第十三手
穏やかな風が流れる昼下がり。
買い物帰りの月影と金華が家へと歩を進めていた。
そんな時、金華が何かを見つけて指を指す。
「兄ちゃん、アレ!!」
「ん?」
道の脇に「拾ってください」と書かれた段ボール箱。
その段ボールに入っていたのは犬でも猫でもなく「蟻」であった。
とは言ってもあの小さな蟻ではない。
それよりも遥かに大きく、ボクシンググローブを付けた四~五頭身ぐらいのモンスターである。
「飼い主探してるのか。早く見つかるといいな」
「そうだねーっ!!」
そう言って、月影と金華はその場を後にする。
「ギュイイイイイイイイイイイイイイ!!」
蟻のモンスターが何やら怒っている。
「えー、何、無視しちゃいけない流れ?」
「きゅうぅ~……」
ぎゅるるるるるるるるるるる……
蟻のモンスターのお腹が鳴る。
「なんだ、お前。ハラ減ってるのか。……しょうがないな」
すると月影が持っていた白い箱を開け、とある物を差し出す。
それは「ショートケーキ」だった。
蟻のモンスターがそれを両腕で受け取るとガツガツと嬉しそうに食べ始めた。
「兄ちゃん、こいつ多分『ノックアント』ってモンスターだよっ!! 世界一弱いモンスターってこの間テレビで紹介されてたっ!!」
「へぇ~」
「ギュイイイイイイイイイイイイイイ!!」
ノックアントがまた怒り出す。
「あははっ!! ごめんごめんっ!!」
「ははっ。まぁ早く飼い主が見つかるといいな。……それじゃそろそろ行くか」
「うんっ!! じゃあなっ!!」
そう言って、月影と金華はその場を後にする。
だが、今度はノックアントが月影と金華の服の裾を掴んで止める。
「だだだだだ!! わかったから!! いやわからんけど!! 今度は何っ!?」
ノックアントがファイティングポーズをとる。
月影が少し考え込んだ後、「あっ!」と言い、ポケットの中からスマホを取り出す。
そしてパシャリッ! と撮影。
「ほらよく撮れた」
月影がそれをノックアントに見せる。
「ギュイイイイイイイイイイイイイイ!!」
「ぶへぇ!! 違うのおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ノックアントが強力なアッパーを月影に浴びせた。
「多分こいつ、兄ちゃんと戦ってほしいんだよ!」
「え、そうなの?」
「きゅい!」
コクリと首を縦に振る。
「はぁ~、めんどくさいけど、それでお前の気が晴れるなら相手してやるか」
こうして月影はノックアントの相手をするべく、近くの公園へと移動した。
*
近所の公園。
月影とノックアントが向き合った。
金華はそれを観戦している。
月影が首からぶら下げているクリスタルの様なネックレスが黒く光りだす。
「ギア発動!」
そう言うと、月影の白い髪が黒く変色し、右腕に黒いオーラが纏わりつく。
(ま、手は抜いてやるか……)
「行くぞ!」
「ギュイ!」
お互いに走り出す。
ドカッ!
そして、拳と拳がぶつかり合う。
こうして、月影とノックアントの戦闘が始まった。




