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コロナ禍における自粛施策とコロナ以外の感染症流行に関する一考察

作者: よろ研

新型コロナウイルス感染症の流行初期、未知のウイルスということで全世界的に外出自粛や渡航制限を含めた、かなり強めの防疫対策が取られました。

現在ではウイルスの全容がほぼ明らかになったことから、渡航を含めた防疫対策はかなり緩めになっていますが、そのような中で既存の感染症はどのように流行していたのでしょうか。また、渡航制限によって感染症の流行状況はどう変化したのでしょうか。国立感染症研究所のデータから考察してみました。



新型コロナウイルス感染症流行による日本での措置


日本の新型コロナウイルス感染症の国内流入防止対策として、2020年1月末から段階的に国・地域ごとの入国制限をかけ始めました。他国での入国制限も同様に開始されており、特段の事情がない限りの渡航は事実上出来なくなっていきました。2020年4月には緊急事態宣言も出され、感染症対策は過去に類を見ない大規模なものとなります。マスクや消毒用エタノールの在庫が消えていきました。

その後、何度かの緊急事態宣言を経て、事実上の渡航制限は2022年10月まで続きます。日本国内ではその間もGoToトラベルや県民割等で人の移動は行われていましたが、2022年10月からの全国旅行支援以降、人の移動は事実上解禁のような様相を見せます。

以降、2023年5月8日の新型コロナウイルス感染症の5類移行をもって、制限はなくなったものとみてよさそうです。



コロナ禍の自粛施策で激減した感染症


過去行われたことのない強力な対策の結果、海外から流入してくる感染症と飛沫感染を起こす感染症の多くは自粛施策期間は減少しました。

デング熱は世界中で毎年1億人程度が感染する疾病ですが、渡航自粛もあって、この間の日本での発生はほぼゼロです。

麻しんも過去日本で流行した感染症ですが、こちらも2015年に日本は排除状態にあると認定されており、海外からの流入がなくなった結果、ほぼゼロとなっています。

肺炎マイコプラズマ等の飛沫感染する感染症も自粛期間中は激減しており、様々な対策がなされてもなお流行していたインフルエンザですら、この期間中は感染者数のグラフに現れてこないほど激減しています。

手足口病やヘルパンギーナといった子供達が主な感染者となる疾病はかなり減少しているものの、自粛期間中も少数の感染者が継続して出ています。これは、幼稚園や小学校といった閉鎖空間ではどうしても接触が避けられないことと、病原体であるエンテロウイルスがエタノールに耐性を持っており、丁寧な手洗いで物理的に洗い流してしまうしか感染予防策がないことなどが理由として考えられます。いずれにせよ自粛期間中に様々な感染症が減少したのは確実のようです。


また、食中毒についても患者数は減少しています。ただ、こちらはそもそも2007年あたりから緩やかな減少傾向を示していましたので、自粛施策の結果というより日頃からの衛生管理の徹底が効果を発揮しているものと思われます。近年では肉の生食による食中毒が目立ってきていますので、肉類は出来れば火を通したものの方が望ましいと個人的には思います。


参考までに国立感染症研究所のインフルエンザ定点報告数グラフを貼りつけておきます。

横軸は左端が1月、右端が12月です。

2020~2022年までは流行期である冬季を含め、ほぼゼロのところを横ばいです(2022年12月末に若干上昇がみられます)。


挿絵(By みてみん)


今回の自粛施策と同様の対策は今後取りづらいとは思われますが、この結果を見ますと、日本全体としては対策は決して間違ったものではなかったのではないかと考えます。なにしろ、あのインフルエンザですら封じ込める結果となったのですから。

それでも抑えられなかった新型コロナウイルスは相当しぶとい病原体なのだろうと思います。



コロナ禍の自粛施策でも変わらなかった、あるいは増加した感染症


各種感染症のグラフを見ていて、増加しているもの、あるいはほぼ変化なしの感染症があったことに気づきました。


大まかに言えば「性感染症」です。


梅毒は2020年は一旦減少しましたが、その後は増加傾向です。性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症に関しては自粛期間中もほぼ横ばいとなっています。

