【幕間】とある侍女の手紙
親愛なる マザーイレーナ
ご無沙汰しています、お元気でお過ごしでしょうか。しばらくご連絡できずすみません。忙しくしておりますが、わたしは変わらず過ごしています。
リネアお嬢様のお付きで来た王都はとても賑やかなところです。休日の朝はお嬢様のご厚意で教会へ赴き、礼拝に参列しています。その日以外も持参した神像への祈りの時間は欠かしておりません。
寄宿舎でのお仕事は、リンドステットのお屋敷とは勝手が違い、最初は戸惑いましたが、同室の方のおかげでどうにかこなせています。他の側仕えの方の中には高貴なご身分の方もいらっしゃって、平民の使用人に対してキツく当たっているなどという話を耳にするたび心が痛みます。それと同時に、リンドステット家の方々がいかに領民を親しく思い接してくださっているのか痛感し感謝の念を覚えます。
先に書きました同室の方もまた、代々公爵家に仕える伯爵家のご令嬢だとお伺いしました。寄宿舎に到着し、すぐにリネアお嬢様のお部屋の前で対面した公爵令嬢様の側仕えをされておられ、その時の立ち居振る舞いがとても洗礼されていらしたのでそのご身分を聞いてすぐに納得できました。しかし、世間知らずのわたしは、このことを訊ねてしまったことを後悔しました。なぜなら高貴なご身分の方と同室だなんて、ご気分を害されるようなことをしてしまうのではと気が気でなかったからです。知らなければそのようなことを懸念する必要はなかったでしょう。
しかし、その方はわたしが身を固くしたことを察して、使用人同士であるから身分に関する気遣いは不要だと言って下さいました。言葉少なではありますが、そのひとつひとつから心配りを感じられるすてきな方です。このように尊敬できる相手に出会えたことは神様がわたしに与えた祝福なのだと思います。
リネアお嬢様がご学友と行かれた花祭に同室の彼女も主とともに同伴しており、その場で髪結いをする必要があった際に手早く繊細な仕事をされておりました。わたしは髪結いがそれほど得意とは言えません。リネアお嬢様は充分だと仰ってくださいますが、今後、美しく着飾られる機会に身にまとうものに見劣りしない技術を身に着けたいと考え、部屋に戻ってから彼女に教えを請いました。わたしの思いを聞いた彼女はわたしの願いを受け入れてくれました。寝る前の礼拝を行う前の短い時間ですが彼女の指導を受け、少しは上達したと思います。彼女とおそろいのブローチを買って宝物がひとつ増えました。
リネアお嬢様はもうすぐ夏季休暇に入られます。そちらに戻りましたら、わたしにも数日休暇を与えてくださるそうです。孤児院に顔を出した際に上達具合をお見せできるかと思います。
まだお話したいことはたくさんありますが、土産話として残しておきます。孤児院の兄弟姉妹にお土産も持って帰りますので楽しみにしていてください。
――――敬意と愛を込めて アンジェ
久し振りの更新になってしまいました、おかしいですね…?
今後、プリズムのキラメキに囚われないように気をつけます