第九話
番外編②を第八話の前に移動(再度投稿)しました。
削除前の番外編②にいいねをくださった方、誠に申し訳ございません。消さずに移動させる方法が見付からず、最新話の投稿が遅くなったことも含め謝罪いたします。
これは、とある異世界の物語である。
その世界は戦隊ヒーローが現実に存在し、そして――――
「……えー、というわけで今回から仲間に加わった、新メンバーのシルバーこと白銀吟子さんだ」
「どういうわけだよっ⁉ 分かるように説明して、色々博士!」
前回の戦いから一夜明け、今回も町……ではなく、ヒーローたちの本部。
そこで唐突に紹介された新メンバーの存在に、四人は大いに戸惑っていた。
「まぁ……その、なんだ? 簡潔に言うとだね」
「色々博士。そこはワタクシから皆に説明いたしますわ」
口ごもる色々博士に待ったをかけ、シルバーこと吟子が前に出る。
そして彼女の口から、思いがけない理由が語られることに。
「……本来ならワタクシ、リッサ公爵に敗れたあなたたちを救う運命を授けられていたんですの。夢で天啓を得て、緋色数津から力を貰ってシルバーとして覚醒しましたの」
「「……」」
そこまで聞いて、レッドたちは色々と察した。
「だから、今か今かと待ってましたのよ? 颯爽と現れ、皆を回収して「あんな相手、ワタクシ一人で充分ですわ」とか言ってイキって、リッサ公爵との再戦で敗れて……そこで助けに来たあなたたちと友情が芽生え、仲間になるって筋書きを妄想してましたの。……だというのに、リッサ公爵の攻撃で皆さんのスーツが消えて「今こそ運命の時だ!」と思ったら、イエローさんとリッサ公爵が一騎打ちを始めましたでしょう?」
「「……あっ、はい」」
「なら予定変更でイエローさんを助けに……とアドリブ利かせようとしても、彼は一向にやられる気配が無いじゃありませんか。遂にはリッサ公爵が変身で想像以上の力になり、最早ワタクシではどう足掻いても太刀打ちできない状態に。それを茫然自失で見ていたら、なんかリッサ公爵の方が泣きながら帰っていくし…………ホントなんなんですの⁉」
彼女の口から語られた、思いがけない……もとい、予想通りの内容。
やはり原因はヤツにあり、全てを察した四人は彼女から目を逸らした。
何とも居たたまれない空気に、色々博士がなんとか流れを変えようと口を開く。
「と、とにかく気を取り直して。シルバーが加わったことで、カラーレンジャーも六人体制となったわけで……あ! そういえば緋色数津には隠されたもう一つの力があってだね? それを発動するのに……」
「あ! 巨大ロボでしょ! 博士、ロボですか! 七人揃ったら巨大合体ロボ起動ですか⁉ くぅ、燃えるなァ‼」
「頼むから私に喋らせてくれんかねイエロー⁉ 君たちと違って出番も僅かなんだからァ、私の重要な役どころまで奪わないでおくれぇ‼」
博士、魂の叫びであった。
普段温和な博士がキレたこと、それに加えてシルバーの一件。
それらをようやく申しわけないと思ったのか、イエローは無言で膝を折り、その場に正座した。
「と、とにかく、七人目の戦士を至急探し出してくれ。運命のアレコレを台無しにしたヤツがおるから、皆のピンチに呼応して現れる展開はもう期待できん」
博士の棘のある言い方に、イエロー以外の全員が頷いて共感する。
しかしながら、どこにいるか分からない人物を自力で探し出すのは至難の業で、シルバーと博士を含めた六人は頭を抱えてしまう。
すると――――
「もしかして七人目って、いつもいる……あの子のこと? それなら今も……」
懲りずに口を開いたイエローに、修羅と化したレッドが鋭い眼光を向ける。
慌てて黙ったイエローだったが、時すでに遅し。
「ごめん、もう何も言いませ……」
「いいや、そこまで言ったなら、もう全部話せ! 絶妙に気になる言い方しやがって! とりあえず巨大ロボとやらを手に入れたら試運転でまずお前を踏み潰すから覚悟しておけ‼」
「七人目が見付かったら踏み潰されるのに、それでも話せと⁉」
その瞬間、皆の心は「踏み潰しても無事だろうけど」と一つになった。
流石は運命の絆で結ばれた仲間である。仲間を踏み潰そうとしているが。
「まあ、話すけど……えっと、七人目の子は姿を消せるみたいでさ。だから毎回戦いの場にいたけど、オレ以外は気付かないし、気付けない」
「それで? お前はそれに気付いてて、どうして今まで何も言わなかった?」
「いや、熱心に見つめてたから……メンバーのファンって可能性もあるかなって」
「なんでだよっ! 姿消せるファンって何だ! 本当にお前は……」
――――と、レッドはそこまで言って、ふとイエローがある方向をジッと見ていることに気付き、違和感を覚えた。
「……ちょっと待て。お前さっき「今も……」って言いかけてたよな? まさか七人目は、そいつは今もこの部屋にいるのか?」
レッドの問いに、皆の目の色が変わる。
だが、当然ながらこの場にはカラーレンジャー六人と博士しかいない。
すると、イエローはスッとある方向を指差した。
「……まさか、私か? 私が七人目の戦士……だと……?」
指差した方向には色々博士がいて、何故か彼は顔を赤らめている。
しかしイエローは博士の言葉を無視し、首を横に振った。
「そこにいるよ。色々博士……の、後ろに隠れてる」
イエローの言葉で、全員の視線が一点に集中した。
凝視された博士はさらに顔を赤らめている。
すると、博士はともかく、何者かがぼんやりと姿を現し始めた。