男性の同性愛者間の感染が多いHIVに関しては2013年以降、新規感染者数は漸減傾向にありましたが、2023年には新規患者数の増加が認められました。


自粛期間中もそれなりに「活動的」だったということでしょうか。

梅毒に関してはインバウンドで海外から持ち込まれたのが患者数増加の原因ではと言われたこともありましたが、単純に国内での感染が増えただけのようです。

こちらも参考までに国立感染症研究所の梅毒患者に関するグラフを貼りつけておきます。


挿絵(By みてみん)


グラフを見れば、明言しませんが原因はなんとなく見えるような気がします。

感染者数が1000人を超えたから大変だ、と騒がれていたのがほぼ10年前ですが、今はそれどころではない数字です。

性別年齢分布では男性が20~40代に広く分布しているのに、女性は20代にほぼ集中しているというのが傾向です。

感染者が見つかる発端として、女性は妊婦健診で梅毒は検査しますので、そこで引っかかるというのはあるのでしょうが、それにしては男性と女性で傾向が明確に分かれすぎているような気がするのですよね。



コロナ禍の自粛施策で得られた点


不謹慎ではありますが、コロナ禍での自粛要請や渡航制限は、ある意味世界規模で実施された実験的要素の強いもので、過去に実施されたことのない感染症対策でもあったかと思われます。その結果、海外から流入してくる感染症はほぼシャットアウト、手洗いやマスク等の感染防御対応で飛沫感染を起こす感染症も激減、と、非常に意味のある結果が得られたのではと思っています。


過去、小規模ではありますが似たような事例は多く、例えば2009年の「新型インフルエンザ」が流行した時などにもその他の感染症が減少した、ということがありました。


結局、従来から言われていた手洗い、うがいやマスクというのは結構効果があって、これだけ大規模にほとんどの人が実行すれば感染症を抑え込める、ということなのだと思います。さらに行動自粛と渡航制限まで加われば、過去から様々な啓発をしても、なお流行していたインフルエンザですら封じ込めてしまった、というのは今後の感染症対策に何かしら生かせるのではないかと考えています。


まあ、「新型インフルエンザ」の時もそうでしたが、「マスクは効果がない」とか「うがいは意味がない」とか言い出す人は必ずいますので、その人の影響力が強ければ破綻してしまう可能性があるのですけれど。


そういった方々は、マスクはウイルスを通過させるとか細かいことを言い出しますが、私自身はアバウトに封じ込められれば、そのアバウトに封じ込めるのが社会全体になれば、それでかなり効果は発揮されると考えています。マスクを通過するにはかなりの布の繊維をすり抜けなければなりませんし、ウイルス1個が貼りついたところで自然免疫でブロックされるわけで、体内に入るウイルスを感染成立が起こる数以下に抑えられればそれでいいのでは、と考えます。


一方で、性感染症に関しては前述のような対策はあまり意味をなさず、全く違う方向からのアプローチが必要なのだと思います。性感染症は妊娠出産といった次世代に影響するものが多いので、少子化が明確となっている現在、こちらも何とかしていかなければ将来マズいことになりそうです。人の意識にも関わってくる問題ですので難しいのだとは思いますが、行政の方々には何とか少しずつでも対策を講じていただければと思っています。



※国立感染症研究所の規約にHP上の図表に関しては出典を明記すれば引用可、とありましたので使わせていただきました。



駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。





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― 新着の感想 ―
よろ研さま。 インフルエンザも性感染症も、「行動変容」が不十分でもできたものは減少し、できなかったものは変わらないか増加した、と言って良いと思います。特に新型コロナ騒ぎの初期、2020年前半は全数の…
梅毒。女性が20代が多く、男性は30代、40代。 これは風俗で働く女性や、不特定多数の男性と関係を持つ女性が。3040の男性が女性を買うことで感染を増やすと言われていますね。 ここら辺は… もう戦国…
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