第十八手
「店の前で『うんこ』ねえ……。犯人に心当たりは?」
「あるわけないじゃないですか!」
「『うんこ』の形ってどんなんでした?」
「それ聞いて何か意味あるんですか!?」
「いや一応ね。因みに俺じゃないよ?」
「別に疑ってません!」
月影が聞き取りをしながらメモを取る。
「今の会話で何かメモすることあったんですか!?」
「ただ書き込んでいるフリをしただけです」
「何の意味があるんですかーっ!!」
「ふむ……」
月影が顎に手を当てて考え込む。
ふと、窓の外を見た。
「ん?」
外の庭に茶色い物体が置いてあるのが見えた。
それは――――――――――「うんこ」であった。
「あーあー、さくらが漏らしたのか。寺島さん、申し訳ないけど、ちょっと待ってて」
処理の為に月影が庭へ出る。
「ったく、猫砂があるんだからそこで済ませればいいのに、よっぽど我慢できなかったのか? ご丁寧に『巻きグソ』だしよー」
月影がふと数メートル先を見た。
すると、そこにも「うんこ」。
更に先にも「うんこ」。
更に先の先にも「うんこ」が続いている。
「さくらあああああああああああああああああああああああ!! 人間をバカにしおってからに!! 餌を明日まで三分の二程度に減らすぞ!! ……………………ん? 待てよ……」
そこで月影は考えた。
(朝、庭を見た時は『うんこ』なんてどこにも落ちていなかった。そしてこの量の『うんこ』、とても猫一匹ができる量じゃない! ということは……)
――――キュピーン!
「ハッ!」
月影の頭の中で何かが閃き、改めて依頼人の瑠璃に尋ねる。
「寺島さん、一つ聞いていいかい?」
「はい」
「店の前に落ちていた『うんこ』の形は『巻きグソ』じゃなかったか?」
「だからそれを聞いて何の意味が――」
「大事なことなんだよ!!」
「は、はぁ……、そうですけど……」
「犯人がわかりましたよ」
「ええっ!?」
「犯人は…………『火丸』! アイツだよ!!」
「そんな訳あるかあああああああああああああああああああああああ!!」
水那がツッコむ。
「なんで仲間を疑ってるのよ!!」
「いやだって、木也、金華、土壱の三人は朝から学校に行ってるし、俺と水那は家事で忙しかったからこんなことできないだろ。だから消去法で犯人は火丸だよ!! まさかこんな器用なことができる奴だとは思わなかったけどな!!」
「そんなの証拠にならないわよ!! 大体この家に住んでる人間が犯人とは限らないでしょ!!」
「名推理だと思ったんだが、アイツが犯人じゃないのか……。チッ!」
「今の舌打ちは何!?」
「じゃあ犯人は誰?」
「それをアンタが考えるんでしょーが!!」
「振り出しか……。ふむ……」
月影が再び顎に手を当て考え込んだ。
すると、庭から大きな声が聞こえてきた。
「ゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! なにさらしてけつかんねん!!」
「ん?」
見ると、そこには茶色い巻きグソうんこに顔が付き、手足の生えている何かが立っていた。
「アレは……『うんこマン』か!」
「ほう、俺を知っているとは光栄だ! だがなぁ!! 俺がせっかくばら撒いた『うんこ』を片付けたことは絶対許さねぇ!!」
「お前の目的は何だよ」
「目的? そんなモン決まってんだろ!! この世界を『うんこ』でいっぱいの『うんこパラダイス』にするんだよ!! それをお前は指をくわえて見ているんだなぁ!! もう邪魔するんじゃねーぞ!! あばよっ!!」
そう言うと、うんこマンは何処かへと姿を消した。
月影が口を開く。
「寺島さん……、犯人がわかりました」
「知ってます」




