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最終話


 ――――この世界の命運を決めるべく。


 正義のヒーロー、七色戦隊カラーレンジャー。

 そして悪の組織、ガイチューン。


 両者総力戦での、最後の戦いが始まろうとしていた。



「赤き炎の戦士! レッドフレア!」

「青き水の戦士! ブルーアクア!」

「緑の風の戦士! グリーンエアー!」

「金色の大地の戦士! イエローガイア!」

「黒き闇の戦士! ブラックコスモ!」

白銀(しろがね)の刃の戦士! シルバーエッジ!」

「不可視の(くう)の戦士! インビジブルアーツ!」


「「我ら! 七人揃って七色戦隊カラーレンジャー‼」」



「フギャーックハッキュッペッヴァッハッキーッハッ! 全員融合巨大融合怪人、グレート総帥ガイチューンマン様に蚊てると重うなよ! カラーレンチャ!」



 緋色数津の新たな力で召喚された巨大ロボットに乗り込み、カラーレンジャーは融合魔総帥グレートガイチューンに立ち向かう。


「なあ? あいつら合体したら知能が下がって馬鹿になってない? つーか全員の笑い声まで合体させる必要ってある?」


「もっともな意見だが、今は黙れイエロー! 最後の戦い、行くぞみんなっ‼」


 そして、最後の戦いの火蓋が切って落とされた。

 巨大な怪人と巨大なロボットが、大地を揺らして激戦を繰り広げる。


「くっ! パンチだ、ブルー!」


「そんなもの食らわなーい! オデたちもパンツだでぃ!」


「ならば、必殺武器だ! グリーン、ブラック、準備を!」


「「了解‼」」





 ……両者一歩も譲らぬ戦いは、一昼夜に及んだ。

 命令するまで動くな!というレッドからの指示で暇を持て余すイエロー以外は、全員が本気。おふざけ無しだ。


 だが、そんな戦いにも――――物語にも、終わりは存在する。



「フ、フハ、フハハハハ! 我らに残された痴漢(時間)もあと僅か……ならば最後は、全てを出し切ろうではないか」


「ならば、俺たちも全力で行くぞっ! 七人全員、最後の一撃に全てを籠める‼」


 そして、グレートガイチューンから究極の一撃が。

 カラーレンジャーのロボットからも、同じ威力の一撃が放たれた。


 両者が放った全力全開のエネルギー波は拮抗し、ちょうど両者の中間で一進一退のせめぎ合いを続ける。


 それは永遠に続くとさえ思え、両者が、()()が歓喜した。




 だが――――








「……あれ?」


「…………フ、フハハハハ! ちょっと押し負けているようだが、我らはまだまだやれる……んだけど、ちょーっとだけ出力下げてほしいかな? ねぇ、聞いてる? ちょっと? あれ?」


「い、いや、そんなはずは……」


「うむ、む、むむむむむ……いや、ごめん! ちょっと強すぎて耐えられないかも……イ、イヤアアアァァァ‼」


「ま、待て! まだ勝負は! ストーリーは――――」


「ギャアアアアアアアアアアァァァァァァァァ……」








 ――――唐突に、決着の時が訪れる。


 瞬く間にグレートガイチューンのエネルギー波を呑み込み、出力を増したカラーレンジャーのロボットのエネルギー波が押し勝ったのだ。


 だがしかし、それはカラーレンジャーですら想定していなかった幕切れ。


 ……それはつまり、ヤツの仕業ということだ。



「……イエロー? まさかお前、最後の一撃に参加した?」


「あっ、はい。だってレッドが()()()()って言ったから。オレも出番なのか~って思って……」


「……」


「……あれ? またオレ何かやっちゃいました?」


「……すまん、みんな。俺が余計なことを言ったばっかりに」


「「「……」」」



 実に呆気無い最後であった。








 その後――――みんなから慰められ、失意の中で帰還したレッド。

 そして世界は平和になり、緋色数津は次代の運命の時まで長き眠りに就くこととなり、カラーレンジャーは解散となった。


 イエローは死刑……とはならず、なんだかんだで世界を救う立役者となった彼は皆から感謝され、最終的に仲間たちも納得して彼の下を去って行った。

 なにせ世界は平和になったのだから、文句などあるはずもない。最初からそれこそが目的だったのだから。



 これでよかったのか……と首を傾げながらも、イエローは平和になった世界で今度こそチート能力を活かして自由に生きようと決めた。


 そして、今度こそ――――彼のチートな異世界物語が始まるのだ。


 お疲れ様、カラーレンジャー。さようなら、ガイチューン。

 こんなラストだけど、今までありがとう。








               ――――おしまい……?


























 ――――世界に平和が訪れて、数年が経った頃。


 悪の組織が存在しない世界で、イエローこと鬼崎大地は退屈を持て余していた。


「……チート能力って、案外退屈なんだなぁ」


 何でもできて、何者にもなれる。

 どんな状況もどうにかできて、自らの望みのままに全てを動かせる。


 そんな神の如き力を揮い、鬼崎は()()と化した世界で思うがまま生きていた。


「……暇だな」


 だが、何でもできて誰にでもなれる力も。

 あらゆる願いを叶える才覚も。

 神の如き万能感も。


 ……そんなものより、彼には欲しいものが存在していた。


「…………暇だ。暇だよ。本当に」


 誰彼を好きに操るより、巨万の富や名声より。

 そんなものよりも、彼は欲しくて仕方のないものを切望していた。


 そしてそれが何なのか、彼はとっくの昔に分かっていた。



「本当に暇だよ、レッド。ブルー、グリーン、ブラック。みんな……」



 だから彼は、一つの行動に出ることにした。

 その手に、長き眠りに就いた緋色数津(ひぃろぉすぅつ)を握りしめて。



「ごめんね? 世界をオレの勝手で弄るなんて許されないことかもしれないけど。それでも、オレに力を貸してくれないか、緋色数津。オレ……やっと分かったんだ。自分が何を欲しているのかを。そして、()()()()が何を望んでいるのかを」



