第三十五手
居間の月影と水那の会話。
「蜂蜜?」
「そ! 『黄金蜂』から採れる『黄金蜂蜜』が甘くて濃厚ですごく美味しいんだって!」
「ふーん。……それで?」
「ちょっとここからは距離があるんだけど、その蜂蜜買ってきてくれない!?」
「えぇーっ!? なんで俺がぁ……」
「お願い! その蜂蜜で何か美味しいの作るからさぁ!」
水那が頼み込む。すると、別の方からも声が飛んできた。
「俺からも頼むよっ!!」
声のする方を見ると、それは金華だった。
「なんだ、お前も食べたいのか」
「うんっ!!」
「ったく、しょーがねーなぁ。わーったよ。……だがなぁ、『蜂蜜』ってのは『蜂のゲロ』だということをお忘れなく」
「「なんで今そんな話するっ!!!!」」
水那と金華が同時にツッコむ。
こうして月影は「黄金蜂蜜」を買いに行くことになった。
*
汽車に揺られること約一時間。
月影は目的地である「みつば養蜂場」に到着。
ひらけた場所に蜂が住んでいると思われる沢山の木箱が置かれている。
(どうやら場所はここで間違いないみたいだな)
少し離れた場所に人がいるのが見えたので、声をかけることにした。
「あのー、すみません」
「はい」
声をかけると、防護服を着た女性が返事をし、こちらへ振り返る。
「あ、すみませ――」
「見学者の方ですね!」
「え?」
「黒い服は危ないので、防護服をお貸しします! こちらに来て下さい!」
「いやそうじゃなくて――」
月影は防護服を着て、養蜂場を見学することになってしまった……。




