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案内記8

「ダンジョンなど入りたくない!」


 ……根暗美男子よ。私だってダンジョンなど入りたくないよ。

 あー。通行人の視線が刺さるー。

 コスプレの人を観光案内する地元の人のふり! コスプレの人を観光案内する地元の人のふり! この人たちは中二病! ……少し落ち着いた。


「ダンジョンじゃない。ここは地下の通路なだけで、向こう側の道にすぐ出るって!」


 私は目的地に向かって指をさした。


「あの門は何だ! あれもダンジョンになってるんだろう!」


 根暗美男子よ。本当に魔王倒した勇者一行の中にいたんだよね? 

 そんなにビビらなくても、あれ鳥居だから。


「違う! あれは、モニュメントみたいなもので、別にダンジョンの入り口ではない!」

「門が連なっているなど、怪しいだろう!」


 だから、鳥居が並んでるだけなんだって! ……面倒だな。


「あら」


 旧たおやかさんが目を見開く。


「あの奥には、精霊が沢山いるわ。だから、データス様、大丈夫よ」


 旧たおやかさんの言葉に、根暗美男子がムッと口を閉じて私を見た。


「先にそう言えばいいだろ」

「あいにく、聖女みたいに、精霊が見えるわけじゃないんで!」


 ぜーはー、と息を切らすと、私と根暗美男子のやり取りをちょっと離れて見ていた濃い顔イケメンが大きく頷いた。


「では、参りましょう!」


 ……根暗美男子を説得するの手伝ってほしかったわ。

 あれ? そういえば、暴走系美女は?


「イザドラ様! デンーシャを見るのが楽しいのはわかりますが、行きますよ!」


 濃い顔イケメンの視線の先には、今にも道路に飛び出しそうな勢いで路面電車が動く様をじっと見つめている暴走系美女がいた。

 危ない!


「イザドラさん! 危ないですって!」


 私が腕をひくと、暴走系美女はきょとんとした表情で私を見た。


「なんじゃ。もう終わったのか。もう少し、口喧嘩を続けてもよいのじゃぞ?」

「えーっと、行きます!」


 暴走系美女の言葉をスルーして、私は暴走系美女の腕をつかんで歩き出した。


「本当に、ダンジョンじゃないのか!?」


 恐る恐るついてくる根暗美男子に、私はただ肩をすくめた。

 絵が飾ってあって電気が煌々とついたダンジョンって……。


「この明かりは何じゃ? どうやって明かりがついておるのじゃ?」


 興味津々の暴走系美女が、ライトに手を伸ばす。


「イザドラ様! おやめください!」


 濃い顔イケメンが焦って止めたけど、暴走系美女はすでにライトに触れていた。


「熱くはあるが、やけどはせぬぞ? 火ではないのだな」

「えーっと、火がなくとも明かりがつく道具なんです。うちにもありますよ」

「れんげの家は、凄い家だったのだな!」


 目を見開く暴走系美女に、私は苦笑する。

 ……違う意味で、凄い家なんだけどねー。ま、いっか。


「明るくなってきましたね。もう出口でしょうか」


 濃い顔イケメンの言葉に、にやりと笑って根暗美男子を見れば、根暗男子がスッと視線をそらした。

 まー、いいけどね。

 階段を上っていくと、目の前には鳥居が現れた。


「おお! これは何じゃ?」

「これは鳥居です。ここは諏訪神社という場所で……長崎で一番有名な神社です」

 

 言い切ってみたけど、たぶん間違いないだろう。”おすわさん”を知らない長崎人は、きっとモグリだ。


「どんな場所なんですか?」


 濃い顔イケメンが不思議そうに鳥居を見上げる。


「えーっと……皆の幸せを祈る場所です」


 これから行く他の場所のことを考えると、ちょっと説明が難しいなと思って、簡単に言ってみた。でも、これもきっと間違ってない。


「我が国の教会のようなものかしら?」


 旧たおやかさんが首をかしげたまま呟く。


「教会って……えーっと、宗教的な場所ですか?」

「あら、わかるの?」

「ええ、同じような言葉があるのでわかります。ルースさんたちの国の教会も、皆の幸せを祈る場所なんですか?」

「そう……ね。でも、私がカーシー様との結婚を願っても、いつまでたっても叶えてはくれないのよ」

「……他力本願はダメなんじゃないですかね」

「あら。だって、教会には私が聖女として祀られているのに、どうして私の願いは叶えてくれないのかしら?」


 異世界、この聖女で本当に良かった?

 と言うか、聖女って言葉合ってる?


「これだけなら、もう次に行こう」


 根暗美男子が先を急がせようとする。

 ……多分、鳥居をくぐりたくないんだろうなー。


「この奥にもまだ建物がありますから、行きましょ!」


 絶対行く!

 神社に来て入り口の鳥居だけ見て帰るとかないし!


「本当にダンジョンじゃないんだろうな!」

「この世界にダンジョンはない!」


 はず。


「わーすごい! 本格的!」


 きゃぴきゃぴした声に驚いて振り向くと、濃い顔イケメンが、私と同じくらいの年の女子たち二人に囲まれて、写真を撮られていた。

 戸惑う濃い顔イケメン。

 ……被写体。コスプレイヤーだもの。きっと間違ってない。


「なにをしておるのじゃ!?」


 あ、暴走系美女、目を輝かしてそこに食いつかないで!

どうやら諏訪神社前の地下通路に絵が飾ってあるようなのですが、どの方向にあるのかわからないので、知ってる方がいたら教えて下さい! 描写が変わるので……。

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