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第四話


 これは、とある異世界の物語である。


 その世界は戦隊ヒーローが現実に存在し、そして――――








「コロコロコロコロ! 我こそはガイチューン四天王の一人、コロナ伯爵である! 人間どもを恐怖に陥れてやろうではないか!」

「「キー!」」


 人々が泣き叫び、逃げ惑う中で。

 悪の組織ガイチューンの大幹部が数多のガイジャーとともに町を破壊する。


 しかも今回は、人々が次々に倒れていくではないか。

 コロナ伯爵の能力は、どうやら遠距離から人々に作用するものらしい。



 だが、そんな彼らの前に立ちはだかる者たちが。



「待てぃ! そうはさせんぞっ!」


「き、貴様らは!」


「赤き炎の戦士! レッドフレア!」

「青き水の戦士! ブルーアクア!」

「緑の風の戦士! グリーンエアー!」

「金色の大地の戦士! イエローガイア!」

「黒き闇の戦士! ブラックコスモ!」


 今回もレッドのおかげで、イエローの名乗りもバッチリだ。


「「我ら! 五人揃って五色戦隊カラーレンジャー‼」」


 背後の爆発も決まり、レッドは今回も満足気に頷く。


「現れおったな、カラーレンジャー!」


「「キー‼」」


「おのれガイチューン! 罪のない人々をこんな目に! 許さんぞっ‼」


 周囲に倒れる人々を目にして、レッドは怒りを露にする。

 動き出したガイジャーたちに向け、五人はお決まりの技を放つ。



「くらえっ! レェェェェッド、クラァァァッシュ‼」



 赤い光を纏った剣戟が放たれ、数名のガイジャーが戦闘不能となる。



「いくぞっ! ブルゥゥゥゥ、スピアァァァッ‼」



 目にも止まらぬスピードの槍技が、ガイジャーの何名かを吹き飛ばす。



「決めるわよっ! グリィィィィン、エナジィィィィッ‼」



 グリーンが放った愛の波動が、十数名のガイジャーを蹴散らす。


 今回もグリーンの前には多数のファン……もといガイジャーたちが集まってペンライトを振っていた。

 コロナ伯爵が何も言って来ないあたり、どうやらガイチューン上層部も黙認しているファンクラブのようだ。



「うおぉぉぉ! イエロー手加減ビーム!」



 今回も限界まで手加減されたイエローのビームによって、二十数名のガイジャーが戦闘不能になる。



「これで! 終わりだぁっ‼ ブラァァック、シュータァァァ‼」



 ブラックが放った光線銃が、ガイジャー十数名を吹き飛ばして戦闘不能にする。



 そうして倒されたガイジャーたち。

 残るガイジャーたちも五人の連携によって戦闘不能に追い込まれる。


 やがて全てのガイジャーが倒れ、あとは幹部のみとなった。


「なかなかやるではないか? ではガイチューン大幹部、コロナ伯爵が相手をしてくれよう!」


「いくぞ、みんな! 今回の相手は大幹部、強敵だ! 油断するなよ! あとイエローはいつも通り分かってるな⁉」


「あっ、はい」


 レッドの掛け声をきっかけに、四人は四方へと散開する。

 そしてイエローはそれっぽい動きで戦闘から実質離脱する。



「食らうがいい! 必殺……憂瑠素(ウイルス)感染嵐霧!」



 コロナ伯爵が放った灰色の霧が周囲に広がり、それに触れた者たちを苦しめる。

 周囲に倒れていた人々も、再び影響を受けたのか苦しみの声をあげている。


「ガッ⁉ ガアアアァァァ⁉」


「コロコロコロコロ! 我が必殺技は防御不可能! その弱った体で、はたして町の人間たちを救うことができるかな⁉」


「くっ⁉ なんとかしなければ、町の人々が……!」


 必死に立ち上がろうとするカラーレンジャーだったが、凄まじい倦怠感と発熱により自由に動けない。

