第三十六手
前回、養蜂場を見学することになってしまった月影。
「すみません、目の前を大量の蜂がブンブンブンブン飛んでいて怖いんですけど……」
「はい! 『養蜂場』なので蜂は飛んでいます!」
「……まぁそうですよね……。いやそうじゃなくて、あのー、今回俺は見学じゃなくて――」
「あ、コラッ! また悠悟と寿子の喧嘩ね! いつも喧嘩はダメって言ってるでしょ! 人の話はちゃんと聞きなさい!」
「まずお前が人の話を聞けええええええええええええええええええ!!!!!!」
そんなやりとりを挟みながら月影の養蜂場見学は続く――
――
数時間後――
月影は見学だけでなく、養蜂場の仕事の手伝いもした。
一仕事終えた二人は養蜂場から少し離れた場所にある蜂蜜の販売所で会話に花を咲かせていた。
養蜂場のお姉さんは会話の中で、自らを「みつば」と名乗る。
「なんかすみません。見学だけじゃなくて仕事まで手伝ってもらっちゃって」
「ん? ああ、別に気にしてねーよ。それよりこの仕事はお姉さん一人で?」
「はい、何かと危険な仕事なので、あんまりやりたがる人がいないんですよね」
「でも、一人でここまで大きくして切り盛りしてるんだから流石だよ」
「ありがとうございます。私、子供の頃に食べた蜂蜜の味が忘れられなくて、それでこの仕事を始めました。今は色んな人たちに私の蜂蜜を食べてもらえて、それがすごく嬉しいんです」
「フッ……、そっか……」
月影が軽く笑みを浮かべた。




