表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/47

案内記14

 どうしよう。

 予定通りのルートで行っても、あんまり反応は良くないかも?

 ……でもなぁ。


「れんげ様、この橋を渡ると恋が成就するという言い伝えはありまして?」

「ないです。だけど、渡ります!」


 4人組を引き連れて、破れかぶれな気分で眼鏡橋へ向かう。当然、観光客の視線が集まる。

 皆さま、コスプレイヤーですので、お気になさらず!

 とか大声で言えるメンタル欲しい。


「れんげ、あれは何だ?」


 暴走系美女が指さす先には、チリンチリンアイスの屋台がある。

 長崎の観光地でよく見るアイスで、おばちゃんがコーンに、花のようにシャーベット状のアイスを飾ってくれるやつだ。


「えーっと、甘い食べ物です」

「おいしいのか?」


 おいしいのか?

 おいしいよね。小さいころねだって買ってもらった記憶はあるし、好きだった。

 だけど、あの時はたぶん、100円とかそこらだった。

 今の私に、一つ300円は痛い!


「次の場所に行きますよー」

「れんげ」


 促す私を、暴走系美女が呼び止める。

 ……嫌な予感しかしない。

 あ、と思って私はスマホを見る。

 もうすぐ3時半だ。出発からもう1時間以上経ってるのか……。


「早く次に行かないと、帰るまでに暗くなっちゃいますよ!」

 

 まだ行こうと思ってるところはあるから、嘘はついてない!


「暗くなったら困るわ! イザドラ様、行きましょう!」


 旧たおやかさんの言葉に、暴走系美女がしぶしぶと頷いた。よし、予想通りだ!

 

「れんげ殿、あの味は、どんな味がするのです?」

 

 濃い顔イケメンの視線はちりんちりんアイスの屋台に釘付けのままだ。


「えーっと、さっぱりと甘い……素朴な味、と言うところでしょうか」

「さっぱりと甘い……素朴な味? ……ホルダスのような味でしょうか?」

「ホルダスが何かわからないんですけど」


 ホルダスって……存在しないよね? 知らないの私だけじゃないよね?


「さっぱりと甘い素朴な味の甘味で、イモムシの仲間です」

「えーっと……多分、違うんじゃないかな、と」


 もし同じ味がするとか言われたら困る!

 あれ? ケーキがあるって言ってなかったっけ?


「あの……ケーキとかはあるんですよね?」

「はい、あります。ですが、庶民には簡単に手が届くものではありませんので、ホルダスのような甘い虫を甘味として味わうことが多いですね」


 なるほどね。

 あれ?


「勇者一行でも、ケーキって手が届かないものなの?」

「勇者一行だからって、お金をたくさん持ってるわけじゃないですからね」


 呆れたような根暗美男子に、ちょっとムム、となりつつ、確かにそうだな、と納得するしかない。


 感慨も何もなく眼鏡橋を渡り切ると、私はそのまままっすぐ足を進めた。

 だけど、すぐにその行動を後悔する。

 だって、目の前に、ランドセルを背負った小学生が沢山現れたから!

 しまった! ここの近くに小学校があったのか!


「うわー! こん人たち、コスプレイヤーってやつやろ!」

「でかさー」

「なんのアニメのコスプレ?」

「本物のお姫様みたかね!」

「すごかー」

「おねえちゃんたち、どこにいくとさ?」

「この人カッコよくなか?!」


 小学生がわらわらと4人を取り囲む。

 そして、五月蠅い。皆が好き勝手にしゃべっている。


「ごめんね、お姉ちゃんたち、急いでるからー」


 と、私が言ってみたところで、小学生が聞く耳を持ってくれるわけもなく……。

 子供たちは、4人の服を触ったり、引っ張ったり。

 3人は目を白黒している。


 一人だけ、旧たおやかさんはにこやかだ。

 予想外だな。旧たおやかさん、案外子供慣れしてるな。


「ごめんなさいね。私たち用事があって急いでいるの。だから、いいかしら?」


 旧たおやかさんがそう告げると、周りに集まる小学生は、一斉に「えー!?」と不満の声を上げた。

 だけど、道を開けてくれる辺り、まだスレてないかもしれない。


「れんげ、この子供は一体どこに行くのじゃ?」


 最初の分かれ道を右に曲がりながら、何人かついて歩いてくる小学生を見ながら、暴走系美女が首を傾げる。


「今、学校が終わったところで、家に帰るところです」


 私の説目に、暴走系美女がなぜか眉を顰める。


「学校? あの年の子供たちがいったい何を学んでいるのだ?」


 なんで顔が険しいんだろ?


「えーっと、読み書き計算、歴史、ってところでしょうか」


 私の説明に、暴走系美女が戸惑った表情に変わる。


「読み書き計算に歴史?」

「あとは……運動したり、歌ったり、絵をかいたり、ですかね」


 暴走系美女が目を見開いた。


「それが学校で学ぶことなのか?!」

「えーっと、イザドラさんの世界の学校って、一体何を学ぶんですか?」

「カーシー様との愛のはぐくみ方よ!」

「カーシーと愛をはぐくんでどうする。戦い方以外にないじゃろうな」


 旧たおやかさんの発言を、暴走系美女がバッサリと切り捨てた。

 

「……え? ……戦い方を学ぶために学校に行くってことは……他にも勇者になるかもしれなかった人がいるってこと?」

「勇者が一人のわけがないでしょ」


 呆れた表情の根暗美男子に、私の頭の中にクエスチョンマークが大量に浮かぶ。


「勇者はカーシー様しか認められないわ!」

「それって、勇者?」


 あ、旧たおやかさんとかぶった。勇者って、一人だと思うんだけど……。


「カーシー様を侮辱するなんて……」


 低い声になった旧たおやかさんに、私は慌てる。


「カーシーさん侮辱してない! 勇者って一人じゃないのかな、って思っただけで!」


 タイミング!


「カーシー様が何人もいたら、私も何人もいなくてはならなくなるじゃありませんの! ……あら、沢山のカーシー様と沢山の私がそれぞれ夫婦になればいいんだわ。それもアリね」

「ナシでしょ。世界が混迷を極めるだけだし」


 根暗美男子と初めて意見が合った気がする。

小学生の使っている方言について、ご指導くださる方は教えてください。記憶に頼って書いているため、正しいかははなはだ不明です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