 そうしている間にも人々のうめき声は広がり、よく見ればレッドたちに倒されたガイジャーたちまでもが呻き声をあげ、苦しんでいた。


「き、貴様っ⁉ まさか仲間まで巻き添えに……⁉」


「仲間? コロコロコロ……お前たちに勝てぬザコを仲間にした覚えは無いな? こやつらも我のような偉大な存在に殺されるなら本望であろう」


「この外道がっ! 許さんぞっ‼」


 怒りに燃えるレッド。そしてブルー、グリーン、ブラックも残された力で立ち上がる。

 人々のため、そして世界の平和のため、彼らは敗北するわけにはいかないのだ。


 一方その頃、イエローは倒れた人々に()()()()をかけて回り、そのついででガイジャーたちも助けて回っていた。


「バ、バカなっ! レッドよ、どこにそんな力が……⁉」


「俺たちは……負けないっ! 貴様らガイチューンの好きには、させないっ‼」


「おのれっ! 小癪なァ‼」


 最後の力を振り絞り、レッドたちは個々の必殺技を放つ。

 だがコロナ伯爵には通じず、彼らは再び吹き飛ばされてしまった。


「コロコロコロ! 残念だったなァ⁉ では、人間どもと共に散るがいい!」


 コロナ伯爵は全身から強烈なエネルギー波を生み出し、一気に放つ。

 それは普通の人間には決して耐えられない危険な力。レッドたちは満身創痍で動けず、絶体絶命のピンチである。


「バリア~」


 抗いようの無いエネルギー波をイエローのバリアによって回避したレッドたちは、周囲に倒れていた……けどイエローによって治療されて安全圏まで逃げていた人々とガイジャーたちを、ただ眺めることしかできなかった。


 ヒーローともあろう者が、悪の組織に為す術なく――――



「はーーい! ストォップ! 一旦止めまーす!」


「なんだと⁉ レッドよ、このコロナ伯爵の技を食らってまだ動け……」


「そういうのいいから! それどころじゃないから! イィィエェェロォォ、ちょっとこっち来い! 駆け足ィィィィ‼」



 ――――ポカンとするコロナ伯爵を尻目に、レッドが叫ぶ。


 慌てて走ってきたイエローに有無を言わせず、レッドは彼の頭部に向けて必殺武器をフルスイングする。


「またオレ何かやっちゃいました?」


「どぉぉぉゆぅぅぅつもりだぁぁぁ? イィィエェェロォォォォ?」


「いや、だってあのままだと町の皆さんが死んじゃってた……」


「そぉぉこぉぉでぇぇ、俺らの新たな力が目覚めてぇ、ピンチからの逆転って展開だろうがぁぁぁ?」


「いや、そんな無茶な……」


「見ろよォォ? この意味ありげに光ろうとしてた武器たちの、やるせない淡い光り具合をよォ?」


「あ、ほんとだ」


「どぉぉぉぉしてくれんだよぉぉ? 五人の新必殺技お披露目の機会をよォ?」


 レッドの圧にタジタジのイエロー。

 そして、溜め息を吐きながらぞろぞろと帰っていく町の人々。


 一方、身内から攻撃されたガイジャーたちは組織にパワハラと労災認定を訴え出るため、コロナ伯爵を置き去りにして退却を始める。

 どうやらコロナ伯爵、部下から嫌われているようだ。自業自得だが。


「……えっと、まだ大幹部の我が話してる途中……」


「イィィエェェロォォォ! 今日という今日は許さん! 新必殺技の実験台にしてくれるわぁぁぁ‼」


「……大幹部……えっと、あの……ぴえん……」


 こうしてカラーレンジャーたちは、涙目の大幹部を尻目に世界の平和を守ったのであった。








 ……頑張れ、災難な町の人たち。そしてガイジャーたち。


 パワハラに屈することなく、駄目なことは駄目とハッキリ言おうね。

 そしてハラスメントと労災認定、無事にされるといいね。



明日も投稿します。

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