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第五話


 これは、とある異世界の物語である。


 その世界は戦隊ヒーローが現実に存在し、そして――――








「コロコロコロ! 我はコロナ男爵! 再び人間どもに恐怖を‼」

「「キー……」」


 人々が泣き叫び、逃げ惑う中で。

 悪の組織ガイチューンの元・大幹部が数多のガイジャーと町を闊歩する。


 だが、そんな彼らの前に立ちはだかる者たちが。


「待てぃ! そうはさせんぞっ!」


「あの人、前回はコロナ伯爵だったよね? なんで男爵に……」


「イエロー黙れっ! それは触れてやるなっ!」


「……ぴえん……」


 涙するコロナ男爵を気遣い、敢えて名乗り始めるレッドたち。


「あ、赤き炎の戦士! レッドフレア!」

「青き水の戦士! ブルーアクア!」

「緑の風の戦士! グリーンエアー!」

「金色の大地の戦士! イエローガイア!」

「黒き闇の戦士! ブラックコスモ!」


 一瞬、微妙な空気になったが。

 今回もレッドのおかげで、ヒーローたちはなんとか名乗りを終える。


「「我ら! 五人揃って五色戦隊カラーレンジャー‼」」


 背後の爆発も決まり、レッドはホッと胸を撫で下ろす。


「……ぴえん……」


「お、おのれ、ガイチューン! またも町を大混乱に陥れようと」

「ぜ、前回はあまりの強さに全く叶わなかったぞ、コロナ伯爵!」


「……もう伯爵じゃないもん……」


「で、でも、伯爵級の力を持っている強敵よね! コロナ男爵は!」

「そ、そうそう! むしろ伯爵以上……侯爵、いや公爵級の相手だよ! コロナ男爵最強! よっ、大幹部‼」


「…………コロコロコロコロ! そうだろうそうだろう! 我が手で今回こそ葬ってやるわ、カラーレンジャー‼」


 ()()しょ()によってやる気を取り戻したコロナ伯爵……改めコロナ男爵。

 どうやらパワハラなどが原因で降格処分となったようだが、力を失ったわけではないので強敵には違いない。


 覇気のないガイジャーたちは、渋々カラーレンジャーに向かって襲い掛かる。



「くらえっ! レェェェェッド、クラァァァッシュ‼」



 赤い光を纏った剣戟が放たれ、数名のガイジャーが戦闘不能となる。



「いくぞっ! ブルゥゥゥゥ、スピアァァァッ‼」



 目にも止まらぬスピードの槍技が、ガイジャーの何名かを吹き飛ばす。



「決めるわよっ! グリィィィィン、エナジィィィィッ‼」



 グリーンが放った愛の波動が、複数回に分けて合計三十数名のガイジャーを蹴散らした。


 頭にハチマキを巻いたハチマキ・ガイジャー略して“ハッチャー”数名が整理券を配っていたが、数多くのファン・ガイジャー……略して“ファンジャー”たちとともに吹っ飛ばされる。

