第二十一手
月影宅。
この日、月影は庭で少女が持ってきた自転車のパンク修理を行っていた。
「ほら直ったぞ、お嬢ちゃん」
「わー、すごーい! もう直ったの!?」
「ああ。大切にしてやりな」
「うん! あ、そうだ」
そう言うと、少女が自分の財布からお金を出そうとする。
「金はいいよ。サービスだ」
「ありがとう! お兄ちゃん!」
「どういたしまして」
その後、月影と水那が少女を見送った。
「優しいね、お兄」
「ガキから金取る程生活には困っちゃいないからな。……さてと、家に入るか」
「アノー、スミマセーン。ココハ『何デモ屋』サンデショーカ?」
カタコト喋りで中身がはち切れんばかりの大きなバックパックを背負った一人の金髪の女性が呼び止める。
「そうですけど、何か仕事の依頼ですか?」
「ソウデース!!」
「それじゃ、話を聞くんで中入ってください」
*
「それで、依頼は何ですか?」
居間で早速月影が女性に聞き始める。
「ワタシハ『ビアンカ』言イマス! 所謂『トレジャーハンター』ヲシテイマース! ソレデ今回オ願イシタイノハワタシノ仕事ヲ手伝ッテホシイノデース!」
「さいですか。それで何の仕事を手伝えば?」
「『ギアスタル』ノ採掘デース!」
「『ギアスタル』!?」
「お兄、『ギアスタル』ってもしかして……」
「ああ、俺が身に付けてるこのネックレスの石がそうだよ」
「ソレデス!! ソレヲワタシニ寄越シナサーイ!!」
ビアンカが月影に飛び込んでくる。
「渡すかああああああああああああああああああああああああ!!」
月影がそれを避ける。
「これがないと俺は戦えないんだよ! そう簡単に渡せるか!!」
「オー、ソレハ失礼シマシタ。ソレニシテモ『戦エナイ』トハドウイウコトデショーカ?」
「えー、ここで説明入れるのー? ……まぁいいや。俺は生まれつき『魔力』が作れない体なんだよ。この『ギアスタル』は『ギア』と呼ばれる力を発生させて、その間だけ俺に魔力を宿す」
ここで「魔力」の説明。
「魔力」とは、技を使う際に必要なエネルギーのこと。ゲームでいうところの「MP」のようなものであり、多くの技はこのエネルギーを消費することで出すことができる。
そして、「ギア」にはもう一つ効果がある。
「『身体能力の上昇』。俺は生まれつき他の人間よりも体が弱い。とは言っても病気のことじゃない。……例えば、少し殴られただけで他の人間よりも大ダメージを喰らうし、少し高い所から飛び降りただけで骨が折れちまう。ところが『ギア』を発動していれば、その間だけは攻撃力を上げ、丈夫な体も得られるってわけだ」
「グーグー」
ビアンカがいびきをかいていた。
「寝るなああああああああああああああああ!! そんなに長い説明じゃなかっただろ!!」
「オー、コレハ失礼!」
「アンタどこまで聞いてたんだよ!!」
「『エー、ココデ説明入レルノー?』ッテトコロデス!」
「それ一番最初!!」
「デモスゴイッテコトハ伝ワリマシタ!」
「何も伝わっとらんわ!! ……まぁいい。コホン、それで、その採掘場所は?」
「ココカラ汽車デ数時間ノ場所デス!」
「数時間ね……。今日は時間が時間だから明日でもいいかい?」
「ソレハモチノロン構イマセン!」
「それじゃ、明日の朝にでも出発しますか。……水那、客間空いてたよな?」
「空いてるわよ」
「そうか。じゃ、ビアンカさん、今日は客間に泊まってください」
「アイアイサー!」
こうして、出発は翌日となった。




