【1】
気付いた時には、“恋”に落ちていた――。
「はい、先生。チョコレート」
「………何、湊。学校に、こんなもん持込んできて……しかも先生にやるって、まさか…っ」
「深い意味はないですから心配しないでください」
「あってたまるかよ。たった一人の生徒のせいで、教師人生転落、無職に陥るなんて……世間の笑いもんも好いとこだ」
そう吐き捨て、乱暴に私の手の中にあったチョコを奪うと、一口食す先生。――結局、食べるんだ。
モグモグと口を動かす彼の横顔を、私はジッと見詰る。年齢は……三十路に入ったってぼやいてたのがつい最近の事だから、今は三十歳のオヤジ。
「………何」
「べっつにぃ…」
「……ふーん…。まぁ、好い(い)ケド……」
私は、今年高校を卒業する。
でもその前に、やらなければならない事があって、其れは――目の前で、二つ目のチョコに手を伸ばす此の男に、告白する事だ。
ねぇ、気付いてる? 何で私が、今日貴方にチョコレートを渡したか。
「先生! 」
「! ゲホッ…! ちょっ…何だよ? 急に大声出すな!危うくアッチの世界に行きそうになったんだけど…」
「あのね……」
「風間先生! 此処に居たのね? ……って、あら? ミクも居たの? 」
「湊先生! 」
「! お姉ちゃん…っ! 」
勇気を振絞って、告白しようとした瞬間、声が聞こえ、私と先生は振返る。
何らかの書類…だと思われるものを両脇に抱えたお姉ちゃんが、私と先生を交互に見遣り、「御邪魔だった…? 」と、首を傾げる。
「全っ然、御邪魔じゃありませんよ! 寧ろ、湊先生に声を掛けてもらえて光栄? みたいな…」
「クスッ……風間先生って、ほんと面白い方ねぇ」
ふふっと笑い合う二人。私の存在を忘れているのか、二人だけの空気が流れる。
――ねえ、私を見て! お願い、先生!
何度そう思ったって、結局先生は私を視界に入れる事は無く、ずっとお姉ちゃんばかりを映していた。
こんな思いをする位なら、好きだって、気付かなきゃよかった…
後書き
長編…ってか、中編な為、短編に置きます
バレンタインに終らせたかったのですが、間に合わず。。
取敢えず、書き終えた話まで乗っけます(^_^;)
初出【2013年2月14日】




