出そうとした奴らは誰も戻ってきてねえんだとよ」
「ふーん、おじさんお話ありがとー。ちなみにこの店で一番良い輝石見せて欲しいなー、できたらたくさん付与が付けれる物で」
「ああ、いいぜ」
店員のおじさんは一度奥へ行き、鍵の付いた箱を持ってきて見せてくれた。
「これがうちに今ある一番質の良い輝石だ。付与は最大4つ付けれる。嬢ちゃん知り合いに生成スキル持ちがいるのか?」
「秘密でーす。じゃ、これとりま2個下さい」
「2個も買うのか!? 金額は1個でも30万するぞ!?」
「あ、そんなもんなんだ。じゃあ2個で60万ね。はい、お願いします。天宮は何か買うー?」
「俺は特にないかな」
「分かった。おじさんお金ちゃんとありますよね。んじゃ、どーもでしたー。天宮行こー、あー、いい買い物したー」
買い物に満足してオレたちは防具屋を後にした。
「……まいどあり……。はは、一体何者だったんだ、あの嬢ちゃんは……」




