第九手
前回までのあらすじ
欲しい漫画が手に入らないことを知った月影。
更に……
*
「欲しい物が手に入らない上に災難に見舞われるってどういうことだああああああああああああ!! この後まだ何らかのイベントが待ってるのかよ!!」
「はははっ」
「『はははっ』じゃないよ!! 何か回避策はないのか!?」
「私の占いは必ず当たるので、この運命からは逃れられません」
「もうホント、占いなんてしてもらうんじゃなかった! い、いや信じてないけどね!」
「うるうる……」
「泣くなあああああああああああああ!! 泣きたいのはこっちだ!!」
「あ、でも、ラッキーアイテムは『大仏』みたいですよ」
「背負ってけってか!? あんなデカいの背負ってけってか!? 無茶言うな!! 俺が背負われる側だ!!」
「でも大丈夫です、私のことを助けてくれた月影さんなら」
「……根拠がよくわからんけど、まぁなるようになるだろ。……それじゃ俺はもう行くわ」
月影がその場を後にしようとする。……と、バサッ! と懐から何かが落ちた。
「きゃあああああああああああああああああ!!」
と、占い師の悲鳴。
「えー、今度は何ぃ?」
「そ、それは!!」
占い師が月影の懐から落ちた物に指を指す。
それは、月影が以前荒野の集落で爺さんから貰った「ピンク本」であった。
「それを一体どこで!?」
「いやこれは前にとある集落で爺さんから貰った本だけど……」
「それを私に譲って下さい! それは私が長年探し続けてきた『世界のピンク図鑑』なのです!!」
「…………ああ、うん、譲るよ。俺もエロ本だと思って貰ったら、なんか色んな色のピンクが載ってるだけで意味がわからなかったし……」
「ありがとうございます!! これで色んな色のピンクを知ることができます!!」
「うん……、ピンク好きなんだ……。なんか俺が前に助けた時より感謝されてるような……」
「そんなことありません!! あの時と同じくらい感謝してます!!」
「あ、そう……」
「そうだ! 私ばかり貰っては申し訳ないですよね? ちょっとお待ちいただけますか」
そう言うと、ガサゴソと何かを探し始める。
「つまらない物ですが、こちらをお受け取りください」
それは薄紅色の石だった。
「これは『ローズクォーツ』という石でパワーストーンの一つです。『恋愛運』をもたらす効果があると言われています」
「『恋愛運』ね……。あまりこういうのも信じちゃいないんだが、せっかくだから貰っとくわ。ありがとな」
こうして、月影は「ピンク本」を譲って、代わりに「ローズクォーツ」の石を貰った。
「それじゃそろそろ行くわ」
「はい! 今度は水那さんも連れて一緒に来て下さい!」
「ああ、連れてくるよ」
占い師がいつの間にか取り出した火打ち石をカチッ! カチッ! っと鳴らして月影を見送った。