空間が歪み、それまで誰もいなかったはずの場所にカラーレンジャーと同じ戦闘用スーツを着た人物が出現したのだ。
「……」
「き、君が七人目……?」
「は、初めまして、皆さん。ぼく、薄色透明って言います。その、よろしく……」
「うーわ、これって不法侵入だよね? どうする? 警察とか……」
「イエロー今すぐ黙らんと捻り殺す! そんなことより、君のそのスーツの色……白? いや、無色か?」
その人物のスーツには色が無く、白というより半透明に近かった。
薄っすらと透けて見えるが、見えているのは中の人ではなく向こう側の光景。あまりの不可思議さに皆が注目する中、透明がオドオドと話し始める。
「は、はい。ゆ、夢のお告げで力に覚醒した時、天啓で「インビジブル」って言われました」
「ホワイトとかでいいじゃん! 悪の怪人みたいだろ、インビジブルだと!」
「ふ、ふえぇ……」
登場するなりレッドから強烈なツッコミを受け、透明は涙目で後退る。
皆にとってはいつも通りでも、新人には少しキツかったようだ。
「男が「ふえぇ」とか言って泣くな! キャラが濃いわっ!」
「……ぼく、女です……」
「…………えっ?」
ノリノリでツッコミを入れていたレッドだったが、自らの過ちに気付くと一気に青褪め、黙り込む。
彼の中では濃いキャラの男にツッコミを入れていたに過ぎなかったが、実際は新人イジメをするリーダーの様相で。
「レッド、やっぱり最低」
「レッド、酷いわぁ」
「レッド、うわぁ……」
「い、いや、ぼくって言ってたから、俺はてっきり……」
前科のあるレッドに、仲間たちから非難の声が集まる。
レッドは何かと女性から嫌われる不遇の運命にあるのだった。
そんな中、不意に透明が変身を解除し、生身の姿を見せる。
そこに居たのは、なんとも可愛らしい少女であった。
すると場の空気が変わり、透明はゆっくりと話し始めた。
「ふえぇ。そもそも天啓によれば、ぼくはリッサ公爵の第五形態もしくは第七形態で登場するはずだったんです。なのに、第五と第七を省いて変身しちゃったから、ぼく……もうどうしていいか分かんなくって……」
その話を聞き、そういえば確かに前回の戦いでリッサ公爵は第四形態のあと、第六、第八形態となっていたな……と皆で回顧する。
その元凶は、やはりイエローだ。どうやっても倒れないイエローに自棄になり、リッサ公爵が変身の段階をすっ飛ばしたのだ。
あまりの居たたまれなさに全員が彼女から目を逸らし、シルバーは涙を流して何かに共感していた。
流石のイエローも悪いことをしたと反省したのか、彼女に頭を下げる。
「その、なんというか……ごめん」
「いえ、いいんです。いっそ“探さないでください”って書き置きして去ろうかとも思いましたけど、ぼくだって運命の戦士なんですから。頼りないかもしれませんが、一緒に戦わせてください」
「お、おお……! 置き手紙があったらイエローは除隊だったけど、そうならなくてよかったぜ! こちらこそよろしくな! 俺たちは今日から仲間だ‼」
「は、はいっ‼」
「……」
――――こうして、遂に七人揃ったカラーレンジャー。
そして、舞台はあの場所へと移る。
「赤き炎の戦士! レッドフレア!」
「青き水の戦士! ブルーアクア!」
「緑の風の戦士! グリーンエアー!」
「金色の大地の戦士! イエローガイア!」
「黒き闇の戦士! ブラックコスモ!」
「白銀の刃の戦士! シルバーエッジ!」
「不可視の空の戦士! インビジブルアーツ!」
「「我ら! 七人揃って七色戦隊カラーレンジャー‼」」
七人になった彼らの背後で、いつもより強烈な爆発が決まり、そしていつもより派手な七色の煙が舞い上がった。
一方で、勢揃いした悪の組織ガイチューンの面々が彼らを睨み付けていた。
「フハハハハハハ! よくも、うちのリッサ公爵を泣かせてくれたな! 今度という今度は絶対に許さん! 最終手段である‼」
怒り心頭のホモサピ総帥率いる組織の全員が、彼を中心に融合し始める。
すると間もなく、融合した塊は巨大化し、巨大な怪物へと変貌を遂げた。
「「「これぞ我ら最後の一手! 融合魔総帥グレートガイチューン‼」」」
「よし! よっし‼ 今こそ俺たち全員の力を合わせる時だ! 行くぞみんな! イエロ……じゃなく、あの巨大怪人を倒すんだ!」
「「「はいっ‼」」」
「……」
微妙な顔をするイエローを尻目に、レッドたちは七人で緋色数津の新たな力を呼び覚ますべく、天に向かって叫ぶ。
するとそれに呼応するように、どこからともなく七色の光が降り注ぎ、彼らの前に七機の乗り物が出現した。
「よし! 乗り込むぞ‼」
「「「おう‼」」」
カラーレンジャーが乗り込むと七機は宙を舞い、合体して巨大ロボットへと姿を変えた。
イエローがネタバレしたせいで何の感動も無かったが、ともかく彼らはその巨大ロボットを操って融合魔総帥グレートガイチューンに立ち向か――――
「なんだとっ⁉ クソッ‼」
「どうしたレッド⁉ 何かあったのか⁉」
「これから最後の戦いよ⁉ こんな時にトラブル⁉」
「ぶっつけ本番かよ! これじゃあイエローを踏み潰せないじゃないかっ‼ クソッ! クッソオオオォォォ‼」
「…………」
――――……立ち向かうのであった。
次回、遂にラストエピソード‼
お見逃しなく‼
明日、いよいよ最終話の投稿です。
くだらなさは歴代最高折り紙つきですので、全く期待せずにお待ちください。