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第10話 年頃男子はよく分からない

「ねー、天宮ー、もうやめようよー。もうムリ、ムリなんだってばー」

「もう一回! 春日野さん、もう一回だけお願いだ!」

「えぇー、そう言って、もう10回以上やってるじゃん。天宮の身体が心配になるよー。疲れすぎると明日の旅に影響でるよー」

「俺、大丈夫だから! まだやれるから!」

「肩で息してるのに何言ってんのさー。汗もすっごいよー。また今度にしよ。お腹空いてきたし、今日はやめやめー。もーおしまーい。当店は閉店となりましたー。はい、立って立って」


 地面に座り込んでいる天宮を立ち上がらせるため手を差し出すと、素直にオレの手を取り無言で立ち上がる。

 さっきまで激しく動いていた為、呼吸が乱れ息が切れてしんどそうだ。額からは汗が滲んでおり、疲れ切った顔になっていた。


「ったく……、ほら、水分補給水分補給。飲んで飲んで」


 収納魔法を発動させて大きめのコップを出し、冷水を入れて天宮に手渡す。自分の分も用意してゆっくりと喉を潤していく。

 隣では天宮がゴクゴクと喉仏を動かしながら勢いよく飲んでいた。その間にさっき自分が弾き飛ばして地面に突き刺さっている天宮の剣を取りに行く。


「はいっ、天宮の剣」

「……ありがとう。水、美味しかったよ。ごちそうさま」


 天宮に剣を渡すと飲み終わったコップを渡された。疲れたのか元気ないな。もしかして何か落ち込んでる?


 剣の相手として付き合って欲しいって言われて、その時は断る理由が特にないからと思い引き受けた。けど手合わせをしてすぐ後悔したんだよ。

 だって、どう手加減すればいいか分からなかったから。

 魔物相手なら向こうもこっちに敵意があるから容赦しなくてもいいけど、人相手の戦いは慣れていないので加減が難しくて困った。だから天宮が打ち込んできたらそれを受け流して持っている剣を弾き飛ばすことにした。

 

 これなら怪我をさせることなく、武器を無効化できて決着という形を取ることができる。凄くいい考えだと思ったけど予想外に天宮が粘る粘る。

 何度も何度も向かってくる。

 

 だけどこっちはチートステータス持ちなんよ。

 いくら勇者だからってオレから一本取ることは無理なこと。天宮だってそれを分かっていると思っていたんだけどな。


 そもそも何でまた急に天宮は剣の相手を頼んできたんだろう。


「天宮は勇者としてレベルが上がるごとに相応の力がしっかり付いてきてるよ。剣の腕を上げたくてオレに相手を頼んできたの? それとも戦闘技術的なアドバイスとかが欲しかった?」

「……春日野さんの強さがどれくらいなのか知りたかったから」

「そんな理由で!?」


 伏し目がちにたたずんでいる天宮。何だか話しかけにくい空気になってる。どうしよう、めっちゃ気まずいぞ。

 こういう時は一人にしてあげた方がいいかもしれない。


「天宮、オレ、先に宿営場所へ戻ってるから」


 そう言い残しその場所から立ち去る。

 天宮が何を考えているのか分からない。

 多分、今無理くり聞き出そうと問い詰めるのは良くないと思った。ひとまずそっとしておこう。





「それで置いてきちゃったんだ〜。まあ年頃男子の気持ちは色々複雑だからね〜。もしかしたら何か精神的に不安定になっちゃってるのかも」

「何かって何?」

「うちが分かるわけないでしょ〜。想像は出来ても、それが正解だとは限らないし。人生経験豊富な大人なら何かアドバイスをあげれるかもだけど、うちら同年代のアドバイスなんてただしょっぱいだけだからね」

「……そう、だよね」


 宿営場所で夕食を作っていたこやきに天宮との先ほどのやり取りのことを話す。

 こやきの言うことはもっともだ。天宮のこと、まだあんまり知らないくせに分かった気になってイキっていた。


「おうり、天宮くんに対してイキってたとかって思ってるでしょ」

「う、うん……。こやき、よく分かったね」

「分かるよ。何百年一緒にコンビやってると思ってんの?」

「いや、昔から一緒だけどコンビ組んだのは去年だし、まだ1年しか経ってないし! 何百年って不死身か?!」

「てへっ!」

「……こやき、オレわりとマジで悩んでたりするんだけど」

「和ませようとしたくて〜」

「はいはい、和んだ和んだ」

「ふふふっ。でもおうりは偉いね〜。天宮くんに寄り添おうとしてるんだもん。ねえ、心がモヤモヤして不安になった時、おうりはどうしてた?」

「うーん、こやきに話をしてたよね。自分の気持ちを聞いてもらうだけで、話した後すっごいスッキリするし。……あー、なんとなく分かってきた気がする。オレ、天宮から話聞いてみるよ」

「うん、おうりなら天宮くんを安心させてあげれるよ。うちもおうりに話聞いてもらって何度も救われてるし。あ、そうだ。男子の話を聞く時更に効果倍増になる方法聞いたことがあるんだけど、おうり良かったら天宮くんで試してみてよ」

「そんな方法あるんだ。教えて教えてー」

「えーっとね……」


 こやきと話をして導き出した答えは傾聴すること。相手の話をとにかく聴く。これで天宮がスッキリするかはまだ分からないけど、思い悩んでいることが少しでも解消されるといいな。





 しばらくして天宮が戻ってきた。さっきよりも疲れている様子が伺える。でも表情は幾分さっぱりしてる感じ。もしかしてあの後自主練でもしてきた?

 体を動かすと気分転換に繋がるし、ストレス発散にもなるもんね。


「春日野さん、剣の相手してくれてありがとう。よければまたお願いしたいけど、いいかな?」

「あ、あー、別にいいけど。天宮……、あのさ……」


 うわ、自分、何で躊躇してんだろ。

 天宮に話を聞くって決めたのに、いざ本人目の前にしたら何故かためらいが出たきた。


「春日野さん?」


 ぐずぐずしてるのは嫌だな。思い切れ自分。


「夕食食べたら、ちょっとだけ時間もらえないかな?」

「いいけど、何かあった?」

「うん……。まあ、ちょっとね……」

「分かった。夕食後だね。大丈夫だよ」


 よしっ、何とか誘い出せた。珍しく緊張したせいか凄く顔が熱い。っていうか、いつもの天宮に戻ってるじゃん。あれ、これオレ余計なことしようとしてる?

 でも今更約束を無しにするのもなー。折角こやきにも相談したし、効果倍増の方法試してみてって言われてるし。


 話を聞いて、何ともないようなら前から聞いてみたかったことでも聞いてみることにしよう。

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