第三手
前回までのあらすじ
じじいとほぼコント。
*
「で、結局財宝はいらんの?」
「いらないよ。俺はただ棒っ切れ一本あげただけだ」
「それじゃわしの気が収まらん! ちょっと待っとれ!!」
そう言うと、爺さんは引き出しを開け、中にある物をどんどん外へ放り投げ月影にあげる物を探し始める。
「爺さん、それ僕の引き出しだよ!」
「ええい、黙っとれペペロン! これはわしの戦いなのじゃ!!」
「いやそうじゃなくてー!!」
すると、爺さんが引き出しから一冊の本を取り出す。
「『ピンク本』じゃ。お若いの、これで手を打ってくれんかのう」
「人の私物を取引に使うなああああああああああ!!」
月影は二秒ほど考え込んだ後、こう答えた。
「いいでしょう!」
「よくなああああああああああああい!! 僕の私物でしょうがソレ!!」
「まあまあペペロンや。財宝ならいくらでもある。今度代わりのピンク本を一緒に買いに行けばいいじゃないかあ」
「買いに行くなら自分一人で行くわ! 差し出すならアンタの私物を差し出せばいいでしょうが!!」
こうして、なんやかんやで「木の棒」と「ピンク本」の交換が成立した。
*
ズシンッ!ズシンッ!
突然大きな地鳴りが聞こえてきて、音がする度に月影達三人のケツが浮き上がる。
「なんだぁ、爺さん。今日は集落で祭りでもやるのか?」
「いやそんな予定は入っておらんがのう」
そう言って、爺さんが外を見た。
「ギョッ!?」
「どうした爺さん」
月影も外を見た。
「なっ!? アレは……『ゴーレム』か!!」
大きな岩の怪物がこちらに向かって歩いてきている。
次の瞬間、ゴーレムが家を破壊し始めた。
ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!
「うわあああああああああああああああ!!」
「きゃあああああああああああああああああああ!!」
辺り一面に断末魔が響き渡る。
「この集落はもうダメじゃ! 早く逃げるんじゃよ!!」
爺さんが風呂敷に財宝を詰め終わり振り返るとペペロンがいないことに気付く。
「ペペロン!!」
「爺さん、あそこだ!」
月影が指を指した先にペペロンがいた。
「やめろおおおおおおおおおおおおおお!! この先は僕が進ませないぞ!!」
なんと、ゴーレムの前で手を広げ、この先へ進ませまいと手を広げていた!
「ペペロオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
爺さんの叫び!
ゴーレムのパンチがペペロンに迫る!
「ったく、しょうがねー野郎だ」
月影が体全身でペペロンに飛び込みゴーレムの攻撃を間一髪のところで躱す。
「月影さん! 危ないので逃げて下さい!!」
「あぶねーのはお前だよ。無茶しやがって。少しは俺を頼れよな」
「でも……」
「安心しろ。うんこは漏らしてるが、多少なり腕に自信はある。……パンツ一枚分はきっちり働いてやるよ」
その時、月影が首からぶら下げているクリスタルの様なネックレスが黒く光りだす。
「ギア発動!」
そう言うと、月影の白い髪が黒く変色し、右腕に黒いオーラが纏わりついた。
ゴーレムが月影目掛けてパンチを放つ。
が、右手を広げてその攻撃を受け止める。
「一撃で終わらせてやる」
そう言うと、月影が走り出し、ゴーレムの胸元辺りまで飛び、叫んだ。
「チェックメイト! 『ストレート』!!」
ドォン!
真っ直ぐに力強いパンチをぶつけゴーレムはその場に倒れた。
*
それからしばらくし、陽はすっかり暮れかけていた。
「それじゃ、俺はもう行くわ」
「月影さん、本当にありがとうございました!」
ペペロンが月影にお礼を言う。
「俺も世話になったし、ま、いいってことよ」
「また来てください!」
「ふぉっふぉっふぉ。そうじゃな。またいつでもきんしゃい」
「ま、気が向いたらな」
軽く笑みを浮かべその場を後にする月影。
村人達がそれを見送る。
「じゃあなー!」
「今度はうんこ漏らすなよー!」
「ちゃんとオムツ履いてこいよー!」
「ウンコオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「うるせえんだよ貴様らあああああああああああああ!! 最後まで失礼だな!!」
そうツッコむと月影は再び広大な荒野を歩き出した。
「うーん、なぁんか忘れてる気がするけど、ま、いっか」