 それでも整理券をしっかり配り終えてから吹っ飛ぶあたり、ハッチャーたちは責任感があるようだ。



「うおぉぉぉ! イエロー手加減ビーム!」



 今回も限界まで手加減されたイエローのビームによって、二十数名のガイジャーが戦闘不能になる。



「これで! 終わりだぁっ‼ ブラァァック、シュータァァァ‼」



 ブラックが放った光線銃が、ガイジャー十数名を吹き飛ばして戦闘不能にした。



 そうして倒されたガイジャーたち。

 残るガイジャーたちも五人の連携によって戦闘不能に追い込まれる。


 やがて全てのガイジャーが倒れ、あとはコロナ男爵だけである。


「なかなかやるな。では最強の我、コロナ男爵が相手をしてやろう!」


「いくぞ、みんな! 油断するなよ!」


 レッドの掛け声をきっかけに、四人は四方へと散開する。

 そしてイエローはそれっぽい動きで戦闘から実質離脱する。



「よし、ガイジャーたちよ、避難開始! 訓練通りにお願いします!」


「「キー、キー」」


「……避難完了だな? では食らうがいい! 必殺……憂瑠素(ウイルス)感染嵐霧!」



 コロナ男爵が放った灰色の霧が周囲に広がり、それに触れたカラーレンジャーたちが苦しみ始める。

 前回と違って部下たちを避難させるあたり、組織の上層部から厳しく指導されたのだろう。それをカラーレンジャーも律儀に待つ。


「ガッ⁉ ガアアアァァァ⁉」


「我が必殺技は防御不可能! その弱った体で戦えるかな?」


「くっ⁉ だ、だが、俺たちには新たな力が!」


 前回、お披露目に失敗した彼らの新たな力。

 今回こそと言わんばかりに、彼らの武器が凄まじい光を放ち始める。


「な、なにっ⁉ この力は……!」


「俺たちは……負けないっ! 貴様らガイチューンの好きには、させないっ‼」


「おのれっ! 小癪なァ‼」


 コロナ男爵の必殺技で倒れていたレッドたちだが、スクッと立ち上がると、光る武器を高く掲げた。

 するとそれに反応して、彼らの戦闘服(ヒーロースーツ)が七色の光に包まれて形を変えていく。



「バージョンⅡ! スーパーカラーレンジャー!」


「……ちょっとダサくね?」


「イエロー、それ以上何か喋ったらコロナ男爵より先に倒す!」


「み、見た目が変わったところで我に勝てると思うなァ! ハアァァ!」



 前回に引き続き、強力なエネルギー波を放つコロナ男爵。

 だがそれはカラーレンジャーの新スーツの前に弾かれ、彼らに何のダメージも与えられなかった。


 次は、カラーレンジャーたちの番である。



「くらえっ! レェェェェッド、ハイパァァソォォド‼」


「いくぞっ! ブルゥゥゥゥ、ネオォォスピアァァァッ‼」


「決めるわよっ! グリィィィィン、グラァァンエナジィィィィッ‼」


「イ、イエロォォ手加減ビィィム!」


「これで、終わりだぁっ‼ ブラァァック、ディメンショォォンキャノォォン‼」



 五人が放った新必殺技がコロナ男爵に命中し、極大のダメージを齎す。

 イエローだけは前と同じ必殺技をそれっぽく言っただけだが、今回はレッドに睨まれていないのでこれでOKのようだ。


「コロォォォォォォォ⁉」


 コロナ男爵の悲鳴が響き、大爆発が戦いの決着を知らせた。

 爆発を背に、五人が決めポーズを取って何処か遠くを見つめる。


「よしっ! やったか⁉」


 だが、コロナ男爵はまだ倒れてはいなかった。

 満身創痍ながら、ギリギリで立っていたのだ。


「くっ! ならばもう一度、新必殺技だ、みん……」


「フハハハハハハハ! そこまでだ、カラーレンジャー」


「だ、誰だっ⁉」


 突如聞こえた声にレッドたちが戸惑っていると、黒い靄がコロナ男爵の前に集まり、そして()()()()が現れた。


「お、お前はっ⁉」


「随分と部下を可愛がってくれたようだな、カラーレンジャーよ」


「ホモサピ総帥っ‼」


 現れたのは、悪の組織ガイチューンの総帥。

 コロナ男爵とは比べものにならない強敵を前に、カラーレンジャーは蛇に睨まれた蛙のように身動きできなくなる。


 最強の相手に、新たな力を得てもなお、彼らは為す術なく。

 カラーレンジャーはこのままやられてしまうのだろうか。



「……あっ! あの時の人だ」


「ひぃッ!? きょ、今日はこのくらいで勘弁してやるッ! 逃げ……もとい、帰るぞコロナ男爵! 急げッ‼」


「え? あ、はい……」



 しかしながら――――イエローと目が合った瞬間、ホモサピ総帥はコロナ男爵とともに靄の中に消えてしまった。


 こうして? カラーレンジャーたちは、今回も平和を守ったのだった。



「……イエロー?」


「いや待ってレッド! 今回はオレ、本当に何もしてない!」


「……イエロー?」


「ま、前に色々博士を助けた時に、あの人と会ったことあるってだけだよ! 本当に今日は何もしてないってば!」


「……イィィエェェロォォォォ?」


「オレは無実だ! 冤罪だぁぁぁぁぁ‼」








 ……謎は深まるばかり。


 だが、その謎は番外編を読めばわかるぞ!

 とにかく頑張れ、スーパーカラーレンジャー! 負けるなホモサピ総帥!



明日も投稿します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] グリーンに倒されたがって列を作る戦闘員たちが笑える(^o^; パターン化しながらもちょっとずつ変化して行く展開が読みやすく、面白いです(^o^)
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