第七手
「プリンが無い!」
「あるよ。それじゃ今日のお話はこれで終わりってことで」
「無いわ!!」
何やら火丸が冷蔵庫に入れていたプリンが消えたようだ。
すると、月影が口を開く。
「『うんこ漏らした』みたいな始め方してんじゃねーよ。甘い物ばかりじゃなくてたまには辛い物も食ってみろ。ホレ、ハバネロ」
「殺す気か!!」
「知らない内に食べたんじゃないのか?」
「そんな訳あるか。大体月影、お前が食べたんじゃないのか?」
「はぁ? 何でそうなるんだよ」
「開始二行で話を終わらせようとする辺りに怪しさを感じる」
「感じるか! 大体俺はコーヒーゼリー派なんだよ! いやプリンも好きだけどね!!」
「そういうところが一番怪しいんだがなああああああああああああああ!!」
「どこが怪しいんじゃあああああああああああ!! 俺が人様の物と間違えて食うわけねーだろおおおおおおおおお!!」
「うるせええええええええええええええええええええええええええええ!!」
「う゛えええええええええええええええええええええええええええええ!!」
「チッ! このままじゃ埒が明かねえ! 月影、俺と勝負しろ!!」
「ショウブ?」
「俺が勝ったら間違いを認めろ!」
「だから食ってねえって言ってんだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ほう、俺に負けるのが怖いのか?」
「テンプレみたいな挑発してんじゃねーよ。俺は別にそれでも構わないが」
「テンプラ? どうやらカラッと揚げられたいみたいだなああああああああああああああああああ!!」
「『天ぷら』じゃなくて『テンプレ』じゃああああああああああああああああああああああああ……
*
二人は家の隣にある空き地に移動した。
早速月影が首からぶら下げているクリスタルの様なネックレスが黒く光りだす。
「ギア発動!」
そう言うと、月影の白い髪が黒く変色し、右腕に黒いオーラが纏わりつく。
「行くぞ、月影ぇ! 『火球』!」
火丸が火の玉を月影に向けて放つ。
「『ストレート』!」
月影の真っ直ぐなパンチが「火球」を相殺する。
「まだまだぁ!! 『火球連射撃』!!」
今度はたくさんの火の玉を月影目掛けて発射。
月影が瞬時に拳と拳を合わせ、左腕にも黒いオーラを行き渡らせる。
「『エンドレスラッシュ』!!」
止むことのない無数の両腕のパンチで複数の火球攻撃を防ぐ。
(チッ! このまま防戦一方じゃお話になんねえ! 攻め込むか!)
月影が今の攻撃で発生した煙に紛れ、一気に火丸に近づく。
「『ストレート』!」
一気に近づいた月影の攻撃が火丸の体に直撃する。……が、
「効かねーなぁ。タフだからよぉ」
「なっ!?」
火丸の右手が炎に包まれる。
(ヤバいっ!!)
月影が瞬時に腕をクロスし防御態勢を作る。
火丸が炎を纏ったパンチを撃つ。
その攻撃に月影は大きく吹っ飛んだ。
「があああああああ!!」
「『大火球』!!」
火丸が今度は大きな火の球を投げつける。
「ぐっ! 『ブラックボール』!!」
月影の周りを黒い球が包み込む。
しかし、それも完全には防げず「大火球」は「ブラックボール」を割り、更に月影を吹っ飛ばす。
「ううっ……」
火丸がスマホを前にかざす。
「これで王手だ。召喚獣『フェニックス』!!」
月影の目の前に大きな火の鳥が出現した。
「キョエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」
フェニックスが大きな鳴き声を上げる。
その直後、月影目掛けて突撃を開始。
「このまま負けてたまるかよ!! 『ビッグバ……」
「やめなさい!!」
月影が技を放つ前に大きな声が響いた。
声の主は水那だった。
「全くアンタ達は目を離すとすぐに喧嘩して!! ちょっと来なさい!!」
水那が二人の首根っこを掴んで引きずる。
「いだだだだだだだだだだだだだ!!」
「ちょっと待て水那!! これには海より深いワケ……いや浅瀬程度だけど!!」
「言い訳は家で聞きます!!」
この後二人は家に連れてかれ、説教は二時間続いたそうな。
因みにプリンを間違えて食べていたのは金華でした。