第三十手
可もなく不可もなくいつも通りの天気。月影はこの日、とある行列に並んでいた。
「列に並んで待つの苦手なんだよなぁ……。でも依頼だからしょうがねぇ」
今回の依頼は限定百個の「ウルトラシャンパンゴールドヨーヨー」を手に入れる事!
「手に入るか不安だなぁ……」
*
ニ時間後――
「お客様で最後の一個になります」
「あー、ホントォ。……それじゃ、これお金」
「ちょっと待てヨオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
月影がおもちゃ屋の店内で店員にお金を出そうとすると、どこからか大声が聞こえてきた。
「んだよ。すんなり行かねーなぁ」
声のする方へ顔を向けると、帽子を被り、ダボダボのパーカーを着た青年が立っていた。
「そのヨーヨーは俺のだヨー!」
「何言ってんだ、おいぃー。お前より先に並んでたんだから、俺のだろ」
「アンタより先に列に並んでたのは俺だヨー! 並んでる時にうんこ行きたくなったから列から外れたんだヨー! つまり、先に列に並んでた俺んだヨー!」
「うんこ我慢出来なくて列から外れたんなら無効だろ。欲しいモンがあんなら、うんこ漏らしてでも手に入れろよ。とにかくコレは俺のだ」
「ハッ! 笑わせんじゃないヨー! 俺の名前は『揚洋祐』! ヨーヨーの大会で何度も優勝してんだヨー! アンタもヨーヨーやってんなら名前くらい聞いたことあんだヨー? このヨーヨーは俺にこそ相応しいんだヨー!」
「別に笑わせるつもりはねーよ。それに俺はヨーヨーなんてやったことないからお前のことも知らん」
「俺を知らない!? ヨーヨーをやったことがない!? じゃあ箱から出さずに転売するのが目的なんだヨー!? この間も『メンコマスター』が転売されてたヨー!」
「知るかよ。こっちは依頼主に頼まれて買いに来てるだけだ。それになんだ『明太子マスタード』って……」
「依頼ぃ?」
「俺は何でも屋をやってる『黒木月影』ってモンだ。今回の依頼はこのヨーヨーを依頼主に届けることなんだよ。とにかく今回は諦めろ」
「諦めきれるかヨオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!! 俺はずっとこのヨーヨーを手に入れるのを楽しみにしてたんだヨオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「でもうんこで列から外れたんだろ?」
「うるせぇんだヨオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!! とにかく表に出て俺と勝負しヨーヨー!!」
「ったくめんどくせーな。……店員さん、それ後で買いに来るからちゃんと取っといてよ」
こうして、二人は店内から外へ出た。
次の話はこの後投稿します。




