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番外編①


 これは、とある異世界の物語である。


 その世界は戦隊ヒーローが現実に存在し、そして――――








 ――――事の始まりは、悪の組織ガイチューンが結成された頃。


 彼らの世界征服を阻止すべく、彼らに対抗できる力を持った正義の組織を生み出そうと、一人の男が立ち上がった。



「これが神話の戦士を召喚する、『緋色(ひぃろぉ)数津(すぅつ)』なる伝説のアイテムか。これで奴らに対抗できるはずだ」



 その者の名は、色々博士。


 色々な分野の知識を極め、色々な技術や武道を身に着け、さらには色々な性癖……もとい、正義の心を持った男であった。


「善は急げだ。これを起動して……」


「フハハハハハハハ! そうはさせんぞ、色々博士!」


「なにっ⁉ 貴様はガイチューン総帥、ホモサピ! 何故ここに⁉」


「貴様の企みなど見え見えよ! 真の害虫たる人間(ホモサピエンス)どもを滅ぼす我が野望、邪魔はさせんぞっ!」


 ホモサピ総帥が放った黒い稲妻が大地を抉り、博士はその衝撃で吹き飛ばされ、壁に打ち付けられてしまう。

 かなりのダメージを負ったのか、尋常ではない血が彼の口から吐き出された。


「くっ……! 最後の願いだ。私の命を捧げるから、どうか神話の戦士を……世界を救ってくれ」


 そんな彼の願いが届いたのか。

 力を失った彼の手から落ちた緋色数津は、彼の血に染まりながらも虹色の輝きを放ち、複雑な紋様を地面に描き始めた。


「なにっ⁉ おのれ、そうはさせんぞっ‼」


 ホモサピ総帥は再び黒い稲妻を放つが、なにか不思議な力によって弾かれる。

 そうして間もなく紋様は完成し、鮮やかな魔法陣がホモサピ総帥の前で()()()を召喚しようとしていた。


「フッ……フハハハハ! 面白い! ならばこの周囲一帯ごと消し飛ばしてくれよう! 我が全力の黒き稲妻を食らうがいい‼」


 最早なりふり構わず全力の一撃を放とうと、ホモサピ総帥は上空へと飛び立つ。

 そして彼の手から、先ほどの十倍はある強大な力の塊が放たれた。


 伝説のアイテムだろうと、そんなエネルギー量を受けては無事では済まない。

 召喚されたばかりの()()()とて同じ。そして博士の亡骸も跡形もなく消されてしまうだろう。



「ハアアァァァァァッ‼ 最大出力だぁぁぁぁぁ‼」



 そうして放たれた一撃は――――











 ――――(ハエ)でも払い除けるかのように、ペシッと弾き飛ばされる。



「…………あえ?」


 呆気に取られたホモサピ総帥が地上を見ると、そこには一人の男が立っていた。


 ごく普通の服装、ごく普通の体格の男性。

 しかも見た目からは若く弱々しい雰囲気しか感じられない。


 ホモサピ総帥は、うっかり手元が狂ったのだと自分に言い聞かせて気を取り直し、再び同等の一撃を放つことにする。

 その男が稲妻をペシッと弾いたように見えたが、そんなはずがない。


「フハハハハハハ! こういう調子の悪い時もあるわな! だが今度は外さん! 食らえっ!」


 そうして稲妻を放った……その刹那、ホモサピ総帥は思った。


 あれ……さっきまでこの場には自分と色々博士しかいなかったのに。

 あの男は何処から現れたのか……と。


 そうして刹那、彼は気付いてしまった。

 彼が現れるとしたら、それは先ほどの魔法陣からしかあり得ない……と。


 ホモサピ総帥がそう気付いた頃には、時すでに遅し。

 彼の放った一撃は謎の男によって再び弾かれ、真っ直ぐ――自分の下へと返って来ていたのであった。



「ギャアアアアアアアアッ! おのれ、覚えていろよぉぉぉ‼」



 黒い稲妻に巻き込まれて空の彼方へ飛ばされながらも、ホモサピ総帥は見事な断末魔の叫びを残していく。

 そんな光景を見て、地上に一人残された男は呟く。



「……あれ? オレたしかトラックに轢かれて死んだんじゃ? ここはいったい、どこなんだろう?」



 なんということでしょう。

 実は色々博士の血には色々な血筋の色々な不思議な力が隠されており、それが緋色数津の伝説の力に関与して色々な反応を起こし、普通ではあり得ない現象を引き起こしたのである。


 そうして召喚された、その青年。

 うっかり道路に飛び出してトラックに轢かれそうになっていた猫……に似た神獣の子をたまたま助けた功績により、神様からチート能力を与えられて別の異世界に送られ、そこで特に使命などもなく自由に生きるというテンプレ展開になる……はずだったのだが。



 なんということでしょう。

 その転移に色々博士の色々が関わって特殊な召喚を行ってしまい、彼はチート能力を持ったままでこの世界へとやって来たのであった。


 彼が本来行くはずだった剣と魔法のファンタジー世界……ではなく、悪の組織と正義のヒーローたちが闘う運命が定められた、この世界に。


 こうして彼は、博士の死を乗り越えヒーローとして――――



「あれ、なんか人が倒れてるぞ? 神様からもらった回復技能(ヒール)……は効かないか。なら死者でも蘇る究極回復(アルティメットヒール)を使ってみよう」


「……おや? 私、たしか死んだと思ったのに生きてる? なんだか色々とんでもないことになった気がするが、まあいいか」



 ――――もとい、色々博士とともに仲間を集め、世界を救う運命に巻き込まれて行くのであった。








 ……頑張れホモサピ総帥!


 なんだかとんでもないことになったけど、きっと一番の被害者は君と君の組織の皆になると思うぞ。

 でも挫けずに世界征服してくれ! ファイトッ‼



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[良い点] 博士~°・(ノД`)・°・と叫んだ私の気持ちは(笑)
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