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案内記9

「何をしておるのじゃ?」


 私の制止むなしく乱入していった暴走系美女を見て、一瞬止まった女子二人だったけど、なぜか何も言わずに濃い顔イケメンに視線を向けた。


「あの! 撮った写真を送りたいんで、Line教えてください」


 にっこりと笑う女子は、間違いなく、濃い顔イケメンをロックオンしたよ。

 暴走系美女は相手にされていないことを気にもせず、女子二人の手元をまじまじと見つめている。

 濃い顔イケメンは更に困惑した表情になった。

 ……当然、Lineなんて知るはずもないしね。


「らいん? とは、何のことでしょうか?」

「え?!」


 濃い顔イケメンの返事に、二人の女子が顔を見合わせた後、あ、と声を漏らす。


「Lineやってないんですねー。じゃあ、連絡先教えてください!」


 なんてドストレートな文句。

 だけど、濃い顔イケメンは困惑した顔のまま瞬きを繰り返した。


 ……口説かれてるとか思ってないから!

 いや、わかってるのか?


「連絡先? ……いせか」


 暴走系美女が口走りそうになった瞬間、私は暴走系美女の口を手でふさいだ。


「すいません。この人スマホとか持ってないし、先を急いでるので!」

 

 私は二人の女子の間に立つと、濃い顔イケメンを諏訪神社に向かって押し出した。


「自分の顔、よく見たらどう?」


 女子二人はムッとした表情でそう吐き捨てたけど、追いかけては来なかった。

 ……肉食系怖い!

 平々凡々な自分の顔と、この4人の顔面偏差値の差は、よく存じております!


 ……あれ。あの二人に4人を押し付けるって手があったんじゃない?!

 ……失敗したかも……。


「れんげ、あの二人は、何をやっておったんじゃ?」

「写真撮ってましたね。戻ります?」

「戻りません! あの二人は邪悪な気を持っていた」


 私が押すまでもなく、濃い顔イケメンがサクサクと歩き出した。

 狙われてたのは感じてたのか。


「邪悪な気?! 本当にこの世界には魔物はいないのか?」


 根暗美男子が私を怪訝そうに見ている。……鳥居くぐるたびに、びくっとしてるもんね。


「魔物はいないよ。邪悪な気を持つ人間はいるかもしれないけどね」


 私は肩をすくめた。いくらでもそんな人はいるよね。


「……お前は……邪悪な気を感じないな」


 珍しい! 根暗美男子がほめた!


「それはどうも」


 私がへら、と笑うと、根暗美男子がぷい、と顔をそむけた。


「今は、だ」

 

 口が減らないな!


「あれは、写真と言うのか……。マイルズの姿がそのまま映っておったぞ。あれは、異世界でどうにか使えるように……」


 また、暴走系美女がブツブツ言ってるー。


「れんげ様、写真って、何ですか?」


 旧たおやかさんが小首をかしげている。

 そうか。スマホの画面を見たのは暴走系美女だけだったもんね。


「えーっと、肖像画みたいなものなんですけど、絵じゃなくて、見たままの姿をそのまま記録するものです」

「肖像画みたいな……すごいですね。私の絵姿はたくさん街中で見ましたけれど、私の姿をきちんと描けているものはなかったわ」


 ……なるほど。聖女は偶像化されてるのか。


「だって、カーシー様への愛が溢れている感じを、全く受けないんだもの」


 無理だよね!


「……あ、見えてきましたよ」


 スルーで!


「ん? 階段と屋根が見えるだけではないか」


 目の前に見えてきた長い階段を見上げて、暴走系美女が首を傾げる。

 ……そっか。”おくんち”を知らない人からすれば、ここはただの階段の下の場所でしかないのか。


「10月になると、ここで奉納踊りが披露されるんです」


 毎年、10月の7日から9日の間に行われる、長崎で一番大きなお祭り。

 沢山の町が持ち回りで、いろんな奉納踊りを披露するのが、ここだ。

 長崎に来るまでは名前しか知らなかったけど、毎年10月7日になるとTVで放映されるから、見るようになった。

 まだこの階段から奉納踊りを見たことはないけど、毎年趣向を凝らした踊りを見るのはワクワクするし、楽しい。

 おくんちの間に大波止のあたりに広がってる出店を、友達たちと巡るのも楽しいんだけど。


「奉納踊り? ルース様が舞うようなやつでしょうか」


 濃い顔イケメンが、うーん、と考えている。

 ……旧たおやかさん、踊るのか。


「えーっと、そのようなものです」

「嘘よ! カーシー様への愛を伝えるための舞を、異世界の人間が踊れるはずはないわ!」

「ソウデスネ」


 それは、同意いたします!


「10月と言ったか? 今は、何月じゃ?」

「4月です」

「4月……異世界も同じ月の巡りなんですかね」


 濃い顔イケメンの言葉に、へー、と思う。同じ月の巡りなのかな?


「……あと半年もあるではないか……れんげ、今見せるがよい!」


 安定の暴走系美女!


「無理です! 私、おすわさんの関係者でもなければ、踊り町の人間でもないんで、何の権限もありませんから!」

「れんげ殿。諦めては、ダメです! 諦めたら、終わってしまいます!」


 安定の濃い顔イケメン!

 魔王との戦いじゃないから!

参考資料

諏訪神社公式ページ https://www.osuwasan.jp/index.html

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