 鬼崎の声に、眠っているはずの緋色数津が微かに輝いた気がした。


 それを知ってか知らずか、鬼崎はニコリと微笑み、そして――――








 ――――彼の持つ全ての能力を使って世界を作り変えていく。


 あらゆる人と、あらゆる物と、あらゆる思いと。

 その他の全ても踏みにじり、この()()()の出来事を、歴史を、営みを塗り潰していく。


 彼が行っているのは、神への冒涜。邪神の思惟。

 決して赦されることのない、禁断の行為だ。



 だけど、それでも――――この退屈を、彼は我慢出来なかった。

 そして……()()も、また。


 だから、そんな邪悪な行いにもかかわらず、神は黙認した。

 何故なら、それを諫めようとした神を()()が止めたからだ。


 神の問いかけに、()()は答える。

 (イエロー)と同じく、それを望む……と。



 ゆえに、再び物語は紡がれていく。

 始まりの……その時から。








  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








 これは、とある異世界の物語である。


 その世界は戦隊ヒーローが現実に存在し、そして――――








「フハハハハ! 十二星座の宝玉は渡さんぞ、カラーレンジャー!」


「むむっ⁉ 現れたなガイチューン! 先に全ての宝玉を集めるのは俺たちだ!」



 今日も、カラーレンジャーたちとガイチューンの面々が、十二の宝玉をかけた戦いを繰り広げていた。


 十二個すべてを集めれば何でも願いを叶えられるという、十二星座の宝玉。

 ガイチューンは世界征服の野望のため。カラーレンジャーはそれを阻止すべく。


 彼らに定められた運命は、この先も続いていくのだ。



「……それじゃあ十二個全部、オレの技能で召喚しちゃおっか、レッド?」


「そういうズルは止めろといつも言ってるだろが、イエロー!」


「相変わらずだね、君たちは」

「まったく。イエローも懲りんヤツだ」

「でも、彼はそこも素敵♪」


「ワタクシも退屈せずに済みますわ。そういうノリ、結構好きですのよ♪」

「ふえぇ……ぼくも、みんなの仲間になれて、嬉しいなァ♪」



 運命の力で集合した七人の戦士たち。

 その中でイエローは、幸せそうに微笑む。



「ええい! こっちを無視するな! 貴様らの好きにはさせん!」


「ヴァヴァヴァ! こっそり第十形態を手に入れる野望、叶えるぞ!」


「ペッペッペッ! (ちん)の新たなキャラ付けの野望も忘れずにのぅ」


「コロコロコロ! それは宝玉要らんと思うぞ、ペスト侯爵よ。それよりレッドよ、来週にでも一緒に飲みにいかんか?」


「「「キー! キー!」」」



 四天王をはじめとしたガイチューンの面々と、ガイチューンソルジャーたち。

 彼らもまた、野望のために日々奮闘する。


 だがどういうわけか、この場の誰もが共通して不思議な充実感に満たされており、どこか救われたような気持ちであった。

 それがいつからなのか分からないが、ある瞬間から何かが変わった気がして。



「あ! でも実は、条件を揃えずに十二個集めちゃうと、再び世界中に飛び去ってしまうという裏設定をだね……」


「イエロー! ネタバレ禁止‼ つーかピンチなのに、さっきからなんで嬉しそうなんだよ⁉ お前はもう喋るな! 戦うな! 正座して茶でも飲んでろ!」


「はーい♪ ならあたしもお茶するぅ♪」

「あっ、ぼくもご一緒します……おねーさま♪」


「ぅおまぇらは戦えっ‼ 銀の字、そいつら引っ張ってきてくれ!」


「あら、馴れ馴れしいですわよ、レッド? ハラスメントは通報ですわ」


「今日も僕たち、影が薄いねぇ? ブラック」

「そだねー、ブルー」


「はいはいはーい! 私のことも忘れずに! 色々博士じゃよー‼」



 そんな毎度の光景に、町の人々はすっかり呆れ果てていた。


 なんとも騒がしい集団……だが()()で、居ないと淋しくさえ思える。

 しかし、誰もがそれでいいような気がしていた。


 それは、()()でさえも。











 ――――こうして今日も、この世界の平和は続いていく。



 頑張れカラーレンジャー、奮い立てガイチューン!

 君たちがいないと、世界は本当につまらないんだ!


 この世界を、頼んだゾ‼








                    ―――― Fin.



いかがだったでしょうか?


短い間でしたが、お読みいただきありがとうございました。

彼らの物語はこれからも永久に不滅です。この先の物語は、皆さんの想像の中でお楽しみください。


活動報告で完結後のご挨拶をさせていただきますので、お暇でしたらそちらも一読ください。

それではまた、どこかで。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろかったです。 スーパー戦隊がビーロボカブタックになったんですね。 [一言] 最初からイエローを追加戦士のゴールド扱いにして、インビジブルにホワイトにしていれば、もうすこし『お約束』…
[良い点] 暴れてないと彼らは存在できないんだな?(๑•̀ㅂ•́)و✧ よーし! 平和なんかクソ喰らえだ!\(^o^)/ 世界ってバランスが大切なんだなぁ(^o^) ブルーとブラックの存在感の薄さ…
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