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CHECKMATE!  作者: ひややっこ
水那の耳かき
34/50

第三十四手

 昼過ぎ。今日は水那(すいな)が台所で漬物を作っていた。

 すると水那が、居間で飼い猫のさくらと(くつろ)いでいた月影(つきかげ)に声をかける。


「お兄、漬物に重石置きたいから、庭からいい感じの石持ってきてくれる?」

「ん? ああ」


 庭に出る月影。


「なんかいいのあったかな」


 ふと離れた所に石が置いてあるのが見えた。


「あ、コレでいいや」





「よくあったね、こんなにいい感じの石」

「前にビアンカから貰った石だよ」

「『ビアンカ』って前に依頼に来てた人?」

「ああ。あの時は『いらねぇ』って思ったけど、まさか役に立つ日が来るとはな」

「ありがとね。今はこんな物しかないけど、はい、コレあげる」


 月影は水那から「ポケットティッシュ」を貰った。


「フッ、まぁ貰っとくよ」


 水那が月影の耳の中を覗き込む。


「なに?」

「お兄、また耳掃除サボってるでしょ!」

「忘れてたんだ。あとでやるよ」

「ちょっとこっちに来て!」


 水那が月影の手を引っ張る。





 居間のソファ。


「ここに頭乗っけて」


 ソファに座った水那が膝に頭を乗せるよう(うなが)す。


「もう耳掃除ぐらい自分で出来るっての」

「いいから座って」


 手を引っ張り、半ば強引に右耳を上にして月影の頭を自分の膝に乗せる。


「それじゃ、耳かきするからあまり動かないでよ。痛かったら言ってね」

「ああ」


 「梵天(ぼんてん)」の付いた竹製の耳かきを取り出す水那。

 因みに「梵天」とは、(さじ)の反対側に付いたタンポポの綿毛の様な部分のこと。


 水那が耳かきを始める。

 すると、月影は耳かきを始めてものの数分で眠りにつく。


「グー、グー」


(もう寝ちゃった。午前中は仕事に行ってたし、よっぽど疲れてたんだ)


 それから(ひと)通り終え梵天で耳の中を掃除しようとする。が――


「あ」


 梵天がしなしなになっていた。


「あー、どうしよう。気付かなかったなぁ……。耳かき今コレしかないのに……」


「私に任せて!」

「え?」


 水那が困っているとどこからか声が聞こえてきた。

 声のする方を見ると、白い羽が生え、フワフワの梵天帽子を被り、耳かきを持った小さな妖精の様な何かが目の前を飛んでいた。


「不法侵入だよ」

「ズコーッ!」


 水那の唐突なツッコミにその場でズッコケる。


「細かいことは気にすんなよー!」

「いや、だって、え? 誰!?」

「私の名前は『梵天使(ぼんてんし)』! これでもれっきとしたモンスターなの!」

「へぇー、そうなんだ」

「私の能力は『耳かきをしているお宅を見つけること』! そしてもう一つは……」


 そう言うと、水那の持っている耳かきに向かって、梵天使が息を吹く。

 すると、なんということでしょう。しなしな梵天耳かきがあっという間に新品同様に早変わり!


「コレが私の能力です!」

「すごい!」

「まぁあまりこの能力を使い過ぎると、今度は耳かきが売れなくなるのでほどほどにしていますが……」

「その辺りは気を遣ってるのね……」

「今回は特別ですよ! 次からは一万円取りますからね!」

「高っ!!」

「さぁ早く彼氏さんにそれを使ってあげるのです!」

「う、うん。『彼氏』じゃなくて私の『お兄ちゃん』なんだけどね……」


 月影の耳の中を梵天でごしょごしょする。そして、仕上げに耳に「ふー」と息を吹く。


「はい、おしまい。反対側がまだ残ってるけど、あとでいっか。梵天使ちゃんもありがとね!」

「いえいえー! お役に立てて良かったです!」

「お兄もいつもありがとう」


 月影が水那の膝の上で気持ちよさそうに眠っていた。

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