第一手
「うんこ漏らした」
広大な荒野で一人の男が呟いた。
男の名前は「黒木月影」。
白髪で上下シャカシャカの黒いジャージ姿、クリスタルの様なネックレスを首からぶら下げ、サンダルを履き、どこからか拾ってきたであろうそこそこ丈夫そうな木の棒を杖代わりにして歩いていた。
この男が一人広大な荒野を歩いている理由、それは……
「『大倉マン』の最新刊、本当にこの先の集落にあるのか? 糞の後始末もどうすりゃいいんだ」
そんな事をぶつぶつ呟きながら荒野を一人細々と歩いた。
*
それから数十分程歩いたところでようやく目的の集落へと辿り着く月影。
早速行動に移す!
「すみませーん! 紙とパンツありませんかー!」
声を上げるが、村人達はそそくさと月影の周りから離れ、みんな家の中や物陰に隠れ様子を窺う。
「何だアイツ、くっせー!」
「ウイルスでも持ち込んだのか!?」
「いやあの匂いは……う○こよ!うん○だわ!」
「ナンカヤダ。ナンカヤダ」
等とひそひそ話を始めた。
「何だあ、この村は……。ひょっとして……………………俺の歓迎パーティーでも始めるのか?」
「「「「「違うわああああああ!! お前が臭すぎるんだよおおおおおおおお!!」」」」」
多くの村人が同時にツッコんだ。
因みにこの集落でここまでの大声が出たのは十九年前、初めてパソコンが来日してきた時以来である!
「ふむ。だから紙とパンツを……」
「……ありまぁす!」
「む?」
「紙とパンツはここにありまぁす!!」
月影が声のする方へ顔を向けると、十四~五歳ぐらいの青年がこちらへ走ってくる。
「何て馬鹿な事を!」
「ペペロン止まれーっ!! 命が惜しくないのかーっ!!」
「うわああああああああああああああ!!」
「モウ終ワリダヨ、コノ集落」
等と多くの村人が叫んだ!
「うるせえぞ、モブ共おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
今のは月影のツッコミ。
「ゼェゼェ……」
気が付くと先程の青年が月影の元へと辿り着いていて息を切らしていた。
「お、おい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。それよりコレをおぼろろろろろろろろろろ!!」
青年が吐瀉物を口から吐き出した。
「きゃああああああああああああああああああ!!」
「ああああああああああああああああああああ!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「臭カッタカラダロウネ、ゼッタイ」
多くの村人が絶叫した!
「だからうるせえぞ、モブ共おおおおおおおおおお!! つかさっきから誰だ、カタコト喋り!!」
次回へ続く!