【自称アンタレス星人】 今日は波動高めで 4
食料を補充するために久しぶりに小型宇宙船から降りた。ついでに、宇宙船の点検もしてもらうことにした。買い出しに街へ出れば、ベテルギウスでは、その日、大きな祭りが行われていた。ベテルギウスはオリオン族がほとんどで、血気盛んな彼らには中性的な姿で接することにしている。
。。。男の格好で挑まれてもめんどくさいし、女の格好で絡まれても困るしね。
気軽に入ったカフェでうたた寝をしていると、大きな女性戦士に声をかけられ、その弟子?に手を繋がれ連れ回された挙げ句、格闘試合を見る羽目になるとは思わなかった。お陰で、点検を終えた船に戻った夜にはぐったりとしていた。格闘技とサイキックで勝った少年は、明後日の試合に進むことになった。
「明後日も是非見に来てください!」
という誘いに、もうこの星を立つから。。。、応援してるから頑張ってね。と答えると少年は残念そうにした。
。。。久しぶりに美少年を見たね。ふふふ。幸運だった。でも、人に関わるのは勘弁だね
デスクネットの情報を見ながら、カップに手をかけた。新着メールを開くと、地球プログラム候補生の招集についてという件名のメールを選び開く。次回の招集はアンドロメダ星で行われるようだ。
カップのハーブティーをぐいっと飲み込むとバスルームへと向かった。白の衣をハラリと脱ぐと
「洗濯いたします」
家事ロボットが衣服を受け取りに来た。
「よろしく」
と一言伝えて渡すと、バスルームの扉を開けた。
髪の毛を束ね湯に浸かる。手足を伸ばすと心地よくなった。
ふと見上げると、満点の星空
ここはどこだろう
湯に浸かっていたはずなのに。。。!?
服も着ている。星空から目をそらし、辺りを見回すと、草原の上に座っていた。
「ねぇ!」
不意に声がかかる。後ろを見ると、昼間の少年がいた。
「あなたの名前を教えてよ」
強力な力で彼から目が離せない。とっさに名前を答えてはいけないと警鐘がなる。
。。。サイキック!すごい力。十歳とは思えない
「こういうのはね。歳は関係ないんだよね。ねぇ、名前を教えて」
。。。思考をも読む力があるらしい。めんどくさい
少年が手を伸ばすとその手を掴み、反対にぐいっと引っ張り転がした。お互いの力が弾けて、その反動で中性的な姿から少女の姿に変わる。色白で長い黒髪、長いまつげ、形の良い鼻、赤い唇。少年を体重で抑え込みながら、
「わたしの名前は長くて覚えてない。でも、ミルって呼ばせてあげる」
そう耳元で言うと、少年は真っ赤になって呆然とした。少女に姿を変えた人物が、誰なのかを頭の中で整理しているようだった。
「。。。アンタレス星人!」
少年は回答出し、ミルは、正解と答えた。ミルは立ち上がるとバイバイと手を振った。
バッシャーン
大きな音がバスルームに響いた。バスルームに入ったときは中性的な姿だったのに、少女の姿になっている。すでに長い年月を生きているミルにとっても、滅多にない驚く体験だ。
。。。オリオン族のサイキックって、すごいな
などと感動する。
少年がミルの名前を知ったところでどうすることもできないだろう。そう、思っていた。3週間後に母船から連絡が来るまでは。。。
そう、少年は突止めたのだ。ミルという名前だけを頼りに自分に連絡する手段を。。。